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50 天落ちる

「本日はどうしましょうか?」

「特に必要なものもないし休むか。まだお金あるし。」

「そうですか。」

「あっ、俺街をちょっと散歩してくるわ。」

「なら私も……」

「いや、一人で大丈夫だよ。」

 

 そう言い、朝食を食べ終わると宿を出ていく。

 ここに来て2週間近く経った。

 何度か、あの残念騎士とも合ってはいるが残念とはいえ騎士ではあるのでかなり忙しいらしい。

 そんなことを考えつつ食べ歩きをしようと思い屋台を見回っていたら地面に倒れている美人の女性がいた。

 

「あ、あの、大丈夫ですか?」

「………お」

「えっ?」

「お腹が減りました……。」

 

 その直後、可愛らしくグゥ、とお腹が鳴る。

 取り敢えず、福幸はポーチの中に入っていたパンを渡そうとして手に持った瞬間消え去っていた。

 慌てて周りを見ると先程の女性が口をもぐもぐさせているのが見える。

 

 (お、俺でなきゃ見逃しちゃうね。)

 

 などと、巫山戯つつも心配していることは確か。

 近くの屋台で売っていた焼き鳥二本を買うとその女性に渡す。

 

「水はありませんか?」

「図々しいなっ、おいっ!?」

 

 と言いつつも、ポーチから水を取り出す福幸。

 なんやかんやでかなり面倒見が良い。

 

「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます。」

「別に構わないよ。というか、その斧……君の?」

「えっ、ああ。まぁ、そうです。いいでしょう?」

「デザインがかっこいいと思うよ? これは天使かな?」

「はい!! 茨に巻き込まれながらも苦難を超える天使をイメージしてつけたんですよ!! かっこいいでしょう!!」

 

 そう言って、その斧を福幸にみせつけてくる。

 白一色で作られた斧は威圧感こそないものの神聖さを醸し出し使うのを躊躇わさせる。

 

「うん、かっこいいと思うぞ?」

「ですよね!! ですよね!!」

「まぁ、もう大丈夫そうだな。じゃぁ!!」

「い、いえ、少し待ってください。」

「ん? 何だ?」

「お礼ですが……、今私には返せるものがなくて……。」

「あー、いらないよ。別に。」

「そういうわけには行きません。そうですね……。私は魔獣討伐が得意ですのでそれで礼をしましょう。」

 

 そう言うと、福幸の手を引っ張り町の外へと連れ出した。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「あっ、オークがいる……。逃げようか……」

「オークごとき、一撃のものに粉砕できますよ。では行ってきますっ!!」

「ちょっと待てぇ!!?」

 

 町の外へと出て早速出会ったモンスターはなんとオークだった。

 福幸が最大威力の魔法を使ったり急所を突けば倒せばするものの実はかなり強いモンスターである。

 楽に狩れるなどと、油断しておけば瞬殺されかねないぐらいには。

 それを、瞬殺できる? バカを言え。

 そう思い、咄嗟に手を伸ばすもそれより早く彼女はオークへと向かい走り出す。

 

「────────────────────────【天国又は地獄(ヘル・オア・ヘブン)】」

 

 何らかの魔法詠唱をはさみそう口ずさむ。

 一瞬、おのが白く光り輝いたのが見えた。

 

「チッ、クソッ!! 『破壊の衝動、炸裂するは魔の理。爆炎を描けぇ…… え、?」

 

 ドッッッッ・・・・

 

 ガァァァァアンンンンンッッッツツツ!!!!!

 

 魔法詠唱が終わるより早く、彼女から振り下ろされた斧が白い稲妻を纏いオークの頭上へと降り注がれ

 

 一息つくまもなく、まるで"車並みの重さを持った斧が地面に叩きつけられた"ような音がした。

 

「み、耳がぁっ!?」

「ふぅ、少しやりすぎましたね。」

「いやっ!! 音が!! でかいんですよ!!」

「少々、威力が強すぎましたか。すいません。これでは礼にはなりませんね。」

 

 そう言い、新たな敵を捜し出す。

 その様子を見て、呆れる福幸。

 その後、ため息を付くと彼女を追いかけ始めた。

 

 ────────────────────────

 以下はおまけです。

 本編には関係ありません────────────────────────

 

「楽しくやっとるようじゃのぉ。ククク。」

「そうみたいですね。おや、来客のようです。」

 

 そう言うと、ノーブル……否、メイドは厨房へとゆく。

 

「久方ぶりじゃ。■■よ。今更隠す意味がないと思うがのぉ……。」

「さぁな。ま、所詮これもおまけだ、おまけ。それより魔法関係の詠唱を纏めておいてくれ。あいつにいくつの魔法を教えたんだよ……。整理したい。」

「そこまで教えておらんよ。精々応用無しで10つ応用含めて20程度ではなかろうか?」

「十分多いわ。後でまとめておけよ。」

 

 そう言うと、ふたりともメイドが届けた紅茶を飲む。

 

「ふぅ、相変わらず美味い。」

「じゃのぉ。しかし、あの『天落つる魔斧』の劣化版が今もまだあったとは。驚きじゃて。」

「まぁ? そこらはおいおい話そうじゃないか。」

 

 そう言うと、黒い人物は来たときと同じように唐突に消えた。

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