102 炎は消え
摩訶不思議な現状が三人を取り巻く。
福幸はまだ自分の特異性に気づいていないが二人の反応と何かしらの違和感を覚えている。
御子二人は理性が戻り弱体化しているのは明明白々なのだがそれでも、まだ権能の一部は機能していることを悟り一筋縄ではいかない相手と認識を改める。
「痛ってぇ、けど!! 技を放てないほどじゃねぇ!!」
福幸の体が動く。
不屈の魔剣と長剣となったククリナイフを巧みに操り敵に迫る。
「ッ♪!」
慌てて避けようとするがその動きに福幸は変則的なリズムで対応する。
攻撃はまだ、当たらない。
だが、確実に追い詰め始めている。
「シャァッ!!」
此処だっ!! と心の中で叫ぶ。
福幸も完全に有利とは言い難い。
今は一対一だからこそどうにかなっている。
もし、もう一人追加されてしまったら確実に。
(負ける、間違いなく。相手は一人でレオを無効化した。どんな能力かは知らないがレオをだ。)
冷静な思考にノイズが走る。
焦りが理性を置き去りにする。
グサッ!!
「ッッ!!」
痛みは焦りを消してくれる。
確かに、痛い。
だが,まだ痛いだけだ。
剣姫との訓練はこんなのではなかった。
これほど温くはなかった。
「まだまだッ、だぁ!!」
一瞬だけ、技術と技量を共有し剣に刻まれている不屈の騎士の残留思念を福幸の体に宿す。
膨大な負荷は、動きは初動の一瞬のみ。
残りはただの遠心力やそこら辺の力で動くだけ。
一度、発動すれば別の動作は行えない。
そんなデメリットを福幸は理解した上で多分に使用する。
「こなくそォォオ!!」
3つの剣によって奏でれる音色は重低音で世界に響く。
「あはっ、アハハっ、貴方って面白いヒヒヒヒ。」
「気色悪い声でなければさいっこうの答えだな!!」
福幸の変化は完全に消失し本来の肉体となった。
先程までの莫大な力は消え去った。
なのにまだ、戦えてる。
その理由はただ一つ。
意地だ。
死にたく無いという意地だけで戦っている。
要するに、火事場の馬鹿力というものだ。
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(死ね死ね死ね死ね死ね死ね子死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね)
言語として綴られていない。
獣の如き思考は殺意を剥き出しに一心に睨み続ける。
身体の回復が行われていない。
憤怒の権能がきれたか? 否、そんな複雑な話じゃない。
もう、体が蘇生できないほど衰弱しているのだ。
もうすぐ死ぬと、レオ自身も分かっている。
自身の復讐はあの若き同胞では決してなし得ないものだと。
真っ当な考え方を持つのであれば声の一つでもあげ注意を逸らすだろう。
真っ直ぐな心があれば動かぬ骸を動かし少しでも時間を稼ぐのだろう。
だが、憤怒は拒否した。
この復讐は、不可能だと分かった時点で熱を持った情熱は凍りつき出した。
どう足掻いても死ぬ。
それを分かってしまったら戦う理由が消えてしまった。
彼は『あの御子を殺すため』に11より後の人生を捧げた。
彼は女神教に叛逆するため各地の者たちに声を掛けた。
彼は優秀であった。
彼は秀才であった。
彼は英雄である。
打倒女神教を掲げる存在の英雄だった。
「所詮、ボクの人生こんなもんか。」
頭の回転も鈍り出した。
目の前の若者は今も尚、レオが復活すると思い剣を振るっている。
その全ては悉く弾かれ、いなされ、避けられる。
せめて、憤怒の権能が有れば話は違ったかもしれない。
レオが加われればまだ勝算はある。
「けど、ボクはもう戦えない。」
諦めたようにそういう。
立てない。
未だ、息の根を止められていないのは死ぬことが確定しているからだ。
敵にすら情け容赦をかけられた彼の憤怒はもう風前の灯火なのだ。
福幸が長い、永い、戦いの末レオの真横に弾かれる。
打つ手無し。
清々しいほど、諦めるしかない結果に彼は目を閉じることしか出来ず。
「久々だな、福幸。」
まだ勝ち目があることに気が付かなかった。
さーて来ましたよ。
買物王番ギルガメッシ○が。(作者的にはそういうイメージでこの能力を思いつきました。)




