邪神ちゃん 旅に出る 1
「アルカちゃん、本気、なの……?」
「うむ」
久々に戻った寮の部屋。その中で私はサラに己の決意を告げていた。
「色々と思うところがあってな。予定よりは早いが、行動に移そうと思う」
「今回の事は巻き込まれた話だから、私怒ってないよ? なんで?」
「お、怒ってないのは幸いだ。やはり、大地神と運命神の契約主を逃したのが痛いのでな」
ファラント王国の王族、恐らくその中に契約者がいるのだろう。
それらが逃れているのが懸念の一つだ。
そしてもう一つ。ファラント王国の城の地下に隠されていた秘密。
そこでは明らかに人を贄とした術式が行われていたことが分かっている。
恐らくは神を呼ぶためと、大地へ干渉する術式を行使するためだろう。
本来はそのような術式に生贄など必要ないが、邪神役となった大地神と運命神がそうなるように立ち回った可能性がある。
そんな状態で契約者を逃してしまったのだ。別の国で同じ事をやらかさないとは限らない。
何としても足取りを掴んで、契約を破棄させる必要がある。あとついでに大地神と運命神をとっちめなければな。
「グリザリア侯爵にもリカルドにも、了解はとってある。大分渋られたがな」
侯爵など納得させるのにかなり手間がかかった。結果、ファラント王国の王族を追いかける特命を受けるという形で納得をさせた。
王もだいぶ渋っていたが、リカルドとステラを同行させることと、定期的に連絡を保つということで了解を取り付けた。
本来であれば、ファラント王国の王族を軍ででも追いかけたいのだろうが、他国にそうそう軍隊を派遣できるわけもない。
そこで体面上、冒険者の私達が乗り込むというわけだ。
「離れるのは惜しい気持ちも大きいがな。機を逃して厄災を招くわけにもいくまい」
それだけ改造された端末はタチが悪いのだ。
あれが軍隊用にばら撒かれでもしたら、それこそ目も当てられない。
競技会に参加していた国を除けば、野心あふれる国はまだまだこの大陸にはあるのだ。
「また、戻ってくるの?」
「それは……わからんな。そのまま冒険者として一生を過ごすやもしれん」
間違っても家庭を築き、幸福の下に暮らすという未来はないだろう。
死生神との取引もあるし、まだまだ邪神役は半分残っているのだ。
芸術神はまだしも、審判神がほいほい出てくるとは思えない。
あれは別名最期の神と言われるぐらい姿を現すことが稀だからな。
それを思えば、学園で過ごすはずのあと2年なぞあっという間にすぎてしまうのではないだろうか。
学園に戻ることはおろか、この国に戻って来れるかどうかすらわからない。
「そっかぁ……それじゃあ私が引き止めてもだめ、だよね」
「そうだな。既に決まった事だし決めたことだ。手紙くらいは頑張ろう」
「そう言ってすぐ忘れそうな気がするな、アルカちゃんは」
サラの言葉には、諦めの色が強い。
きっと自分が何を言っても変えられないのがわかってしまっているからだろう。
「本当なら、知っている人間全員と一緒にいければよかったんだがな」
「それが無理なことぐらい、私だってわかるよ。私も、メーラちゃんもニャルテちゃんも。きっとアルカちゃんの横には並べ無いの」
あまり言いたくはないが、サラ達が同行した場合、かなりの確率で最終的に足手纏いになりかねない。
その状況を彼女達自身もよしとはしないだろう。それに三人とも家でやるべきことがある。
リカルドは別として、ステラも私も一般家庭だからこそなんとかなったのだ。
勿論ステラの家族を説得するのは骨が折れたがな。
「じゃあ近いうちに、皆でお別れ会しないとね。冒険者になったら甘味なんてなかなか食べられ無いんだからね」
「私の目下一番の悩みはそこなんだよなぁ……」
こうして私とサラは近いうちに訪れる別れの日に向けて、話し合いを始めるのであった。




