58 不屈の騎士
拙い文章なのは許してください
血がシミを作っている。
(コマ……チ? )
視界が白く濁る。
「ま……、負けま………ん!!」
「……だらな………貴様が…………」
二人の声が聞こえる。
(俺が死んだら……どうなるんだろうな。)
回らない頭が回り始める。
痛みを置いてゆく。
体に力が入る。
うがかぬはずの体が動く。
「ハッ、ハハ」
「……な、……うごけ………」
「ハッハッ、ハハハ」
「ご………様!!」
体が限界を超える。
何処からか、言葉が聞こえる。
『決してくじけぬ限り力を貸してやろう』
と。
「はぁ、コマチ。逃げろ。ここは俺が食い止める。」
福幸らしくない言葉が口から飛び出る。
「えっ、…………で…………」
「ま…………立つと………」
言葉が意識はまだ朦朧としている。
だが、徐々にはっきりとしゆく。
「コマチ、逃げろ。俺をおいて逃げろ。」
不幸な少年にも守るものができた。
できてしまった。
「さて、少しばかり待ってはくれないか?」
「「無理です」」
視線を神官に向けて言うも当然のごとく拒否される。
「ならば力ずくで止めるしかねぇな。ちと、無作法になるが……。しばらくの間俺と踊ってもらおうか。」
そう言い、矢で貫かれ骨が折れた体が動き始める。
「ッらァァァあああ!!!!」
鬨の声を上げる。
「無駄です。」
振るい叩きつけた剣はあっさりと弾かれ、そして、紅く輝く目を持つ少年はまた吹き飛ばされ
「あー、全くぅ!! 弾き飛ばすなら方向を考えてよ!!」
「すみません。」
矢を回避する。
「覇ァっ!!」
「なんっ、ですかっ!?」
初めてスプラッタ少女の顔が驚きで歪む。
福幸が、振るった剣がいつの間にか腹に刺さっていたのだ。
慌てて飛び退く。
「【贖うは不屈の騎士】」
瞬間、一振りの斬撃が無数の斬痕を残す。
その斬痕は彼女の斧に罅を入れ砕く。
「【|再降せよ、我が神の御使いよ】」
その武器が復活する。
「おっとっと!! 私を忘れちゃァだめだよぉ〜?」
「忘れるか。」
福幸が、振るう刃が不可視の矢を叩き落とす。
「武器破壊のアーツと組み合わせた魔法にその技量……中々に、面白いですね。」
「だねー、で? その程度かな?」
圧倒的余裕を持って、二人は福幸を追い詰める。
だが、追い詰めているのは福幸も同じだった。
「時間稼ぎが最初からの目的だ。それに……、あの貴族も含め逃げたみたいだな。」
「たしかにねぇ。けど、私達の目的は貴方の殺害。それを達成してしまえば良いわけなのよ。」
「できるものならやってみろ。」
ククリナイフをしまう。
腕の痛みはまだあるが無詠唱で発動していたロー・ヒールのお陰でかなりマシになった。
「俺の目が赤い内は誰一人としてここを通させねぇし、俺を殺すこともねぇ。」
その宣言よりも早く動いていた二人の攻撃を完全に迎撃する。
「たかが、レプリカすらも万全に扱えてない貴様らがぁ!! 私を超えて行けると思うなよ。精々、この場にて、醜く踊れ。」
過去の英雄の技が福幸の体から発せられる。
一振りが無数の斬痕を残し、二振りが同じ場所で血肉を削り、矢を剣で打ち返す。
「殺します。必ず。貴方を。」
「えっ? あれを使うのっ!? ちょっ、ちょっとぉ!!」
「『神の御言葉は即ち奇跡の始まり、輝ける未来は凄惨なる地獄より作られる。言葉を紡ぐは我ら神官。世界を変えるは我らの意志。貴様に迫ろう、どちらが良いかと。【天国又は地獄】』」
かつて、一度福幸が見たあの技が福幸目掛けて襲ってくる。
「下らん子供騙しだ。『大精霊、ノームの御力をお借りします【|不屈《indomitable》】』」
それを、一つの呪文にて迎撃しようとする福幸。
白く雷を纏い天から落ちるように刻もうとする斧を、福幸は不屈の魔剣で斬ろうとする。
「無駄っ!! ですっ!!」
「それはどうかな?」
そして、世界は轟音と膨大な光に包まれ…………
そこに立っていたのは福幸だった。
「結果は、見えきったものだったな。」
「あれぇぇ? 私一人なんだけどぉ?」
「性格が変わりすぎだ。まあ、あとは貴様だけか。」
「分が悪いわねぇ……こりゃァ。『彼の者を新たな天地へ運べ【概念的転移】』」
「何っ!?」
福幸の足元から光に包まれる。
「ここは分が悪いからまた今度決着を付けさせてもらうわね。私達で。」
「クッ、【抵抗】!! 【抵抗】!!」
「無駄よ。では、さよぉならぁ〜?」
こうして、福幸はこの場から消えた。




