107 間話 教皇
「……、やはり貴方は敵でしたか。」
カッカッカッカッ、
肘置きに爪を立てて鳴らす音が聞こえる。
光はない。
カソックに身を包みひたすらに無表情にその動作を繰り返す。
「ええ、わかっていました。分かっていましたとも。私の洗脳が行き届いていないことなどは。ですが、ここまでの計算外は過去の私も予見し得なかった。」
カッカッカッカッ、
怒りなく、涙なく、現状をひたすらに理解して心情を吐露してゆく。
「あと,200年。たった200年で女神様と我々の悲願は達成される。この世界からありとあらゆるエネルギーを搾取し完全な形での権限がなされる。その上で可能な限り邪魔な要素は取り除いておきたいところです。」
カッカッカッカッ、
「ですが、そうも言ってられなくなった。私の手元にあるエクストラは一つしかありません。やはり角内はエクストラ持ちですね。そして、横に控えていたあの小僧。奴の権能はなんですか? 他者を霧で消し去る? 憤怒を使う? ありえない。」
カッカッカッカッ、
「我々が知りうる大罪の権能にそんな力はない。現状発見されている6つの大罪にその能力はない。ということは、まさか暴食? ここまで徹底して前提条件すら不明なあの暴食が? 一考の余地ありですね。未知の大罪は確かに怖いです。」
カッカッカッカッ、
「あと200年、たった200年です。不確定要素の排除は必須。今分かっているなかで最も大きい不確定要素は調停竜、及び幽谷に潜む者が持っているという万物を切り裂く剣、暗黒大陸、又は幻と化した先史文明が存在したダンジョンに住む剣姫。」
カッカッカッカッ、
「敵が多すぎます、ええ、多すぎます。このままでは勇者を異世界から奴隷を呼んだのも無駄になる可能性すらあります。困ります、困ります。ええ、困ります。」
カッカッカッカッ、カツン。
「仕方ありません、ええ。キラ、いますか?」
「はい,なんでございましょうか?」
「貴方とホウスに神託を下します。神より下賜された武具を使いーーーーーーをしなさい。」
「了解いたしました。」
そういうと彼女は静かにその部屋を出る。
「さて、私も行動しなければ、ええ、私も行動しなければ。」
そう言って、彼女は、教皇は立ち上がって杖を手に取る。
「世界を救済するために我々の全てを一刻も早く捧げなければなりません。」
足元に平伏す信者たちに向けて杖を構える。
「供物は充分ですね。では、死んでください。|神へ捧げる尊い命《Aren't you happy?》」
血に濡れた大広間で赤いカソックを翻し大広間を出てゆく。
この世界には救いなどない。
世界の全てを捧げるということは世界が死ぬということです




