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邪神さん 邪神ちゃんに 転生す  作者: 矢筈
邪神ちゃん 少女編
98/208

邪神ちゃん 調査する 1

「さて、請け負ったは良いがどうしたものか……」

 

 次の日の朝から、私は悩んでいた。死生神のやつから調査を依頼されたはいいものの、何も手がかりはないからだ。

 街の中を片っ端から一日中探し回れば、幽霊と出会えるのかもしれぬが…… 

 

「試験勉強は良いんですの?」

 

 メーラの言う通り、私たちには休み明けの試験が待ち受けているのであった。

 ここで良い点数を取らなければ、競技会に出ることはできない。

 調査をサボるわけにはいかないし、競技会にも出てみたい。

 なかなか塩梅が難しいといった状況だ。

 

「幽霊の噂話を収集するしかないな。街で実態を見たいが……なかなかそうもいくまい」

 

 噂話の収集であれば、まだ難しい事ではない。使い魔を放ち、後でまとめて聴くだけだ。

 今の私にすぐできることはこれくらいか。

 

「にゃんくろー、頼むぞ」

 

 ごそりとサラの布団が蠢き、中から闇の如き毛色の猫が姿を現す。

 こやつ、完璧にサラに懐いておるなぁ……

 いや、別に構うまい。私のところで一回も寝てくれないなど、今は全く関係ないはずだ。

 

「幽霊の噂話を集めてこい。できるだけ広範囲からだ」

 

 そう告げると、にゃんくろーは面倒臭そうににゃあんと一声ないた。

 その後、のそのそと窓際へと歩いて行き、姿を消した。

 

「使い魔、うらやましいですわぁ」

招来(Gwahoddiad)を使えば、即座に手に入るだろ」

「召喚している間、継続してマナの消費があるでしょう。ずーっと呼び出しっぱなしなんて邪神ちゃんくらいですわ」

 

 そういえばそうだったか。魔力をマナへと編み上げるのはほとんど無意識でやっているため、気にした事はなかった。

 それに、マナの消費量もそこまで多くはない。複数使役するならば、また話は別だろうがな。

 

「慣れればそんなものよ。一度呼べば、イメージもしやすいから二度目は大分楽だぞ」

「使い魔系のスキルは抑えてませんもの。やはりどうしても、貴族として役に立つスキルを取りがちといいますか……」

 

 ああ、メーラは自分の将来を見据えて実直に動くタイプであったな。

 普段の私への蛮行から、イメージが変な方向に固まっていたが。基本は真面目な人間なのだ。

 

「使い魔が一匹でも居れば、遠方への手紙などに便利だぞ。特に鳥系統なら尚更だ」

「遠方への手紙……。そうですわね、嫁いだ後のことを考えると良いのかもしれませんわ」

 

 嫁ぐ、という言葉が妙に私の脳裏に響いた。そうか、いずれメーラも嫁に行き、誰かの妻になるのだな。

 それは確実に起こる出来事なのだろうが、どこか現実味がわかない。

 なぜかいつまでも一緒にいてくれるような、そう感じていた。

 

「あら、何そんな変な顔をしてますの?」

「いや、何でもない。それよりサラも起こして、朝食へ行こう」

「そうですわね。サラ、早く起きましてよ」

 

 どこか寂しげな表情でもしてしまったのかもしれん。想像を振り払い、現実へ向き直る。

 メーラは、私の言葉に応じて、サラを起こしにいった。塊になっているサラの布団を捲るべく、奮闘中だ。

 

「ん〜……あれ、にゃんくろ〜は……?」

「にゃんくろーは仕事だ。起きて飯に行くぞ」

「私も着替えてきますわ」

 

 メーラはぐーっとのびをするサラを確認すると、着替えのために部屋を出ていく。

 私も寝巻きを脱ぎ払い、休日用のシンプルなワンピースに着替える。

 母にも言われたが、中々こうした女性っぽい服装にも慣れたものだ。

 

「ほら、サラ。しっかり起きろ」

 

 いつもはしっかりもののサラも、朝が弱い時はあるらしい。

 ベッドの上で座ったまま、ぼーっとしたままだ。

 

「うーん……もうちょっと……」

「なんだ珍しい」

「なんか妙に体が重いんだよ……」

 

 サラは本当に体が重そうにのっそり動いて着替えをしていく。

 風邪でも引いたのかと重い、額に手をやってみるが、そういうことはなかった。

 

「兎に角、良い時間だ。動こう」

「うん……」

 

 着替え終えた後も、動きづらそうな彼女の手を引いて、部屋を出る。

 そこで鉢合わせたのは、同じく眠たそうなニャルテの手をひくメーラだ。

 

「なんだ、ニャルテもか?」

「そうなんですの? 体が重いって珍しく駄々こねてますのよ」

 

 聞いてみると、ニャルテもサラも同じ状態のようだった。

 なんとか二人の手をひき、食堂へと向かう。

 

「どういうことだ、これは」

 

 着いてみれば、珍しくも食堂はがらんとしていた。

 数少ない席に着いている人間も、どこかサラ達と同じように辛そうな顔をしている。

 

「珍しい……なんてものじゃないですわね」

「うむ……学園全体に何かあったのやもしれぬ……」

 

 一抹の不安を覚えながらも、私たちは朝食を摂るべく席へと着いたのだった。

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