46 ポーション
「あー、ねみぃ……」
「おはよう御座います。御主人様。」
「あー、おはよう。」
のそりと、起き上がった福幸は顔を洗いに部屋を出る。
コマチはそれを確認したあとしばらく福幸の寝ていたソファをクンカクンカとしたあと、武器を携帯していく。
そういえば、言ってなかったがコマチの武器は投擲ナイフと片手剣である。
だが、種族特有の魔法である糸魔法が万能すぎてあまり出番は無かったが……。
近接もそつなくこなせるアタッカーだ。
ガチャ
「あー、眠い……。」
「本日はどういたしますか? 御主人様。」
「仕事……受けに行くかぁ……。」
「わかりました。御主人様の武装はこちらに……。」
「うん、ありがとう。」
福幸も装備を手早く付け、武装を完了させる。
福幸の姿は黒に金の線が入っている上着とズボンに上から丈の長いこれまた黒色に金のラインが入ったコートを着ている。
この服は剣姫から渡された服で福幸は密かに剣姫の好きな色が黒ではないかと疑っている。
コートには温度をある程度一定に保つ魔法とと汚れが落ちやすい魔法がかかっているらしくかなり快適だったりする。
また、素材のお陰なのかかなり燃えづらく千切れることもない。
そして、福幸の動きを阻害することがないような設計となっているため戦いやすい。
唯一の難点といえばぱっと見真っ黒であることと身分が高い人物に見えることだろう。
逆に言えばその程度しか難点が無い完璧な品であるとも言える。
まぁ、その服を着終わり装備を付け二人は街へと出る。
「御主人様、本日はどうします? ゴブリン狩りをしてもいいのですが……」
「他にやることがあるのか?」
「あっ、いえ、そういうわけではないのですが……。一度、回復薬とか購入したあとに行きたいな。と思いまして……。」
「あー、たしかに。怪我したときに使えるようにか。」
「はい。ゴブリンごときに遅れを取ることは無いとは思いましたが……、長時間戦うことを念頭に置いたらやはり必要かと……。」
と、当たり前のように話しているので解説をすると。
この世界には、錬金術師によって制作されているポーションというものがある。
内容としては万能薬とでも思ってもらえれば良い。
癌などの細胞が変質化した病気以外ならば基本的に何でも治せる。
弱点としては素材が低位のものであればより大変な病気であれば治りきらず症状に対して高位の物を使用したり、一度に大量に摂取すれば中毒症状を起こす。
だが、適切な量を摂取すればほぼ確実に治るという薬でもある。
それが、ここで語られているポーションである。
使い方は患部に直接かけるか飲むかの二択だ。
ついでに、クソまずい。
「じゃあ、一度寄るか。あっ、お店の場所は何処なんだ……」
「あー、一応知ってますけどギルドで聞きますか。そちらのほうが良いでしょう。」
「うーん、そうするか。聞くのは一時の恥、聞かぬは一生の恥ってわけだしな。」
「はい?」
「あー、俺の故郷のことわざだ。」
「こと……わざ?」
「あー、くっそ、どう言えばいいかな? まぁ、なんだ……その……、昔から言われてることとかを短く言ったもののことだよ。」
「分かりづらいですね。」
「これ以上説明を求めないでください、俺には無理ですっ!!」
「ふふっ、まあいいでしょう。それで、そのことわざの意味はなんですか?」
「あー、聞くのは一時の〜、のやつ? これはわからないことがあれば恥ずかしがらずに聞けってことだよ。」
「あー、はいはい。たしかに、分からないことをわからないままにしておくのは不味いですもんね。」
「うん、そういうこと。」
そういうことで、二人はギルドに向う。
若干歩きなれつつある道を歩き偶に野良犬に噛まれたりはしたが、基本的になんの問題もなくギルドに着く。
「いらっしゃいませ~、本日はどのようなご要件で?」
「あー、依頼を受けたいんだけどその前にポーション買える店で良いところ無いか?」
「ポーションですか……? それならどうせですし錬金術師さんから依頼が入ってますのでそれを行いますか? 場合によっては個人的に売買してくれると思いますし……。」
「あっ、じゃあお願いします。」
「わかりました。内容は、その人の研究室の掃除ですね。掃除用具一式は依頼者の方が用意なさるようです。報酬は銀貨3枚ですね。受けますか?」
「お願いしますっ!!」
家の掃除だけで6万円とは……破格の報酬である。
これを受けないわけがない。
即決で福幸はその依頼を受注する……が……。
「ほ、ほんとうによろしいのですか……?」
「構いませんって。」
「こ、後悔しないことを祈ってます……。」
などと、受付嬢は言っている。
まぁ、まさか掃除依頼で大変なことになるわけもないだろう……。
フラグが立ってますね




