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邪神さん 邪神ちゃんに 転生す  作者: 矢筈
邪神ちゃん 幼少編
42/208

邪神ちゃん 分からせられる 3

「……やりすぎましたわ」

「うぇっ……ぐすっ……やめれってゆったのに……わぁったっていったのに……」

 

 同級生の話の中心、そこで私は膝をかかえてべそをかいていた。

 幾分子供っぽいとは思うものの、中々涙は止まらない。

 それも全てはメーラがどれだけやめろといっても私を弄り倒し、泣いても叫んでも許してはくれなかったからだ。

 しまいに私は全身に襲い来る感覚に耐えきれず……。いやこれは考えるまい。

 私のしでかしてしまった後をサラが片づけてくれている。まるで彼女は母だな。

 

「ザラぁ……たすけてってゆったのにぃ……」

「偶には罰を受けるのも邪神ちゃんのためかなって思って……。ごめんね、ここまでなるって思ってなかったの」

 

 片付けを終えた彼女に、砕けた下半身を引きずって抱きつく。

 メーラの側は危険だ。彼女もきっと何かの神の加護をもっているにちがいない。

 

「あの、もうしわけありませんでしたわ」

「ひぃっ……」

 

 謝罪の言葉を口にしながら、メーラが私の手をつかむ。

 同時に心にもない怯えた声が喉を突いた。なにせ恐怖はこの身に嫌というほどねじ込まれたあとだ。私とて怖いものは怖いのだ。

 だが彼女も流石に反省をしているらしい、上目遣いでこちらを見るめは潤んでいる。

 

「あぁ、嬌声を上げながら身を震わせる邪神ちゃん。そして最後には感極まったが故の──」

「言うなっ!」

 

 思わず手近にあったクッションをメーラに投げつける。見事にメーラの顔面に命中したそれは、うまいこと彼女の言葉を遮ってくれた。

 反省しているなどと思ったこちらが悪かった。こやつ、何も反省しておらんな、間違いなく。

 

「ゔゔー……」

 

 しかし、これだけの衆目の中であのような醜態をさらすなどと、私でもさすがに恥という感覚はあるのだ。

 これもすべて審判神が余計なことをしていったからだ。そうに違いない。

 心の中で『帰ったらしばくリスト』に審判神の名を書き加える。

 

「でもこれで少しは理解なされたのではありませんか? 男はみな狼、狙われたら今のようなこと程度ではすみませんわ!」

 

 ベッドの上にメーラが立ち上がり、吼える。

 この言葉に否やを唱えるだけの気力はもうない。私は大人しく首振り人形の如く、首を縦に振った。

 

「そして! 邪神ちゃんの普段の行動は狼を呼び寄せておりますの! お分かりになって!?」

 

 ここまで行ってメーラがベッドから降り、私に視線を合わせる。思わず目を逸らしそうになるが、逸らしたら負けだ。

 要は気をつければいいのだろう、気をつければ。行動に一部制限をかけるのはこそばゆいのだが……。二度とアレはごめんだからな。

 

「少なくとも! 足は閉じる! スカートで立ち回るなら下履きを穿く! 男子への不用意な接触はしない!」

 

 肩をがっしりと掴まれたまま間近で説かれる。

 がくがくと何度目かわからぬ首肯で同意を示した。彼女にはもう目はつけられたくない。

 

「もし破ったら……今日のがほんの序の口だと思い知らせてさしあげますわ」

 

 メーラのにたりとした笑み。それに背筋に氷を差し込まれたような怖気を感じた。

 まずい、これはまずい。本格的に気をつけねば貞操にまで問題がでるやもしれぬ。

 

「やりすぎはだめだけど……メーラさんの言う通りだと思うの」

 

 恐る恐る視線でサラに助けを求めてみたものの、その答えは残酷なものだった。

 

「サラぁ?」

「アルカちゃんは、一度しっかり反省すべきだと思うの」

「した、したからぁ……」

 

 救いを求めて抱きついてみるも、サラの意志は固いようだ。

 

「もう男子の前で着替えようとしたりしない?」

「しないぃ……」

「熱いからって上着全部脱いだりしない?」

「しない、しないからぁ……」

 

 どうにもこの肉体の年齢に大分精神が引き摺られているらしい。私の口からでるのは情けない嘆願の声ばかりだ。

 だがそれもさりなん。メーラの攻めはそれ以上に辛かったのだ。ましてやどこぞの女神の所為で5倍の感度などという状態でだ。

 それもいつ解除されるかわからぬ。神罰故に、最悪死ぬまでこのままということもありうるのだ。

 早急に、早急にどうにかせねばならぬ。

 

「何かサラが結局一番役得なきがしますわ……」

「メーラが変態なのが悪い。あ、今度からベッドに近づいてこないでね」

 

 私はしばらくの間べそをかきながらサラに縋りつき、周囲の人間は私の醜態の話で盛り上がるのだった。

 メーラ、覚えておけよ……私はこの屈辱を忘れんからな!!

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[一言] よわよわ邪神ちゃんかわいい
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