44 スライム
「討伐証明は、右耳だったよな?」
「そうですね。どうやって切ります?」
「ククリナイフあるから大丈夫。」
そう言い、手際良くゴブリンの頭部から耳を切り落とす。
「うへぇ……、血がついた。」
「それぐらい慣れてるでしょう……。」
「気分的に嫌なものは嫌なんだよ……。」
そう言いつつも手際良く、耳を切り落とす福幸。
その手に掛かればすぐに二匹程度のゴブリンの耳など切り落とせる。
「手際が良いですね。」
「あぁ、他の魔獣? 魔物? の解体で慣れたからな。」
「一体何を解体したのか気になりますね。」
「聞くか? 俺は思い出したくもない。」
「そうですか、ならば遠慮しておきましょう。」
「まぁ、それを抜きにしてもゴブリンの解体も何回かやったことあるしな。ほら、この前見せた魔石あるだろ? あれも俺が取り出したんだぜ?」
「そうですか、凄いですね。」
と言っている間に、解体は終了。
福幸はついでとばかりに胸を開けるが当然内臓以外なにもない。
「コイツラって魔石ないの?」
「えっ? 基本的にありませんよ……?」
「あっ、ゴメン。理解した。」
一瞬で察する福幸。
察しのいいガキは嫌いじゃない。
(あそこだけ……というわけでもないのだろうけどゴブリンが魔石を持つのはかなり珍しいんだろうな。)
そのとおりである。
「じゃあ、他の奴らも討伐していくか。」
「それが宜しいかと。」
そう言い、二人とも歩き出す。
以外に探さばいるもので、街の近くで刈っていたにもかかわらず一時間で6体とかなり好成績な形だ。
もちろん、普通の初心者であればここまでの速さでは狩れない。
二人共一定以上の実力者でありこういうことに慣れているからのこの速さだったりする。
「これ一体が1000ペーカだろ? 高くないか?」
「いえ? そうでもないと思いますよ? 私は。いくら弱いとはいえ命を掛けているんです。これぐらいがちょうどよいと思いますよ?」
ついでだが、ゴブリンの弱さを簡単に解説すると運動系の部活をしている男子高生一人ならば余裕だが中学生ならば、死にかねない強さがある。
当然誤差はあるため断定はできないが。
「それにしても、ちょっと疲れたな。」
「そのナイフ重いのですか?」
「まぁそれもあるけど。それ以上に魔力回復的な感じの疲労。」
「あぁ、たしかにそうですね。」
この世界では、魔力が自然回復するとき微弱な疲労を感じる。
どれぐらいの披露かというと50メートルを全力で走ったぐらいの疲労だ。
それも肉体的ではないため、そこまで辛くもなく全身に疲労感があるため総合的な疲れは殆ど無い。
それでも疲労感がゼロかと問われればそうではなく実際に動きながらであれば疲れを感じる。
「少し休憩しますか?」
「あー。いや、いいよ。そこまで問題はない。」
「そうですか。おっと、次はあそこにいますよ。」
「了解っ!!」
元気よく掛け声をかけると一直線にゴブリンに向う。
ギャギャッ!!
向こうも福幸を認識したようだ。
棍棒を手に持ち襲いかかってくるがククリナイフで呆気なく弾き飛ばされる。
「おらよっ!! と。」
弾き飛ばしたあとガラ空きになった胴体に蹴りを叩き込む。
吹き飛ぶゴブリンに更に追撃を入れる。
「どらっっしゃぁぁぁあああああ」
地面に吹き飛ばされ倒れたゴブリンの胸にククリナイフの刃を刺し貫く。
鮮血が飛び出、赤く福幸を彩る。
グギャ……
弱々しく最後に鳴き、命の灯が消える。
「倒したぞ。耳もサクッと切り取るか。」
「ですね。それよりそのポーチ便利ですね。家が一軒入る容量なんてなかなか見つかりませんよ?」
「ん〜、まぁ俺も師匠に貰っただけだからな。あんまり価値とかは分からん。」
「そうですか。まぁ、使えるものなのですしいいではないですか。」
「そうだな。」
そう言いつつ、まだ生暖かいゴブリンの耳をポーチに入れる。
ポヨンッ
「えっ、スライム……?」
「おや、本当ですね。珍しい、普通は水源の近くに現れるはずなのに……」
「倒すか?」
「いえ、別に害も無いことですしほっときましょう。」
「あー、まぁそうか。」
二人はスライムを見逃し何処かへ去ろうとしたがスライム側は福幸を追ってくる。
しかし、ある程度進んだところで別の獲物というべきか興味の対象が移ったことにより追いかけてこなくなる。
「意外とついてきたな。」
「そうですね。まぁ、地域によりますがよくあることらしいですよ? それにスライムって意外と倒しにくいですし。」
「あ~、物理攻撃が効きづらいのか。」
「その反面魔法は結構効くんですけどね……。魔法が使えない人にとっては難敵ですし。はっきり言えば無視したほうが良かったりするのでね……。」
「あー、分かる。」
と、今日も二人で他愛ない雑談をしつつギルドでの依頼をこなしていった。




