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邪神さん 邪神ちゃんに 転生す  作者: 矢筈
邪神ちゃん 少女編
72/208

邪神ちゃん 求婚される 1

「ふう……」

 

 剣を下ろし一息つく。と同時に、闇色のドレスも剣も、まるで何もなかったかのように宙へと消え去っていった。

 

「やはり併用では長持ちせんか……」

「アルカちゃん!!!」

「御子さま! ご無事……で……」

 

 音が止まったのを聞きつけて、かメーラとニャルテ、少年がホールへと駆け込んでくる。

 ニャルテは無言で涙を流しながら抱きつき。メーラは無事だというのに、私に回復の魔法をかけてくる。

 

「御子さま! 申し訳ありません! どうかこれを!」

 

 なぜか顔を赤くした少年が、肩につけていたマントを差し出してくる。

 

「アルカちゃん、今下着のまんまですわ、お借りした方がよろしいかと」

「む、ああそうか。すまないな」

 

 少年からマントを受け取り、身に巻きつける。

 

「それで、邪神は……」

「なんとか切り払った。とはいえ──」

 

『ふっふっふ、第二の邪神を辛くも仕留めたわね。でもまだ第三第四の邪神が襲いくるだろ〜』

 

 天上から声が響く。範囲を指定した神託か。全く無駄遣いをする。

 

「ということだ。安心とはいえぬ」

「ですが、さすがは御子様! 傷は大丈夫ですか! その目の傷は……」

「うむ、なんともないぞ。目の傷は以前のものよ。なんぞ塗って隠しておったが取れただけだ」

 

 しゃべっているうちにどやどやと人が増えていく。

 先ほどまで避難していた人間が安全を伝えられ、状況を確認しに戻ってきたのだろう。

 

「これは……ホールはボロボロですな」

「修繕に一体いくらかかることやら」

「この責任は誰に帰すべきか……」

 

 ぼそぼそとホールを壊した事が遠回しに責められる。

 仕方なかろう。そもぶち壊して入ってきたのはトリグウェンだ。

 

「うつけもの! その様なもの己の命が助かった分、安いと思わぬか!」

 

 最後に入ってきたのは、王座で見かけた王、その人だ。

 

「王様! しかしですね、この破壊具合は……」

「まだ言うか! よもや場を救った御子に全て負い被せるつもりではなかろうな!」

「い、いえそんなことは……」

 

 多分そのつもりだったのであろうな。叱責された貴族らしい役人は、もみ手をしながらさがっていく。

 

「大義であった。神の加護を受けた御子、アルカ・セイフォンよ。そなたの力はここに示された」

「死ぬかと思ったがな。まぁとりあえずの難は去っただろう。そちらに怪我や死者などおるまいな」

「アルカ、王様、王様。口調もどってる」

 

 そっとニャルテが耳打ちしてくる。それを聞いてからしまったと思ったが、王はどうやら寛容やらしい。気にする素振りはない。

 

「口調などどうでもよい。そなたのおかげで死者はでておらぬ。騎士団に怪我人は出ておるが、あやつらはそれも仕事故な」

「なるほど、それはよかった。これで死者が出ておったら私も面目がたたんのでな」

「なに、其方がそこまで背負う必要はない。神の加護を受けた御子などという役割もその細肩には重かろう」

 

 そういって私の肩をぽんと叩く。その手付きは彼の見た目にそぐわず、優しいものだ。

 

「お父様、お願いしたき儀がございます!」

 

 そんな時、私の背後から声が響く。声の正体は跪いた、マントを貸してくれた少年だ。

 お父様、ということは彼は王子か何かであったか。そこそこの位の人間であろうとは思っていたが、よもや王子とはな。

 

「こんな場でなんだ。後にせよ」

「いいえ、この場でしかできませぬ!」

 

 皆をまとめて去ろうとしていた王の足が止まる。顔を上げた少年の顔は真剣そのものだ。

 

「そこまで言うなら仕方ない。なんだ、立ち上がり、我が目を見て申してみよ」

 

 王の言葉に従い、少年が立ち上がり、私の隣に並ぶ。

 

「お父様! 私は、この者を妻に迎えとうございます!」

 

 そう言って、私の手を取り、甲に口付けた。

 何を言っておるのだ、こいつは。

 

「……は?」

 

 それを受けた私の言葉は、大層間抜けに、広間に響いた。

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