112 色々
特に何事もなく、街へとシュメツルグへと到着した福幸一行。
「久々の実家帰りも良いものね!!」
「ん? お前、あそこの砦街が家じゃないのか?」
「ええ、けど本家というか私はここ出身よ? いや、本当に。」
そんな会話をしつつ、三人は冒険者ギルドに向かう。
ギルドについておさらいすると国境なき国、各国の人材を受け入れる無条件の国のようなモノだ。
「いい依頼とかないのか? 護衛依頼とか?」
「うーん、この時期なら貴族の学園への護衛依頼が多いかしら? そろそろ日照りの季節が来る訳だしね。」
「ん?」
「ああ、福幸は知らねぇか。この世界では夏を日照りの季節って呼ぶんだよ。他にも、秋は暮れの季節、冬は眠りの季節、春は温和の季節ってな。まぁ、人によってある程度呼び方は変わるらしいが。」
「へー、そうなのか。」
少し、興味を持ったようにそう返すと静かに何かを考え出す。
「一つ気になるんだが、なんでこの世界じゃぁ春夏秋冬って言う明確な括りが無いんだ?」
「さぁ? 暦の概念が結構曖昧なのは確実なんだがな。この文明の発展度合いからしてみたら確かに不思議……、いや、そんなこともないか。」
「え? どういう事だ? 解説頼む。」
「簡単に言えば、進化の速度の違いだよ。俺たちの世界の技術は魔法がないからゆっくりと進化してある一点から加速したがこの世界は中世から近代初期の文明発展度合いだ。しかもかなりの速度で進化していると考えてもいいかもしれないな。そう考えれば辻褄が合う。」
「ん? いや、そういうことか。俺たちが科学技術で行った数百年分のことが一瞬で削られるのか。」
「そゆこと、そゆこと。魔法っていうのは現代科学からしたら余りに弱く稚拙でも古い文明からしたらそれこそ革新的なモノだろうよ。才能が必要とは言え、モノによってはそれこそロケランより強い。」
「だからこそ、暦の概念が明確化される前に文明が確立した……、いやそれでもおかしいぞ?」
「そうか?」
「いや、少し考えてみろよ。暦っていうのは俺たちの世界でファラオ? が発見したモノだ。その理由は確かナイル川の氾濫を予知して対策するためだったか? まぁ、そんな感じでできてる訳だ。いくら文明が急速に高度に発展したからと言って明確な暦の概念がないのはおかしい。」
「曖昧な知識だな、オイ。」
「つべで見ただけの知識だからな。突っ込まれたら脆いぞ?」
「へーい、へい。とはいえ、確かに不思議だな。暦って知られてないと不便じゃ無いのか?」
「そりゃそうだろ、少し考えただけでも狩に農耕に政治に、と結構な数関わってるぞ?」
「となれば、なんらかの理由で意図的に規制してる? 例えば……、一定以上の文明ランクにならないように、とか?」
「それこそあり得ない。一つの国ならまだしも、世界全体での暦の認識の甘さが広がってるか?」
「あー、それはわからんな、確かに。けど、これは中々に面白い。雑談としてはかなり有意義じゃないか? 福幸。」
「そうか? そうか。まぁ、俺はもう少し考えてみるわ。」
「それもいいが、そろそろ到着するぞ?」
二人が顔を上げると、例の看板がかかった大きな建物が見える。
ついでに残念騎士は、あっちこっちをキョロキョロしてる。
「角内って登録してるか?」
「まぁ、一応な? ランクは最低だが。」
「俺はF3だな。」
「チッ。」
「おい、舌打ちすんな聞こえてんぞ。」
「冗談だっての。というか、お前の強さと噂的にCぐらいでもおかしくないんじゃないのか?」
「噂って?」
「豚将軍倒したって噂。」
「あー、ハイハイ。なんかあっちのギルド長の嫌がらせで低いまんまだとさ。なんか権力争いとかやっててな。」
「理解、災難だな。」
「あ、そうそう。ナヒト、貴方一応ギルドランク上がってるわよ?」
唐突に言われた言葉に言葉を失う福幸。
その様子は、非常に間抜けでそれをみた残念騎士は爆笑し、福幸に殴られる。
「イテテテ、全く。レディには優しくしなさいよ!! っと、それはさておきミーフュから聞いたわよ? 『やらしい目でみたオークストラテジスト討伐者にこう言っておいてください。ギルドランク上がりましたよ』って。プププ、いやらしい目で見てたの? あいつを? プークスクス、うっわぁ間抜けねぇ。」
「オーケー、骨も残さず埋葬されたいらしいな? 今すぐしてやる。」
拳を握る福幸とそれから逃げる残念騎士、そしてやれやれとばかりに肩をすくめ残念騎士が持ってた串焼き(棒のみ)の汁がつき切れる角内。
そんなこんなで、ギルドに入れたのはもう数分後だった。
四十一話で福幸が女性を選んだ理由は下心です。
まあ、それ以上に真面目そうだからという理由がありますが




