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邪神さん 邪神ちゃんに 転生す  作者: 矢筈
邪神ちゃん 少女編
80/208

邪神ちゃん 里帰る 4

「ありがとうございました」

「よかったら、また来な。アルカもまた戻ってくるんだよ」

 

 なんだかんだで二日ほど逗留した後の朝、私たちは家の前で別れを告げていた。

 サラたちもこの何もない村で色々見回ったり、農作業を手伝ったりと動き回っていたらしい。

 楽しかったのなら、それで良いのだが。

 

「あぁ、また戻るようにはしよう。手紙も、な」

「あんたはまぁ、いずれふらふら出歩くんだろう。父親似だね、ホントに」

「そうか、私は父親似であったか。が、安心せよ。そうそう死ぬような真似はすまい」

 

 一度死んでいる事は、秘密だ。あんなこと伝えたら母は取り乱すだろうし、得策ではない。

 王との件はいずれグリザリア侯爵から伝わるだろう。その時の反応が見ものだな。

 

「ま、あんたも安心しな。わたしゃずっとここにいるから。いつでも好きな時に戻ってくるんだね」

「そうだな。好きな時に、戻ってこよう」

 

 母の言葉にどこか安堵を感じながら、抱擁を交わす。

 今生の別れではないものの、そうそう毎日会うというわけにもいかないからな。

 母にとっては、父を送り出したときと同じ気持ちなのかもしれないな。

 

「ではな、母よ。息災にな」

「子供に息災だなんて言葉使われるなんて心外だね。あんたこそ元気にやるんだよ」

 

 馬車に乗り込み、窓から手を握る。

 別れの握手がすめば、すぐに馬車は進み出した。

 

「なかなかいい故郷ですわね。貴族生まれでなければ、色々できたのかもしれませんわね」

「いい場所だった。いつまでも見て飽きない」

 

 メーラとニャルテがそれぞれ感想をこぼす。

 メーラは何やら農作業が気に入ったらしい。泥だらけで帰ってきた時は心配したものだ。

 ニャルテは教会や風車などの風景の方が気に入ったらしい。

 一日中いろんなところから村を眺めては、スケッチをしていた。

 

「王都と違って広々としてていいなって思ったよ。走って遊んだなんて久しぶり」

 

 サラは近場の子供たちと即座に仲良くなり、走り回って遊んでいた。

 王都ではなかなかそういうことはできないのだろうか。どこか感慨深そうだ。

 

「ま、機会があればまた来ることもあろう。なにメーラやニャルテが貴族になってからも抜け出す協力ぐらいしてやる」

「あら、邪神ちゃんたら顔が悪どいですわよ」

「息詰まったら、邪神ちゃんにお願いする」

 

 私の魔法が領域外まで届けば、空間を越えることも楽々できるだろう。

 そうすれば、彼女たちがたとえどこにいても会いにいける。

 そして同時に、連れ出すことも可能だ。

 その可能性に思いをやりながら、馬車の揺れに身を任せる。

 

 次の行き先は、メーラが押さえてくれたビーチだ。

 この身になって海は初めていくが、一体どんな風景なのだろうか。

 当然、邪神としては海なぞいくらでも見たことがある。

 血に染まり、死体と船の破片が浮かび、全ての生き物が絶滅した海を、だがな。

 だからこそ、私はこの旅に心が躍っている。

 

「アルカちゃん、なんか楽しそうだね」

「うむ、この身で何せ初めての海だからな。期待に心膨らむというやつだ」

「いい場所ですわよ。何せ、別荘用だけの浜ですから。綺麗ですわよ」

 

 この村から浜まではちょうど馬車で一日。

 途中で一夜明かすぐらいで辿り着ける場所だ。

 きっとこの一連の旅は、永遠の思い出になる。

 そんな確信を胸に私はしばしの間、目を閉じることにした。

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