邪神ちゃん バトルす 2
「あぁ、もう大丈夫だ。奴を、倒すぞ!」
「でき……ますの?」
メーラが恐る恐るといった感じで私の身体を支えながら呟く。
できるともさ、お情けとオモチャで。奴を引き退らせるぐらい、してみせる。
「ああ、まずはドレスのホックを外してくれ。動きにくくて叶わん」
「そんな殿方の前で!」
「いいから!」
メーラとニャルテがしぶしぶといった感じで私の言葉に従いドレスを脱がせる。
ええ、このやたら踵の高い靴も邪魔だ。そこらへんに脱ぎ捨てる。
残ったのは下着とガーターストッキング姿の私。
さぁ、本気でいくとするか!
「邪悪の剣」
右手に刻まれた紋章から闇が飛び出る。それは中空で剣の形を保ちながら浮遊する。
「絶望の衣」
足元の影から飛び出した闇が私の身体を覆い、ドレスを形作っていく。
中空の剣を握り、振り払う。さすれば手には闇色のバスタードソードが現れる。
刀身も、鍔も全てが闇色。唯一の色は鍔の中央に輝く赤い宝玉くらいか。
「待たせたな! さぁ死合おうか!」
全ての準備が整ったことを確認して、一気にトリグウェンの下へ駆ける。
「おっ!? 生きてたか。良かったぁ。殺してたらワシ、後で何されるかわからなんだからな」
「くははははは、死んでいたさ! お陰様で私は神の座から追放だとよ!」
加勢してくれている騎士や少年と距離があることを確認してから愚痴をぶちまける。
今回の件、ほぼこいつのせいではないか!
「こやつは私がなんとかする! あとは下がっておれ!」
本気じゃなくてもやりあえば余波で人間は死にかねん。拳に剣をぶつけながら、避難を促す。
それは直ぐに通じてくれたらしい。少年が無言で頷くと、騎士とメーラたちを退げさせていく。
「さぁ私の本気だ。恨みも込めてやってやる。覚悟しろよ?」
「ちょ、その剣で本気だすのは反則だろぉ!」
邪悪の剣はその刃に斬ったもの、全てを悪と判定する。
そして悪とは? 私の力の源すなわちステータスへと変貌する。
つまり、斬れば斬るほど吸収して強くなるというわけだ。
「やかましいわ! 私を殺しておいてよくいう!」
伸び切ったトリグウェンの右腕を切り飛ばす。弾け飛んだそれは直ぐにどろりと闇色の水として溶け、剣に吸収される。
「あれくらいで死ぬとか思ってなかったんだもん、わし!」
「マッチョがもんとか言うな! 気色の悪い!」
ガラガラと瓦礫を吹き飛ばしながら奴の攻撃を切り飛ばす。
斬り飛ばされた攻撃も当然闇の水として吸収する。
「兎にも角にも、お前のせいで! ややこしくなってんだろうが! 大人しくぶった斬られてろ!」
「そうはいくか! 邪神を名乗った以上、簡単にまけるわけにはいかん!」
残った左腕が振り回された。頭が狙われていたのを転げて避ける。残り時間は、まだ大丈夫か。
「あと私の変なところを天界に流すんじゃない! 変態かおまえは!」
「あれワシのせい!? エル様の命令に従ってるだけだぞ!」
トリグウェンが左腕で大きな瓦礫を引っ掴み、投げてくる。
それも切り払い、全ては私の力へ。そしてそのまま全身
「何にせよ、お前にだけはこう言ってやる。死ねぇええええええ!」
「ワシだけ扱い酷くないか!?」
身を低くしたまま駆け、懐に潜り込む。大剣は本来懐は不利だ。
だが、この邪悪の剣は伸縮自在。なにも、関係ない。
大きく振り上げた剣を、トリグウェンの倍程度の大きさへと伸ばす。
そしてそのまま──
「ちょ、ま……」
「甘味を喰い逃した怨みを知れ!!」
一刀両断。一瞬の間をおいて切り分けられたトリグウェンの姿が闇の水へと変貌する。
これで、なんとか……おわった。




