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38 歪み愛

「ギルド長補佐、今回の領分は君のするべきことの範囲を超えている。」

「それがどうしましたか? ギルド長。」

「………我々ギルドの信用を地に落とすつもりか?」

 

 福幸が部屋を出てすぐ部屋の中には一人しかいないのに会話がなされる。

 

「いえ、質問で返すようで申し訳ございませんが……身分すらも明確にできない人物にギルドは信用を向けるのですか?」

「我々ギルドは、依頼人に頼まれた仕事を各々の人物に振り分けること。信用、信頼は仕事の結果によって決めることだ。」

「残念ながら私とは相容れませんね。その思考は。」

「今すぐ、首にしても良いのだぞ?」

「出来るのならば、と言いましょう。」

 

 そう言うと、彼は部屋を出る。

 残ったのは忌々しそうに舌打ちする声だけだった。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ど、奴隷商に行きましょうよ!! き、気分転換にでもっ!!」

「はぁ……、わかったよ。」

 

 ボロクソに言われて落ち込んでいたところから立ち直れてはいないものの頭の中でやることの優先順位をつける福幸。

 

「というか、奴隷契約って絶対なの?」

「はい、というか私という人物が死んでいる状態なのでそれを保証してもらわなければならないんですよ。それに、私達の愛の契約でもありますしね」

「よぉし、二言目は聞かなかったことにして奴隷契約に行くぞー。で、場所は何処なの?」

「ギルドの3つ隣の建物です。ほら、あれですよ。」

 

 コマチは茶色の石レンガで作られた建物を指差す。

 

「あ、案外普通だな。それにしても大通りにあるのか……」

「奴隷法を守っているのならば問題なんてありませんしね。後ろ暗いことさえなければ普通にこういうところにありますよ?」

「そんなもんか。」

 

 改めて自分の常識との違いを突きつけられる福幸。

 より学ばなければならないと考えどうしたらいいかと思案する。

 だが、考え終わるよりも先に奴隷商へと着く。

 

 ガチャ……

 

「いらっしゃいませ、奴隷商『ヴォルスト』へようこそ。性奴隷から犯罪奴隷まで取り扱っておりますよ」

「すいません、奴隷契約って結べますか?」

「おお、構いませんよ。」

 

 そう言うと、受付の人物は手元の紙を片付けると席を立つ。

 

「金額は、銅貨十枚です。払えますか?」

「まあ、はい。」

「では結構。奥の部屋へと参りましょう。」

 

 そう言い、受付の横にある部屋に入る。

 

「ああ、君、君だよ。少しの間受付を変わってくれるかね? ああ、構わないと。それは結構。」

「従業員さんですか?」

「ああ、彼は新入りでね……と。どちらが主かな?」

「あ、僕です。」

「となれば、横の蜘蛛人族のお嬢さんが奴隷対象か。性奴隷でいいかね?」

「えっ、いや……」

「構いませんよ。」

「お嬢さんもそう言ってることだし性奴隷契約としようかね。」

 

 そう言うと、部屋の中に置いてある黒い瓶と羊皮紙を出す。

 

「契約内容は、何がよろしいでしょうか?」

「えっと……」

「御主人様に絶対服従を入れてください。」

「ハハハ、ここまで縛られたがる奴隷も珍しいものですねぇ。はいこれでよろしいですか?」

「えっ、あっ、その……」

「構いません。あと他にすることは?」

「あとは血印を押してもらえれば結構ですねぇ。」

「了解しました。」

「えっ、あっ、その……」

 

 なされるがままに流れてゆく福幸。

 話はどんどん進んでゆく。

 そして、流されるままに奴隷商を出る。

 

「さて、次は服屋に行きましょうか」

「おい、待てよ。」

 

 ビクッ。

 

「なんですか?」

「なんでお前はそこまで奴隷の立場にこだわる? 自分の意志を尊重されない奴隷の立場に。」

「別にいいじゃないですか? 私がしたいのだからと言うのが答えです。」

「真面目に答えろ。」

 

 ビクッ……、ビクッ……。

 

 静かに怒る福幸。

 意図せずして彼女に命令する。

 

「い、言いたくありません」

「言え。」

「い、や、嫌です……ッ!!」

 

 振り絞るように言うコマチ。

 命令違反をすれば全身に激痛が走ると言う。

 まさにその状況なのだろう。

 

「いいから言えっ!!」

「かひゅ……かひゅぅ……」

 

 呼吸がままなっていない。

 そこまでなったとき、福幸は気づいた。

 いつの間にか、奴隷へ命令しているということに慌てて命令解除を行う。

 

「かッ……、やはり……優しいのですね。」

「………大人しく、俺の言うことには従ってくれ。辛い思いをさせたくないんだよ……。」

「何を言っているんですか? 御主人様(旦那様)から与えられる傷や痛みは即ち幸福の証であり私が愛されている証拠!! それを辛い……? ありえませんね。」

「お、おう。」

 

 思わずすごい剣幕に押される福幸。

 そして、二人は服屋にゆく。

 

 コマチの計算通り自分がなぜ縛られたがるのかと言うことを伏せたまま。

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