16 覇王は貴様を不屈の騎士として認める
「よし、探索するか!!」
あたり一面森の中で下手に留まっているより動いて森の中から出たほうが良いと結論づけた福幸はククリナイフを、一旦しまい一面に並べたバッグに入っていたものを直そうとし手紙を読んでいなかったことに気づく。
「えっと、内容は? 修行お疲れ様的なことと……えっ!? このポーチって空間収納ついてるのか!? 容量は……あ、そこまで大きくはないんだな。大体家1軒入る大きさ……? 十分大きいじゃんか!! でかいよ!! 大きいよ!!」
と、さんざん一人ノリツッコミをしたあと冷静になってから悶てその後にポーチに出したもの全て入れてゆく。
そして、最後にボストンバッグを仕舞おうとしたときもう一枚、手紙が落ちた。
「え、なんだろ?」
もう一枚の手紙の存在に驚き手に取る。
ポーチに入れようとしなければ絶対に見つからなかった手紙に。
そこには漢字でこう書かれていた。
覇王不屈貴様認騎士
「漢文……? 滅茶苦茶綺麗な字だな。」
そう思ったあと、ふと疑問に思う。
なぜ彼女が、漢文など書けるのかと。
そして、しばらく考えたあとふっと笑う。
なぜ、俺が異世界にこれてあの人は異世界に行けないと思った?
そう、自分にいう。
彼女は人ができることならば軽々やってみせるだろう。
悔しくもなければ恥ずかしくもない。
言葉通り、そんなことを思えるほど甘くない。
この世界は。
それほど甘くない。
だから、だからこそ。
この手紙を見たとき視界が歪んだのだろう。
福幸は、認められたのだ。
覇王と名乗る彼女に。
修練を諦めず、僅か一ヶ月で雷という上位属性を使えるようになった福幸を。
激痛を激痛と思えない訓練を耐え忍び、無数の知識を理解させられ、暴走する魔力が肉体の中心を壊しながらも、技を知を魔を知った。
初めて、福幸は不幸なことに感謝した。
この訓練を耐えれるほどの地獄を見せてくれた不幸に。
「ツンデレキャラはいらねぇっての。」
涙が零れそうだ。
だから、ぐっと耐え手紙に皺が付かないようにポーチに入れた。
そのポーチは福幸の腰についてるベルトに付け
福幸は立った。
今、この瞬間に物語は始まろうとしている。
福幸那人という少年が異世界を舞台に立ち回る
不幸な人の物語が
さぁ、異世界を楽しもうか。
魑魅魍魎が跋扈する悲劇と喜劇が混ざりあった。
この異世界を。
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剣姫の手紙の2つ目を見つけた後2時間ほどずっと森の中を彷徨っていた福幸なのだった。
「いやな、仕方ないじゃん? だって森抜けれないんだし、彷徨ってても仕方ないよね? ね?」
誰に向けた言い訳なのか不明だが言い訳めいた事を言いつつククリナイフで木に印をつけて歩く。
だが実際にそうなのだ。
森を抜けれないから森の中を彷徨い道などを探す。
これしか、今の福幸にできることはない。
そんなふうに言い訳だかなんだかわからない言葉をブツブツと呟いていると切り裂くような悲鳴が聞こえた。
「近いな、方向は、あっちか!!」
不屈の魔剣を、いつでも抜けるようにしながら森を走る。
そして、見つけた。
ゴブリンに襲われている女騎士を。
|(エロ漫画展開キター)
などと内申思っていたり思っていなかったりしつつ、健全な男子高生である福幸は彼女を救うべくククリナイフのままゴブリンの中へ体を投げ入れる。
ギャギャッ?
ギャギャギャッ!!
ゴブリンの数は5匹程度。
騎士の彼女は体をだいぶやられているようだ。
火傷などの跡があることから確実にゴブリンにやられたわけではないというのは理解した福幸は彼女から視線を外す。
そして、不屈の魔剣を抜き言う。
「逃げれると思うなよ」
恐らく、福幸は何気ない一言としていったのだろう。
だが、言葉から伝わる言葉の重みはレベルがちがった。
思わず、言葉の圧に守られている女騎士すら引く。
福幸は、見ていたら精神的に傷ついていただろう。
まあ、そんなことはいい。
右手にククリナイフ、左手に不屈の魔剣を携えた福幸は右手に持つククリナイフを投擲しゴブリンの一体を片付ける。
そして、それに驚愕している二匹目を袈裟斬りにし3匹目を足技で払い頭部を足で潰す。
4匹目は少し離れたところで逃げようとしていたところを血と肉で汚れたククリナイフを投擲し5匹目は襲いかかってくる勇敢さに感心しながらも不屈の魔剣で鍔迫り合いを行う。
もう勝利は確定したようなもの。
体格でも力でも勝る福幸が敗北する未来など見えないのだ。
実際、力で押し切り腹に剣を刺した福幸はあまりの恐怖に失禁している女騎士の方を向く。
腰が抜けているのかわからないが這ってでも逃げようとする彼女を捕まえこう聞く。
「えっと、大丈夫ですか?」
「いのぢだげはどらないでぐだざぃ!!」
取り敢えず、ここに福幸が目を拭ったことを書き記そう。
恐らく、血でも付いていたのだろう。
ま、まさか、助けたのに恐れられてそこまで酷く見えるのかと涙が出てきてそれを拭ったわけではない。
無いと言ったらないのだ。
ゴブリンに襲われている女騎士を書いてもグロ描写しかないのは黒犬クオリティです。