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49 妄言、または妄想

「はい、これが報酬ですね。」

「あ、ありがとうございます。」

「なかなかの仕事ぶりで今後も依頼をしたいとのことでしたよ?」

「そ、そうですか……。」

 

 報酬を、貰った福幸は恐れ慄く。

 その報酬の金額金貨2枚。

 はっきり言って破格の報酬である。

 まぁ、相応以上にひどい環境だったのと相手が満足すること以上のことをしたのもありある意味当然と言える。

 だが、福幸たちはあの錬金術師から膨大な量の資材を貰っているのだ。

 そういう意味も込めると貰い過ぎかもしれない。

 だが、貰えるものは素直にもらう精神の福幸。

 驚きながらも素直にもらう。

 そして、新たな依頼を受けようと話をしようとする福幸を押しのけコマチが話の間に割って入る。

 

「すみません。台車などの貸出ってどこで行なえますか?」

「あー、はい。わかりました。ギルドで可能ですが……。そうですね。ギルド横にある馬小屋に行ってください。これがあれば受け付けてもらえるはずです。」

 

 そう言い、用意されている木札を福幸にわたす。

 

「ありがとうございます。では、これで……」

 

 そう言い、コマチは福幸を連れて外に出た。

 

「えっ、なんで台車なんているの?」

「先日手に入れた物の数々を売り捌くのですよ。あれだけの量があればかなりの額になること間違いなしです。」

「いや、売るのは良いにしてもどこで売るんだ? そこら辺じゃ売れないだろ。」

「ですから、日用雑貨を行商人に売るのですよ。あの方々は意味のないものでも珍しければそれで買います。それを欲しい人に売るのが仕事ですから。そして、複数人の行商人に少しずつ下ろせばかなり量が減るでしょう?」

「まぁ、たしかにそうだけど。」

 

 そういうわけで、台車を借りてそこに福幸のポーチからアイテムを出し載せて行商人に売りにゆく。

 探せば意外とすぐに見つかるもので探し始めてから約30分で見つかった。

 

「ふむ、ではこの商品を売りたいと?」

「そうですね。錬金術師から受け取ったものですので品質に関しては保証できませんが……」

「その程度ならば構いませんよ。しかし、かなり珍しいものが多いですね……。長年この職をやってますが見たことのない品もチラホラとあります。ふむ……、そうですね。これとこれ、あとそれとそちらの品を頂きましょう。これならば……、小銀貨一枚と銅貨5枚ほどですかな?」

「それぐらいで構いません。こちらも貰い物ですのであまり欲張る気はありませんし。」

「それはありがたい。まぁ、下手に粘られるとこちらもやや困りますしなぁ。今後も程よいお付き合いをいたしましょうぞ?」

「ありがとうございます。」

 

 そう言い、交渉を終える。

 

「えっ、本当にいいの? 安くない?」

「逆に、この程度の品をあれだけの金額で買ってもらえたのですよ? 非常に有り難いです。」

「あー、たしかに。これ全部ゴミだもんな。」

「ですから、この金額が妥当なのですよ。それに、下手に粘るのも相手側に悪印象を持たれかねませんしね。」

「じゃぁ、他の商人にも売っていくか。」

「そうしましょう。」

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「だいぶ売れたな」

「残りも沢山ありますけどね。」

「まぁ、容量的な意味でほぼ家丸々一つ分の量あるからな。」

「そういう意味では仕方ありませんよ。量が量ですから。」

 

 そう言いつつ、ギルドに台車を返した二人は宿屋へと向かう。

 討伐依頼などの町の外へと出るタイプの依頼でなかったためそこまで疲れてもいない。

 早めに宿屋に帰り二人はゆっくりと休むことにした。

 

「夕食はどうかな?」

「あー、お願い。」

「了解っ!! オススメかい? 少しまけて銅貨5枚だよ!!」

「うん、なんでもいいよ。二人分頼んだ。」

 

 その注文を聞き届けると、さっとお金を受け取り厨房の裏へと回り込んだ。

 暫くしたあと夕食が出てくる。

 

「うん、やっぱうまいわ。」

「そりゃぁ、有り難いねぇ。」

「肉と野菜の量が程よく夕食にはもってこいですね。」

「ふふっ、食べすぎてあたしのように太らないようにね!!」

 

 照れ隠しでそう言うと他の客のところに行く。

 沢山とまでは行かないがそこそこの客が要るのだ。

 回転率を上げなければならないことに違いはない。

 

「まぁ、ご飯を食べる前に少し話があるんだけど……」

「何でしょうか? 御主人様。」

「えっと……、転移者とかってこの世界にいるの?」

「転移者……でございますか? そういえば、最近異世界から呼ばれた、との話もありますね。まぁ、眉唾ものですが……。」

「そうか……。どこに行けば会えるかな?」

「まさか、居るはずもない存在に会える訳が無いでしょう。」

「…………そっか。」

 

 福幸は、そういった直後ご飯が届き二人は夕食を食べ始めた。

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