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邪神さん 邪神ちゃんに 転生す  作者: 矢筈
邪神ちゃん 幼少編
51/208

邪神ちゃん 戦闘す 2

「次! アルカ・セイフォン! ザメル・ハント!」

 

 名を呼ばれ、装備を整えて舞台へ上がる。闘技場の石畳からは照り返しの熱が体を焼く。

 

「戦神、トリグウェンの名の下に、清廉なる決闘を!」

 

 開始の言葉とともに、大きく一歩退く。

 早々に押し切るのも手の一つだが、メリエーヌの言葉が確かなら何かは仕込んでいるはず。

 少しは様子を見ておきたい。

 

「なんだ、ビビってんのかよ! 無能のアルカ!」

 

 何やら猿がキーキー喚いているが、さほど問題はない。後ほど圧倒すればよいだけだ。

 今の所、特に変わった気配はなし。

 

「そうか、ならば受けてみるか?」

 

 体を落とし、地を駆けるようにして近づく。

 が、その途中で違和感。なんだろう一瞬、ほんの一瞬ではあるが細い糸で絡め取られたような感触だ。

 その違和感は二度三度と続き、調子を乱される。

 

「ちっ」

「なんだよ、くるんじゃなかったのか?」

 

 ザメルが異変を感じて引いた私を煽る。これは──

 

「貴様、使っているな?」

「何のことだ? 証拠でもあるのかよ!」

 

 証拠、証拠か。確かにこの修練場は、魔法が使えないように大型の結界がはられている。

 もちろん抜け出す手はあるのだが、ザメルにその様子は見られない。

 この状態では私の覚えた違和感だけが証拠、それでは弱いだろう。

 

「こねぇなら、こっちからいくぞ!」

 

 ザメルが首を捻る私を見飽きたのか、駆け込んでくる。不恰好な戦略も何もない走りだ。

 振り上げられた剣を防ごうと剣を掲げると、また違和感。

 慌てて飛び下がろうとするもまた違和感。

 

「くっ──」

 

 結果、私はザメルの一撃を胸鎧で大きく受けることとなった。

 同時にバチンという音と共に肩の鎧が留め具を失い、地面に転がる。

 

「このまま全員の前で、この間みたいに素っ裸にしてやるよ」

「やれやれ、発情した猿が学園に混じるとは、度し難いな」

 

 奴の目的はそれらしい。どうにも色欲に飲まれた脳みそしか持ち合わせていないようだ。

 しかし、この違和感の原因を突き止めねば、それこそ真っ裸にされかねない。

 

 再び駆け寄ってくる奴の攻撃をなんとか防ぎながら後へ下がる。

 

「ほらほらほら、どうだぁ! 俺のが強いんだよぉ!」

 

 やつの剣筋には何ら驚異は感じない。だが、それとは別にどんどん鎧の留め具が弾かれていく。

 今や、肩と腰の鎧はどこかへ転がり、残るは足と胸のみだ。

 奴にこんな細かい芸当ができるとは思わない。

 ならばもう、仕掛けは決まっている。

 

「どうなんだよ! 這いつくばって詫びてみろよ!」

 

 次の一撃が弾ける。運が良いのか悪いのか。弾き飛ばされたのは、私の眼帯だった。

 魔法を使わない場だと思い封じもしていたし、使うつもりもなかったのだが……

 奴がそのつもりなら、私も圧し潰すまでだ。

 

「おらぁ!」

 

 裂帛の気合いと共に放たれた見えない一撃(・・・・・・)を空中で掴む。

 そのまま手にマナを込め、握りつぶす。

 

「つまらん、つまらんぞザメル。その身に修練を積み上げ私に至るどころか、他の手を借りて威を張るとはな」

「んだとぉ!」

 

 次の一撃が弾ける。胸鎧の留め具が弾け飛び、地面に落ちていく。

 

「ま、まぐれじゃねぇか! もうあとはねぇぞ!」

「後がないのは貴様だ猿。神の名のもとの決闘を汚した罰をその身で味わうがよい」

 

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