59 色欲
日は沈み、街には暗い影と街頭の明かりそしてある種の喧騒で満ち溢れだす。
「御主人……様」
涙を流しながら街を歩く。
目的も、目標も終着点もない。
心に刻まれた喪失感と僅かな"安堵"が彼女をそうさせる。
「御主人様ぁ……、御主人様ぁぁ…………、ご主人……………さまァァァ………」
心が壊れたかのように彼を呼んでいた時の言葉を呟く。
「ごしゅじん……、さまぁ………」
彼女は何を見ているのだろうか?
植え付けられた偽りの感情の主を見ているのだろうか。
目の焦点は定まらず、求めるものは手の先にいない。
「アハハ、哀れねこれは。」
「放っておいても死ぬでしょう。」
「ごしゅじん……、さまぁ………ごしゅじん……、さまぁ………」
色欲の大罪の効果として、興奮状態で出会った異性に一度だけ愛慕の感情が発生する。
そして、その異性が消えると深い喪失感とともに一生戻らないその愛慕を再度求め始める。
再度、出逢えどその感情はその異性には向かず消して手に入らぬ何かを手に入れようとする。
偽りの感情で形成された二度と手に入らぬ誰よりも深く愛する愛を求め続ける。
求めようが手に入らぬ、その愛を。
「あ、」
吹っ切れたように言葉が口から出る。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァアアアアアアアア──────」
声が出ずとも発狂し続ける。
一人の蜘蛛女は──────彼と過ごした希望の楽園で、絶望をさけぶ。
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「おっしゃ、余裕っ!!」
「オーク程度なら軽く殺せるわね。まぁ、それでも警戒していきましょう。」
「はぁ? 警戒なんていらねぇだろ。こんな雑魚だぜ?」
「まぁ、そうだけど。」
ここは、王立学園の付近に存在するダンジョン。
まだかつて一度も攻略されたことのないダンジョンだ。
そこを攻略する3人の子女の影がある。
異世界から召喚された勇者と言われている人物達だ。
「しっかし、つえぇなぁ。俺の絶対切断これさえあれば無敵じゃね?」
「そうかしら? 絶対防御にを切れなかったじゃない?」
「はぁ!? あれはノーカンだ!! 姫さんが言うには2つのそこそこの強度を持つバリアの間に無限に等しい空間が存在するって言ってたじゃねぇか。」
「そのスキルでは空間は切り裂けないの?」
「さぁ?」
「はぁ……。うるさいから黙れ。場所を弁えろボケが。」
「はあっ!? お前のことを切ってやろうか!?」
「できるものならな。」
そう言い、少年はやってきたオークを彼の背後に展開された"無数の銃器"で一掃する。
「その絶対切断の弱点は刃の部分が対象についてなくちゃいけない。違うか?」
「それがどうしたんだよぉ!?」
「なら俺の無限銃創に負けるな。」
そう言い、また警戒に戻る。
「チッ、粋がってんじゃねぇよ!! 自分の能力が強いからってなぁ!!」
「はっ、その程度の知性だからこそお前は弱いんだよ。もっと能力を上手く使えよ。こんなふうにな。」
セミオートマチックの銃とその亜種が二本。
彼を囲うように置かれる。
「ッ………」
「冷や汗を流すぐらいなら実力を弁えろ。チッ、それより福幸はどこにいるんだよ……。なんで教会から指名手配されてんのか……。あいつ、いくら不幸だと言っても限度があるだろ……。」
また、思考の渦に没頭する青年。
それを見て忌々しそうに舌打ちをする彼。
「お前の、魔導辞書で勝てないのかよ?」
「ムリムリムリムリ!! 私の完全上位互換の魔導図書館の志保でも勝てないのよ!? 私じゃぁ逆立ちしても勝てないわよ!!」
発狂するように言う。
「下らん相談は終わったか?」
「チッ、糞が。」
「知らんな。」
そう言い、三人は迷宮の奥深くへと降りてゆく。
異世界という夢にまで見た場所に存在する地獄に繋る迷宮へと。
一章完結
以下は一章完結時点で出しても大丈夫と判断した情報です。
読み飛ばしても構いません。
主人公保有魔法(剣姫把握済み)
サンダー
ファイア
ウォーター
ウィンド
サンド
ライト
ダーク
ローヒール
属性付与:風
属性付与:土
属性付与:水
属性付与:火
属性付与:闇
属性付与:光
主人公保有魔法(その他)
アンコンケラブル
indomitable
レジスト
属性付与:鉄
弱点スキル
美徳スキル全般(特に節制)
憤怒
条件ありで物理系スキル全般(剣姫曰く『基礎はあれど基本がお粗末。技として履修した物理系の技は彼の技量では受け止めきれない。』とのこと。)




