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57 馬鹿らしい人生

「あっ、ようやく見つけたっ!!」

 

 その声が福幸の耳に届いたのは街に入る手前だった。

 声が聞こえた方を振り向く。

 

 白い衣装に見を包んだ聖職者のような人物が二人。

 片方は先日、魔物をスプラッタにしていた人物だ。

 

「あっ、今日……えっ?」

 

 挨拶をしようとして頭を下げた瞬間、頭上をナニカが過ぎ去る。

 風圧だけが頭に感じられる。

 

 そこからの二人の動きは早かった。

 

「神敵を捕捉しました。貴方が……大罪魔ですね?」

「えっ」

「誤魔化しは聞かないよぉーん。フッフッフッ、貴方が大罪を持ってることはこの私の【人徳(・・)】で確認済みなのよ!!」

 

 そう言われると同時に今度はいつの間にか(・・・・・・)手に斧を持っていたスプラッタ少女が俺の方へと突撃してくる。

 

 (チッ、自動回収機能でも付いてるのかよ!! )

 

 迎撃するためククリナイフを構え、即座に横に転がる。

 直後、福幸のいた場所に斧が"目に見えない"速さで振るわれ、薙がれる。

 風圧が肌に感じられる。

 動けない、体がスプラッタ少女から逃げれるほどにまともに動かない。

 地面に転がり避けようとするも避けきれない。

 

「コマチっ!!」

「ええ!!」

 

 キイィン

 

「面白いですね、糸でこの私の斧を防ぐとは……」

「残念ですが、御主人様には危害を加えさせませんよ?」

「大罪種族の小娘が、我々天に選ばれし神官に刃向かうというのですか?」

「貴方の身分など知りません。それに、私の種族など関係ないでしょう?」

「そうですか。今ならば見逃します。手をお引きなさい。」

 

 何か、嫌な予感が頭を駆け巡り跳ね起きた福幸はコマチを突き飛ばす。

 次の瞬間、自身でも起きたかのような振動が地面を伝い届く。

 

「衝撃……? 地震を起こす魔剣か?」

「っ!! これは魔剣ななんぞの汚物とともにしないでいただきたいっ!!」

 

 激怒したように、確実に殺すようにその斧は福幸の方へと襲いかかる。

 それを咄嗟の判断でククリナイフで受け……福幸が地に伏せさせられた。

 

「は?」

「死になさい。」

 

 自分が真っ二つになる姿を幻視する。

 

「うっ、ぁぁぁあああああああああ!!!!!」

 

 死にたくない。

 

 その一心で無理矢理にでも起き上がり、次の瞬間スプラッタ少女の影(・・・・・・・・・)から飛来した矢に左手を射抜かれる。

 

「おっ、命中〜。私を忘れちゃァだめだよぉ〜?」

「クソッがぁ!!」

 

 左手に持つククリナイフの特殊な造りのおかげで手から落ちてはいないものの、激痛に苛まれまともに振るうことはできないだろう。

 手に刺さった矢を右手で抜く。

 

 ヒュッ、、、!!

 

 二本目を避けれたのは偶然だろう。

 痛みに仰け反り運よく避け、そして、スプラッタ少女の斧の前へと逝く。

 

「まず……いっ!?」

 

 まともに体制を立て直せていない。

 その状況で斧から逃げ切れると思うこと自体が愚かな話だ。

 そして、その迫りくる斧に福幸が切り裂かれ初め……無い。

 

「グッ……ハァっ!!   はぁ……はぁ……」

 

 中々に服が硬かった。

 だが、衝撃はどうにもならない。

 モロに食らった斧の衝撃は受け流せない。

 まるで車に(・・)当たったかのような衝撃によって何メートルも飛ばされる。

 

「中々いい装備してるね〜!!」

「これは、ぐちゃぐちゃになりませんね。」

 

 周囲を一瞥する。

 コマチに関してはこちらへ駆け寄ってくる。

 貴族のおっさんは呆然と固まっている。

 自らを神官と名乗った二人は、こちらをどうすれば殺せるか楽しそうに話している。

 

「………かひゅ………」

 

 もう、手に力が入らない。

 肋骨に数本はヒビが入ってるだろう。

 そして、それ以上に呼吸ができてない。

 

 頭が朦朧とし始め酸素を求める。

 

 (俺、死ぬのか……? )

 

 自問自答する。

 死ぬ、そう考えてもあまり怖くはなかった。

 不思議なことに、死ぬことに忌避感はなかった。

 

 あっさりと、意識を手放そうとする。

 もう、いいか……と。

 頭に、走馬灯が走り始め、あっさり終わる。

 守るべきものも好きな人物も何かをしたいという目的も。

 

 何もない人生だった。

 

 空っぽで虚無で機械的に日々を生きて機械的に日常を噛み締め機械的に感情を吐露する。

 そんなくだらない人生だった。

 夢もなければ希望もない。

 現状に満足し他者にいじめられながらも己の役割だからと受け入れいじめられ続け。

 身にふさわしくない女性に恋をし諦めまた日常に戻る。

 こちらの世界に来てからはその日その日を必死に生きてようやく落ち着けたのがこの街に来てからだろう。

 だが、その日常も不幸ながら消え去った。

 

 馬鹿らしく感じる。

 何であそこまで死にたくなかったのか。

 

 夢もなければ希望もない

 

 そんな人生、無くなればいい。

 

「ガッ……」

「その忠義、見事ですね。ですから主諸共死んでください。」

 

 そんなときその声が聞こえたのは、偶然だったのだろうか?

夢も希望も望みもない。

空白な人生を送ってきた福幸に飛び込んできたあの言葉……。

さて、福幸はここからどう動くのだろうか

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