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20 驚異が潜む

「もう、足が……」

「もうすぐだろ、ほら頑張って立てよ!!」

 

 街まであと、1キロほど。

 二人はそこを歩いていた。

 昼前に村を出発し今はもう夕暮れ

 日は橙に染まり彼らの背後から照らし出す。

 互いに支え合いついに街へと付いた。

 

 ドンドンドン!!

 

「すいませーーん!! 誰かいませんか!!」

 

 福幸が門の横にある戸を叩き声を上げる。

 しばらく、したあと声が聞こえて人が出てきた。

 

「何でしょうか? 時間外での受付は……、えっ、チュネッリーさん!? どうしたんですか!!」

 

 福幸の後ろにいる残念騎士、もといチュネッリーを見た瞬間声を上げて叫ぶ。

 続々と背後から来る守衛。

 屈強な男もいれば線の細い女性もいる。

 

「すみません、森の中で出会ったんですけど。オークの集落を落としに行ったんですよね? 彼女は。」

「は、はい。そうです。」

「なら結論から先に言います。彼女が入っていた部隊は全滅しました。」

「えっ、嘘でしょ……。」

「彼女が森の中を彷徨っているのを僕が見つけてここまで連れてきたんです。詳しい話は彼女から聞いてもらいたいのですが、それ以上に彼女も僕も疲労困憊で。身分証明とかできませんが町へは入れませんか?」

「うぅ、上に掛け合ってきます。」

「分かりました。」

 

 そう言って待たされること十分程度。

 

「すみません、大変お待たせしました。」

「いえいえ、構いません」

「それなら良かったです、街へ入ること自体は正門でないことと身分証明ができないため本来ならば禁止なのですが今回は特例という形で入れるようです。上としても一部隊が全滅するほどの戦力があるということを本当かどうか見定めるために情報を聞きたいようですし。」

「そうですか、僕も一度オークの集団に追いかけられ……いえ、後でお話したほうがいいですね。」

「そうですね。で、街へ入る条件は1つ目は『諸悪の玉』に触れることと2つ目は誰か保証人になってもらうということですね。」

「そうですか、諸悪の玉というのは?」

「犯罪者かどうか確かめる魔道具です。国が指定した犯罪を犯していなければ問題はありません。昔誤作動があったりとかしたらしいですが今あるのは改良版なので一切問題ありません。」

 

 そう、胸を張って言う守衛。

 誤作動というものも気になるが今は体を休めるのが先。

 そう思い、用意された玉に手を触れる。

 特に光もせず終了し次は保証人の問題へ。

 とは言え、これも息絶え絶えのチュネッリーが保証人になると言いそれに関しての書類にサインを行い完了した。

 

「チュネッリーさんは教会に連れていきます。貴方はお金がありますか?」

「いえ、全然。」

「ならばこのお金でそこにある宿屋に泊まってください。あ、安心してください!! 経費で落としましたから。」

 

 その返事に苦笑いしつつ礼を言うと宿屋に向かう。

 だいぶ遅い時間だろうがまだ空いているようで宿の子に何日間泊まるかと渡された硬貨を渡すとあまりに多すぎると言われ釣り銭がかなりの量となった。

 慌ててポーチへしまい鍵を渡され部屋へと赴く。

 そして、今日だけで色々ありすぎた福幸はゆっくり寝ることができた。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「知らない天井だ。寝る前に見たけど暗かったからノーカンで。」

 

 誰に向けていっているのか不明だがそのような言い訳をしたあと服を整える。

 黒を中心としたローブに長袖長ズボンの服、靴はベッドの横にあり革製のものを全部履くとベルトに剣とククリナイフとポーチをつけて部屋を出る。

 向かう先は、昨夜入ったあの場所だ。

 

 コンコン

 

「は、はい〜」

 

 ガチャン

 

「あ、貴方ですか。こっちへ来てください。」

「あ、その前に彼女は大丈夫ですか?」

「その容態もなかで話しますね。」

 

 そう言って扉から見て左手にあるドアを手で指す。

 中に入ると邪魔にならない程度に素人目で見て豪華なものが置かれている。

 

「そこのソファにお座りください。」

「はい。あ、剣はどうしたら……」

「そこに立てかけてもらえれば構いませんよ。で、チュネッリーさんの話でしたね。問題となる部分は極度の疲労と足の怪我のみで教会の治癒魔法使いたちに癒やしてもらっているらしいです。安心してもらって結構ですよ。」

「は、はぁ。」

 

 (教会が治癒系の魔法使いを囲ってるのか? )

 

 疑問を抱く福幸だったが話の続きを促す。

 

「で、オークの集落の大きさですが……、実際どれぐらいでしたか? 1部隊がやられるというのは考えづらいのですが……」

「えっと……、彼女からは何も?」

「流石に気絶しているのでね。」

 

 苦笑いでそう言うと、真剣な顔に戻り続きを促す。

 

「感覚ではかなり大きく、そうですね……オークの数は最低で15匹はいます。」

「はぁッ!? じゅう……、ご? その報告に嘘偽りは?」

「あるわけないじゃないですか。アイツラに襲われて命からがらで俺も逃げ出したんですし。それに普通のオーク以上に強いやつも居ました。」

「本当ですか……、これは領主様にお話を通さなければなりませんね。」

 

 この世界に領主がいるのかと感心する福幸と対象的に、深刻な顔で熟考する守衛。

 

「取り敢えず、少しお待ち下さい。上の人に話を通してきます。」

 

 そう言って福幸は客室に一人残された。

教会に関しては回復魔法を使えるものを囲っているとだけ考えておいてください。

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