表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/153

12 別れ

今回の話は超絶急展開です

 そこから一ヶ月後、福幸は最終試験と言われ屋敷の目の前に呼ばれていた。

 

「今日は、お主がここを出ていく日じゃ。」

「はい。」

「この憎たらしい顔を見ないで済むと思うと清々しますね」

「これ、ノーブル本当でも言ってはいけないじゃろう。」

 

 |(本当なのかよ……)

 

 若干気が抜けるやり取りをしつつ剣姫は、本題を話し出す。

 

「まあ、本日が最終日というわけじゃからお主に試練を課そうと思ってな? この試験の内容は唯一つ我に一撃を当てるだけで良い。」

「偶然でも?」

「勿論、当然じゃ。お主ほど弱ければ偶然すら無いじゃろうがな。クックックッ」

 

 そう言って、嗤うと剣を構える。

 

「早くするぞぃ? ああ、あと試験を合格すれば……、1つプレゼントをやろう。」

「それを早く言ってくれよ!!」

 

 それを聞いた途端、福幸のやる気が一気に高まる。

 彼女の言うプレゼントがどんなものであれくだらないものであるはずがない。

 過剰なまでの期待を抱きつつ福幸も剣を構えた。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「では、私が審判をしましょう。」

 

 そう言い、メイドが片手を上げる。

 

「試合、開始っ!!」

 

 そういって、手を振り下ろすと同時に後ろへと下がる。

 福幸は、視界の端に映ったいつもの机と椅子に少し気を取られつつ直ぐに目線を剣姫に向けると……、その姿は福幸の眼前まで迫っていた。

 慌てて構えてた剣でとっさに防御するも耐えきれず後ろに吹き飛ばされる。

 何回か、地面をバウンドした後木に当たり体が止まる。

 それに安堵している暇はない。

 激痛が響いて絶叫を上げる体を無視しつつ腰に装着していたククリナイフを手に取り投げつける。

 そして、同時に詠唱していた魔法で簡易的に回復する。

 

「回復せよ、『ローヒール』……… くそっ、全然痛いじゃねぇか。」

 

 悪態がつけるぐらいには回復した福幸だったが余裕などない。

 さっき、奇策で投げつけたククリナイフは当るはずもなく軽く弾かれる。

 一ヶ月間、必死となって鍛錬した結果数個の魔法とスキルを使えるようにはなっていたがその程度。

 あくまで応急的な回復や欠陥のある攻撃手段。

 剣姫と、戦うにはまだまだ実力がたりなかった。

 

「泣き言なんて言って、ッッ!!?」

 

 慌てて回避する。

 喋ってる暇などないのだ。

 最初の一撃すら防げたのは偶然、それ以降も剣姫が手を抜いてるから避けれる。

 剣姫が本気を出せば、福幸がミンチとなるのは一瞬にも満たない時間なのだ。

 

「属性付与︙『風』」

 

 剣に、風属性をまとわせ鋭さを高める。

 そこまで、強くなった気はしないがやらないよりはマシ。

 そう思い、付与した属性も剣姫が出した次の攻撃にてあっさりと解かれる、それどころか上手く受け流せたにもかかわらず腕が骨折しかねないほどの衝撃を受ける。

 

 だが、天の神は福幸に微笑んだ。

 

 最初に弾き飛ばしたククリナイフが落ちてきたのだ。

 剣姫の脳天へと。

 

 思わず微笑む福幸。

 一撃入れれると思いニヤリと微笑んだ口は次の瞬間驚愕へと変わる。

 

 なぜなら、そのククリナイフを"一切見ずに"弾き飛ばしたからである。

 

 見えているのならわかる。

 けど視線は常に福幸へと向いているのだ。

 絶対に見えていないはず、そう思っていたのにその予想すら軽く超えてくる。

 

「マジkッッ!?」

 

 安息など用意されない。

 たった一度の攻撃しかできずそれすら弾かれた福幸は何かを言おうとしたのだろうがそれも言えない。

 なぜなら、弾き飛ばされたククリナイフが福幸の薄皮一枚切り裂き地面へと刺さったからである。

 

 血が垂れる。

 

 恐怖した。

 圧倒的なまでの実力差に。

 

 思わず腰が抜ける。

 そう思った瞬間、自分の手で自分の頬を叩いた。

 

 情けない。

 また逃げるのか?

 

 自分の心にそう問われたら負けだ。

 逃げるつもりはない。

 正々堂々挑もうか。

 

 その勢いで地面に立ちククリナイフと【不屈の魔剣】を両手に持って勢いよく地面を蹴る。

 砂利が吹き飛び、剣姫の刃と福幸の刃を交えようとした時、声がした。

 

「終了、でございます。」

 

 メイドが、そう言う。

 そして、剣姫の姿が消えた。

 

「えっ? えぇ?」

 

 困惑する福幸など置いておき、"始まる前にはなかったいつも用意されている椅子に座り紅茶を嗜む(たしなむ)剣姫の姿がそこにあった。"

 

「えっ、嘘っ!?」

 

 その姿を見たとき福幸は困惑する。

 何故なら、福幸の前にも剣姫の姿があるからだ。

 

「幻影魔法じゃよ。」

 

 そう言い、指を鳴らすと福幸の眼前にいる剣姫が消えた。

 

「まあ、しかし上手く小石が当たったのぉ。」

「ですね、不本意ながら今回の勝負は剣姫様の負でございますが……」

「あんな小石、誰が想定しておるか。」

「ちょっ、ちょっとまって!!」

「待たぬよ。ほれ、褒美じゃ。」

 

 そう言い、福幸の通っていた学校のボストンバッグとカバンが渡される。

 

「その中にはお主が部屋に置いてた物と多少の褒美が入っておる。それを持って自由に生きよ。」

 

 そう言うと再度、指を鳴らす。

 始まりと同じく終わりも唐突だ。

 福幸の体は足から消え始めていた。

 

「まっ、待ってくれ!! 最後に一つ言いたい!!」

「何じゃ?」

「この、一ヶ月間本当に……」

 

 息を吸い込む。

 唐突な別れだ。

 もう二度と会えないだろう。

 その予感がしていたからこそ大声で全力で言葉を紡ぐ。

 ありきたりな言葉だ。

 けど、それを言わなければ後悔する言葉だ。

 

「ありがとう」

 

 ふっ、と笑う。

 

「こちらこそじゃ。異世界からの冒険者よ。お主と過ごした一ヶ月間はここ数百年の中で最も有意義であった。」

 

 その言葉を聞けただけで福幸は嬉しかった。

 視界が歪む。

 この光景を目に焼き付けようとしているのに視界がそれを許さない。

 なら、この光景の代わりに何か剣姫に伝えることはあるのか?

 

 福幸は、そう思い言葉を紡ごうとし光に飲み込まれた。

今回でプロローグのメインストーリーは終了します。

次回、次次回は本編において福幸が学んだ魔法や世界の設定及び特殊キャラの剣姫とノーブルとなります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ