51 ああ、良き天気かな?
「あのさぁ……。」
「すみません。少々手加減が苦手なもので。」
「いや……、いいけど……。というか、その斧何なの?」
「持ってみますか?」
「えっ、じゃあ有り難く……って重っ!?」
そう言って、福幸の手から落ちた斧をひょいと彼女は持ち上げる。
「ふふっ、いい武器でしょう?」
「少なくとも見た目からは考えられないほど重かった。」
「そうでしょうね。しかし、お礼と言えるものが渡せてませんね……。魔獣討伐は私は不得手というより素材を無駄にしがちみたいです。」
「今更すぎないか?」
「いえ、じょ…… いえ、先輩たちと戦ったときは毎回難なく捌かれるので……。」
「そ、そうか。」
軽く戦慄する。
彼女もかなりの強さだ。
真正面から戦えば確実に福幸が負ける。
そのレベルの強さを見せているのにまだ本気ではないのだ。
余裕を持っている。
油断とは違う余裕を。
「まぁ、お礼はいいよ。もう貰ってるしな。」
「私は何も渡してませんが?」
「君と知り合えたことが最大のお礼だよ。」
「はぁ、そうですか。」
そっ、と赤面する福幸。
恥ずかしいのだ。
こういうのを言ってみたいお年頃ではあるが言ったら言ったで恥ずかしいのだ。
難儀な年だ。
「まぁ、それで良いのならばいいでしょう。」
「まぁな。あっ、名前は?」
「名前、ですか? ふむ、名を聞くのであれば先に名乗るのが礼儀でしょう。」
「あー、そうだな。俺の名前はナヒト。ただの冒険者だ。」
「そうですか。私の名前はアリファー・ストレー。ただの教会関係者です。」
「へぇ。また機会があれば会おうな。」
「ふっ、そうですね。貴方みたいな心が清い人物に会えることを期待しています。」
そう言って、二人は門まで行くとそこで分かれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「全く……、どこに行ってたのですか? シスター・アリファー」
「いえ、少々行き倒れていたところを助けられたのですよ。」
「全く……、貴方ももっと自覚を持ってください。」
「善処します。」
「はぁ、まあいいですわ!! それより聞いてくださいまし?」
「何でしょうか?」
「シスター・アリアのお陰でこの街に神敵が潜んでいるということはわかりました。ですが……」
「今までの神敵より反応が弱々しいため私達のものでは発見できてませんこの話の重要性がわかりますか?」
「わかりません。シスター・キラ」
「全く……、貴方も聖武具を与えられた者でしょうに……」
「私が得意とすることは戦うことです。考えることは任せます。」
「その性格を直しなさいって、何度言えばわかるのですか!!」
眉間を抑えこのパートナーで組ませたのは最悪なのでは? と考えるキラ。
その横で、呑気に床のシミを数えているアリファー。
ここまで相性が悪いコンビは少ないのではないのだろうか。
「まあいいですわ!! それより……、神聖魔法は扱えますわよね?」
「少なくとも、地獄か天国は使えました。」
「貴方最大の取り柄が使えなくなると私は非常に困りますからね。精々、私の道具として扱われてくださいまし?」
「それが、試練とあらば。」
そう言い、アリファーはキラに跪く。
それを見て、キラは愉悦の笑みを浮かべるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ただいまー。」
「おかえりまなさいませ御主人様他の女と楽しく過ごされているようでしたが楽しかったですか?」
ハイライトを消し、ゾッとするほど低く早口で質問という名の脅迫をするコマチ。
なんやかんやで、この街に来てから明確にしばらくの間分かれたのは初めてではないだろうか?
「わ、悪かったって。」
「ならば、態度で示してください。具体的には……」
「おっと、そこまでだ。放送禁止用語は使わせねぇぞ?」
「ふぉがふぉふふふぉわふぉ……ふぉふぉっ。(御主人様に殺される……ふふっ。)」
「何で恍惚の笑みを浮かべてるんだよこいつは……?」
そこ知れぬヤンデレの恐ろしさを久々に垣間見た福幸。
最近は落ち着いていた反動が一気に来ているのだろうか?
「はぁ、はぁ、なぜ辞めるのですか? 御主人様に殺されるのは……」
「さぁて、夕食を食べるか。聞いてたら俺の心が荒みそうだ。」
「どうしたのです? 私の愛を貴方に伝えようとしているだけですが?」
「うん、ヤンデレの愛を受け止めれるほど俺の心は広くないんだ。済まないな。」
「構いませんよ? 私の愛を受け止めてくれるようわからせますから。」
「非っ常ぅに嫌なわからせだな。是非御遠慮させてもらおう。」
「御遠慮なんてする必要はございませんよ? 貴方の愛を私に注ぎ込んでくれればそれで良いのです。動かなくて良いですよ? 私が全てやります。」
「やるなっつってんだだよ!!」
ああ、良き天気かな?




