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10 【不屈の魔剣】

「どうじゃここは?」

「いや、なんか……墓場っぽいとしか言えませんが……」

 

 今、福幸が居る場所は無数の剣や槍、斧、弓、盾、小手、鎧などのあらゆる武具が墓標のように突き立てられた荒廃した世界だった。

 剣姫は、何かを懐かしむように目を細め辺りを見渡しながら歩く。

 まるで、失った何かを見るかのように……。

 

「で、なんでここに来たんですか?」

「……、ああ、そうじゃったな。お主、ここから一つ好きな武器を選べよ」

「え?」

「選べと言っておるのじゃ」

 

 そう言うと、説明は終わったとばかりにさっきまでなかった椅子に座り紅茶を口につける。

 その姿にもはや驚かなくなった福幸は、彼女の言うとおり武具を選びに向かった。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「と言ってもなぁ、何を選ぼうか。」

 

 独り言をつぶやく。

 金に光り輝く剣もある。

 ビルよりも遥かに高い剣もある。

 逆に、子供すら着れないような鎧もある。

 また、生き物のように鼓動する槍もある。

 人の首が生えている盾もある。

 すべてが、何か人では証明できない存在すら理解できないナニカ(・・・)を詰め込めているかのような感覚を覚える。

 ある種の恐怖を覚えつつ、福幸は歩き出す。

 そして、見つける。

 

「なんで……、なんでここにビキニアーマーがあるんだよ……!!」

 

 愕然としながら、思わず突っ込む。

 防御力は皆無と言っていい相手を誘惑することに特化したネタ装備の代表格がこんなところに置かれていたら流石に誰でも突っ込むだろう。

 思わず、突っ込んでしまった福幸は悪くない。

 悪くないのだ。

 

「と、とりあえず他のものを見よう。」

 

 何か見ては駄目なをもの見てしまったような気分を味わいつつ視線を反らししばらく周囲を見渡したあと見つける。

 

 今度こそ、本当に。

 

 その剣は異様なまでのただの片手剣だ。

 なんの威圧感もなんの恐怖もない。

 ただ、そこにあるだけだ。

 

 だが福幸は、それに惹かれた。

 それは、何も言わない。

 何も、教えない。

 ただ、そこにあった。

 

「それを選ぶのかのぉ?」

「!?」

 

 思わず、柄を握っていた。

 理由など要らない。

 ただ、気づけば柄を握って引き抜いていた。

 

 パチパチパチパチ。

 

 剣姫が手を叩く。

 そして、言う。

 

「そうか、それがお主の選択か。アンコンケラブル」

「・・・」

 

 声が聞こえたような気がする。

 理解はできない言語だ。

 福幸には、話せない。

 理解できない言語が。

 ただその言葉に込められる意味は理解できた。

 

 |(『ああ、我が姫よ』……か。)

 

 思いが、渡された気がする。

 この剣に込められている、込められていたその思いが。

 この背中に託された気がした。

 そして、頭の中に膨大な量の経験(己が技量)が入り込む。

 そして、また気絶した。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「そう、か。そうか、そうか」

 

 アハ、アハハ、アハハハ。

 

 剣姫は、らしくもなく涙が出てくる

 

「そうか、我も人の子か。そうかそうか。」

 

 剣姫は、再度自覚するように思い出すように確認する。

 

「■■も言っておったな。『人を超えても所詮本質は人だ。そこを忘れるな』……と。」

 

 そう言うと、覇王剣を抜き地面に刺す。

 

「我が騎士よ。必ず仇は取る。だから、消して消えるでないぞ。必ずだ。分かったか? 【不屈の騎士】よ。」

「・・・」

 

 交わす口はない。

 交わす言葉はない。

 交わせる文字はない。

 交わせる剣はない。

 

 だが、交わされた想いはあった。

 そして、荒野から二人の人間(超人と半神)が消えた。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 転移者たちのお話(一方その頃)

 

「う、うぅ〜ん。」

 

 総勢30名の人間が石で作られた大聖堂の中心で目を覚ます。

 そう、彼らは福幸のクラスメイト達だ。

 

「こ、ここは……?」

 

 目が覚め、冷静な判断をくだせる人間が現れたことにより一気に厳かな雰囲気を保っていた大聖堂は騒々しくなる。

 

「ええぃ、静まれぃ!!」

 

 一人の老人の声が響く。

 その声に、全員が驚き声が消える。

 

「教皇様の御前であられるぞ!!」

「まぁまぁ、女神エレアレスト様の御教えでは人に差などありません。枢機卿エレファクトも(わたくし)をそこまで持ち上げなくともよいのです。」

 

 そう言うと、キャソックに似た服の裾が地面に着かぬよう周りの者達に持たせ転移者たちに近づく。

 

「さて、貴方達は女神様からの神徒であるわけですが……」

 

 そこで一旦、言葉を切り唇を舌で舐め乾きを抑える。

 の動作の一つが魅惑的で男女を問わず息が詰まらせ魅了される。

 

「和が、世界に救済をもたらす存在でしょうか?」

 

 こうして、転移者たちの物語が始まる。

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