39 服屋
「宿屋に戻るか……。はぁ。」
「その前に服屋に行きたいのですが……」
「あっ、ああ。じゃあ行くか。」
というわけで、服屋に向かうことにした福幸。
とはいえ、街の地理などほとんど頭に入っていない訳でコマチに案内される訳だが……
「結構色々な種族がいるんだな……。」
「改めて見るとそうですね。何ででしょうか……?」
「いや、聞き返されても……。そういや、小町の故郷は何処なんだ?」
「私ですか? そうですね……、東の島国が故郷ですよ? 御主人様は?」
「あー、俺? えーっとなぁ……、どう言えばいいのか……。はぁ。とりあえず、暗黒大陸って知ってる?」
「あの、伝説の冒険家であるルイジー・クルイソンが見つけた狂気の大陸ですか?」
「いや、知らないけど。ゴブリン一匹が少なくともあのオークストラテジストよりも強い化け物共が犇く大陸だ。」
「え?」
「嘘じゃないぞ?」
「いや、ありえませんよ。そこまで強い化け物がいるわけないじゃないですかぁ……。」
「マジで居るぞ。」
そう言い、福幸はポーチに手を入れ魔石を取り出す。
「なっ、なんですかそれっ!?」
「さっき言ったゴブリンから取れる魔石。」
「その純度ありえないですよ!! 国宝とか言われても分かりませんよ!?」
「いや、そんなことはないはずだぞ?」
足を止めたコマチを待つように福幸も足を止める。
「ほら、早く行くぞ。」
「い、いやちょっと待って下さいって!!」
「いや、渡すつもりはないからな。」
「そ、そこじゃなくあれ程の品を何故持ってるのですか!?」
「ノーブルさん……えぇと、メイドさんに協力してもらって倒した。」
「どういうことですかっ!? なぜ侍女がそんなに強いんですかっ!?」
「あー、んー、説明できないな。うん。俺だって理解してないし。」
「は、はぁ。あ、着きましたよ。」
木でできた少し小さなお店がそこにはあった。
「ここは、私の知り合いの人物が経営してるお店でしてね。」
ガランガラン〜
喋りながら扉を開けるコマチ。
「いらっしゃい、ってコマチじゃないの!! 生きてたの!? ん? 隣りにいる男性は……?」
「こんにちは、ジョロウさん。彼は私の御主人様です。」
「えっ?」
一瞬にして空気が固まる空間。
冷や汗が出てくる福幸。
目の前にいる人物から発せられる圧で福幸は今すぐ逃げたい気持ちでいっぱいだった。
(なんだよ!? どんな状況っ!? えっ? はっ? ちょっと待てよ!! )
内申でビビり散らかす福幸。
だが、理不尽な状況に(不幸にも)なれている福幸は面を取り繕う。
「いい男見つけたじゃん? え〜、うらやまだなぁ〜。私にも半分。いや、腕一本でいいから分けてくれない?」
「いくらあなたの頼みといえ、言っていいことと悪いことがありますよ? 彼の心身ともに髪の毛一本ですら私のものです。」
「なら力づくで奪ったほうがいい? ねぇ〜? あたしと貴方どちらが強いか明々白々だよねぇ〜?」
「出来るものなら構いませんよ? 出来るものでしたら。全力で、この身が朽ち果てようと殺して差し上げましょう。」
(えっ? えっ? えぇっ? )
福幸のモテ期が到来したようだ。
最も本人は、顔を青くし足を震わせてるが。
先程感じた空気が固まったプレッシャーの原因は値踏みをされていたようだ。
「へぇ、随分と大口を叩くようね? やってみる?」
「構いませんよ? 勝てるのならば。」
「口だけってことを証明してみてやるわ【糸縛陣】!!」
「甘いですねっ!! 【操人形】!!」
「ギャァー!!!!」
二人の攻撃が福幸に当たる。
これほど強いのになぜオークストラテジストに捕まっていたのか疑問が残るが一旦おいておこう。
二人の糸によって今、福幸は縛られ操られている。
(くっそぉ!! こうなれば!! )
「【クリエイト︙ウォーター】からの!! 【パラライズ】!! アババババ!!」
自爆する福幸。
だが、幸いにも雷属性だったのもあり水を伝って二人にも麻痺が届く。
「「アババババ!!」」
3人仲良く、気絶しましたとさ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「う、うーん。」
目が覚める。
何故か、ベットにに括り付けられている。
「えっ? えぇ?」
困惑する福幸。
腰に手をやろうとしても一切動かない。
「あっ、目が覚めましたか? 御主人様♡」
「あー、えっと……。とりあえず解いてくれない?」
「い♡や♡で♡す♡」
「命令するよ?」
「えぇ〜?」
「はぁ、解け。」
「ガァァァアアア!!!」
乙女が出すとは思えない絶叫を上げ叫ぶ彼女。
しばらくしたら大人しく解き出した。
その後、彼女は部屋の掃除をしていたという。




