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54 模擬戦

「よい、しょっと。」

 

 荷物を持ち上げ、運び切る。

 

「ありがとな、あんちゃん。いやぁ、量が多くてなぁ。ちっと、大変だったんだよ。」

「いえ、別にこれぐらいは。」

「依頼にも無いことをしてもらった上にそれを謙遜されちゃぁ、俺の立つ瀬がねぇ。大人しく、感謝ぐらい貰ってくれ。ガッハッハっ。」

 

 そう言って、近くの屋台に売っていた焼き鳥を渡す。

 頭を軽く下げ、焼き鳥に齧り付く。

 そして、暫くおっさんとむしゃむしゃと食べながら雑談をした。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「これで終わり、か。」

「御主人様、本日はお早いですね。」

「ん? まぁ、受けた依頼が簡単なものだったしね。」

 

 そう言ってから、ギルドの訓練場へと向かう。

 

「鍛えるのですか?」

「いんや、確認。」

 

 それだけ伝えるとククリナイフと不屈の魔剣を抜く。

 最近、戦ってなかったせいで腕が落ちてるのではないかと福幸は心配してるだけだろう。

 

「相手してくれるか?」

「もちろんですとも。」

 

 そう言い、ロングソードを手に取るコマチ。

 

「じゃぁ、用意……ドンっ!! 【エンチャント︙ファイァ】!!」

 

 一瞬で展開され付与される魔法陣。

 属性は火属性。

 ククリナイフに付与されたその魔法は福幸の与えた魔力(燃料)により強く燃え上がる。

 

「ああ、だから実践では使わなかったのですか。」

 

 そう言い、蜘蛛の糸で炎を避けつつ福幸を攻撃する。

 それに、ギリギリで対応する福幸。

 この魔法の弱点が露見している。

 

「やっぱ、失敗か。視界がわりぃな。」

「ですね、【捕縛陣】」

「【アース・ニードル】っ!!」

 

 地面から出てきた槍で無理やり迫りくる糸を防ぐ。

 だが、徐々に切り裂かれついには突破される。

 

「けどなぁ!! そんなこと予見済みだぁ!!」

 

 ククリナイフを中に放り投げ不屈の魔剣で思いっきり弾き飛ばす。

 コマチは、それを防ぎきれず慌てて左それる。

 そして、その後ろから飛んできた石も間一髪避ける。

 

「なかなかっ、やりますねっ!!」

「【ファイア・ウォール】改っ!!」

 

 彼女の言葉に答えず炎の盾を薄く粘りつくようにしたまるでフリスビーのようなものを4つ飛ばす。

 確実に殺す気だ。

 だが、そんなのお構いなしに糸でそれを無理やり切り裂く。

 だが、やはりと言えばいいのか。

 すぐに焼け落ちる。

 

「思ったより糸の耐久が高いな。」

「魔力を強く込めましたから。」

 

 そして、二人とも攻撃の手を止める。

 

「やっぱ強いな。」

「そうでしょうか?」

「強いよ。俺の知ってる中では4番目かな?」

「いつか一番になってみせましょう。」

「心意気はいいけど、絶対に無理だ。」

「なぜ、ですか?」

「冗談抜きで言うけど、たとえ無敵の魔法やスキルを持っててもあの人は倒せる気がしない。少なくとも、俺の全力を幻影魔法で対処できてる。」

「はい? 御主人様の全力というのは……」

「正確に言えば、出せる手札を全部出せない状態にさせられた上って言葉も続くけどな。魔法を使おうとしたら一番短いやつでも詠唱途中で5回は死ねる。」

「あぁ、勝てませんね。確かに。ですがいつか必ず……」

「ま、まぁ、頑張れ。」

 

 その熱意に押されて呆れつつ答える福幸。

 そして、クルクルッと不屈の魔剣を回すとククリナイフを逆手に取る。

 そして、脱力。

 

「第2ラウンドといきますか」

「参りますっ!!」

 

 今度は先手はコマチ。

 いつの間にか発動していた魔法で福幸を切り裂かんとする。

 

「ふう、物は試しだ。」

 

 全身から力を抜く。

 そして、踊り始める。

 踊りと言ってもダンスではない。

 捻りと回転と突きと一瞬の加速を程よく混ぜた舞だ。

 その動きは先が読める。

 だが、それ以上に早い。

 

「くっ!!」

 

 糸が次々に巻き取られ切り裂かれる。

 強さで言えば福幸とコマチならば基本的にはコマチのほうが強い。

 だが、それ以上に福幸は漫画やアニメで得た知識を使いそして、剣姫によってそれを形にさせられている。

 必然的に奇想天外の動きを軽々と行う福幸のほうが有利となる。

 

 ザッ!!

 

「ここまでだな。」

「そう、ですね。」

 

 同時に剣が互いの急所に刺さりかける。

 お互いに寸止めにしたからいいもののほんの少し遅ければグサッと行っていたかもしれない。

 

「しかし、お強いですね。」

「あの二人はスパルタだったからな。今日は飯俺が作ろうか?」

「どうしましょうか? そうですね、せっかくですし二人で共に作りましょうか。」

「あー、悪くないな。宿に戻ったら女将さんに相談するか。」

「そうですね。それならば早く戻りましょう。」

 

 そう言い、二人は宿に向かった。

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