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6 掃除

 身動きすら取れないほどの圧を感じ、起きようにも起きられなくなる。

 

「随分と余裕があるようですね

 厳しい訓練に変えて差し上げましょうか?」

「や、やめてくださいっ!!」

 

 思わず、反射的にベットから飛び降り日本の伝統的な謝罪方法を披露する。

 

 そう、DO・GE・ZAだ。

 

 古くから日本に伝わる伝統文化を披露したところでメイドのノーブルに蹴られる。

 

「グッ、ッッ」

「貴方は現状、この屋敷に居座っている無法者です。

 せめて、役に立つ程度の仕事をする意気を見せなさい」

 

 そう言われたが、聞こえるはずがない。

 福幸は、先程の蹴りによる激痛に悶えているのだ。

 その後ろから、老人のような口調で話しかける人がいる。

 そう、剣姫だ。

 

「相変わらず、人は脆いのぉ。」

 

 後ろから福幸に声を掛ける。

 そして、ノーブルが振り向き「剣姫様」と頭を下げる。

 

 

「いちいち礼などせずとも良い。まあ、お主がしたいのならばやれば良いのじゃがの。話がそれたのぉ。まあいい、説明は一度しかしないからそのつもりでな。

 貴様のためにこの屋敷の離れにある倉庫を貸してやろう。

 そこは自由に使って良いぞ?

 あと、このナイフもくれてやろう。

 じゃが、それ以上の施しを今するつもりは無いぞ?

 それだけじゃ。」

 

 剣姫なりの優しさを受け取った福幸だが、激痛に悶え苦しんでいるのには変わりない。

 のたうち回る福幸に呆れたノーブルは、回復魔法を掛ける。

 

「癒せ、ローヒール」

「ッッッッッ、!?

 痛みが消えた……?」

「ふん、魔の理じゃ 後でお主に基礎は教えてやろう。」 

 

 そう、剣姫が言うとそのまま彼女は部屋を出ていく。

 

「では、ご案内しますね。」

 

 涼やかな顔で、事務的にそう返した部屋を出ていく。

 その後ろ姿に見惚れ、遅れることに危機感を覚え慌てて追いかけていった。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「え、ここ?」

「文句はございませんね?」

「あっ、ハイ」

 

 倉庫はホコリを被っており空間は決して広くない。

 ベッド1つ設置したらほとんど動ける空間はないだろう。

 まあ、そのベッドもないのだが。

 

「本日の予定はございません

 暇であれば森まで案内いたします。」

「も、森? あのゴブリンがいる?」

「あの程度の雑魚であれば殲滅できると思われると思いますが……

 まぁ、あなたでは不可能ですか。」

 

 全くの誇張表現無しで淡々と言われる。

 

「えっと…… とても傷つくんですけど……」

「あなたが傷つこうとも私は構いませんが?」

 

 |(涙が出そうだよ……ハハハ。)

 

 天井を見上げ溢れ出そうな涙を流さないようにする。

 

「まあ、冗談は程々にしましょう。 いくら、異世界人で我らすら驚くスキルを保有しているとはいえあなたのそれは戦闘用ではありませんし応用も非常に難しいものですからね。」

「よ、良かった……。」

 

 そう、一息つく。

 

「ですが、生ぬるい環境で過ごせるとは思わないでください。」

「えっ?」

「今後あなたは、自力で食料を調達していただきます。 当然この程度できますよね?」

「えっ、いや」

「貴方には素晴らしいスキルがあるでは無いですか。

 まさか、出来ないなどと宣うつもりは……ございませんよね?」

 

 無言で頷く。

 ノーブルの圧に屈したのだ。

 首がもげんとばかりに頷く。

 

「そこまで必死にならなくとも良いですよ。 どうせこのあと言葉通り必死になるのですから。」

 

 ノーブルはそう言うと、一度口を閉じる。

 そして、一呼吸おいてから

 

「森へ行くにはこの倉庫を出たあと右手に行けば見えます。  当然、下位種ではあるもののモンスターもいるので気をつけてください。」

「質問?」

「受け付けません。」

 

 そう言ってノーブルは、部屋を出た。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「はぁ、どうしようかなぁ。」

 

 ノーブルが部屋を出て暫くしたあと独り言を呟く。

 まぁ、仕方ないだろう。

 やることなど、決まってないのだ。

 まあ、途方に暮れるのも仕方ない。

 

「そうだ、とりあえず箒を貰おう。うん、それがいいはず……」

 

 そうブツブツ言いながら歩く。

 とりあえず本館周辺に行けばノーブルがいると思ったのだろう。 

 実際にそれは正解だった。

 

「おや、こちらへ来てどうしたのですか? 私が恋しくなったのですか?」

「違いますっ!! って、そうじゃなくて…… 箒ってもらえませんか?」

「あぁ、たしかにホコリまみれですしね。あの世界から来たので流石に作り方は知りませんよね?」

「まぁ、はい。」

「それなら教えるのです作ってください。」

「えっ、けど、作るのにナイフとか材料とかいるんじゃ……」

「その程度ならあげますよ。いくらでも取れるものをわざわざ出し惜しみしません。あと、ナイフは私の不手際で持たせ忘れてましたね。一緒に渡しましょう。」

「や、やったぁ!!」 

 

 さすが、メイド。

 飴と鞭の使い方をわかっている。

 

「それでは、少しついてきてください。」

「あ、もう一つ聞きたいことが……」

「受け付けません。」

 

 やはり、何もが考えずにやっているに違いない。

 その後、箒作りに何度も失敗し呆れられる福幸の姿があったとか…… 

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