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邪神さん 邪神ちゃんに 転生す  作者: 矢筈
邪神ちゃん 幼少編
19/208

邪神ちゃん ぶっ放す 1

『てれれれてってって〜。邪神ちゃんはさらにレベルが上がった』

 

 ある日の授業前、窓ぎわでぼーっとしていた時に声が響く。

 また例の奴か。周囲に目をやってから、自身のステータスを確認する。

 得たポイントは4。

 これで魔法のスキルも上げられるし、目的だったスキルもとれる。

 

『邪神ちゃん、ちょーっと見ない間にやさぐれちゃってぇ』

 

 片目を潰されでもしたら、気にしないつもりでも少しは心がささくれ立つというものだ。

 というかこの阿呆神は今まで一体何をしていたのやら。

 

『そりゃーこの世界の仕込みに、他の世界の安定を図って……。休みなんてありゃしない。あぁ〜神様ってブラック企業!』

 

 まぁそれについては同情するがな。何ぶん私一人この世界で楽をしているのだから、少々心苦しいものがある。

 とはいえ、とはいえだ。この状況に持ち込んだのもこの駄女神自身。

 いやならさっさと元に戻せばよいのだ。

 

『いや〜部下のお願いぐらいは叶えないとね。これが上司ってもんよ』

 

 この状態まではお願いした覚えはないがな。というか私の願いを叶えるだけならば、どの神かと役目を一時的に入れ替えれば済んだ話だ。

 それをここまでややこしい状況にしたのはお前だ。

 

『まぁまぁ。でも折角の機会なんだから楽しみなよ。女の子の体にしてあげたんだしぃ。同室の子とあんなことやこんなことできちゃうよ?』

 

 ……何を言っているんだこいつは。少しでもまともな会話ができると思って、耳を傾けた私が悪かった。

 肉体が男か女かでいえば、元の性別通りの方が過ごしやすかったに決まっているだろう。

 この体になってから大股で歩くなだの、座り方だの足を開くなだのと、鬱陶しいことこの上ない。

 淑女たるもの云々なんて話は背筋に悪寒が走る。

 

『あれ、もしも〜し。聞いてる〜?』

 

 最早そちらに意識を割くのもバカらしい。それにそろそろ次の授業のために移動をせねばなるまい。

 

「アルカちゃん、まだいたの? ほら、一緒にいこ?」

 

 いつの間にやら近くに来ていたサラが、私の手を取り歩き出す。

 彼女には本当に世話になっている。右目を未だ覆う包帯も彼女が都度都度巻き直してくれているのだ。

 それくらい自分でできればよかったのだが、試した結果、顔面ぐるぐる巻きの化け物が出来上がっただけだった。

 以来、私は諦めて彼女にお願いすることにしている。

 

『青春の清らかな友情。あぁっ、浄化されそう!』

 

 創造神が浄化されてどうするのだ、と脳裏に浮かんだ。だが、そういうのを伝えると妙に喜ぶのがこいつだ。

 何も聞かなかったことにしよう。

 

 手を引かれているうちに、校舎を出て修練場に着く。

 そこには魔法の授業の標的にでもするのだろうか、入学試験の時と同じように幾本もの棒が突き立てられ、その上に鎧が被せられている。

 

「今日の魔法学は実技だ。基礎は座学で押さえたが、暴走などをしないように」

 

 教師を中心に生徒が輪になる。その中にはザメルの姿はない。まだ謹慎中なのであろうか。

 

「魔法は教えた通り、集中力とイメージ力が命だ。そうだな、例えば……アルカ・セイフォン。何でもいい、鎧に魔法を放ちたまえ」

 

 いきなりの名指しに少々驚く。たしかこの教師は実技試験の場で顔をみた覚えがある。

 あの時の再現をしろということだろうか。立ち上がり、鎧の案山子と相対する。

 着火(Tanio)の魔法でも十分だが、同じことをしても面白味がない。ここは少し別の魔法の試し撃ちと行こうか。

 人さし指で案山子を指し示す。

 

荒れ狂う(Taranau)雷光(garw)

 

 一瞬。指先に魔法陣が浮かび上がると共に、紫電が轟音と共に鎧を貫く。

 いきなりの出来事に大半の生徒が頭を抱えたり、目を瞑っていたりしている。

 辺りには空気の焼けた嫌な匂いだけがのこった。

 

「あー、今の魔法の説明を。アルカ・セイフォン」

「雷撃の術式。自然系に属する第三階級の魔法だ。イメージは指先から対象に向けて全てを貫くように。天の槌とされる稲光を制御することが肝要だ」

 

 私の言葉に辺りがざわつく。それもそのはず、雷は自然系術式の中でも最も制御が難しい。

 失敗すれば辺りどころか自分にも被害が出かねない。そんな魔法だ。

 

「いま言われたように、術式の制御、イメージが重要だ。しばらくペアを組み、自身の得意な術式をお互い評価したまえ」

 

 私も輪に戻り、サラを探す。ペアと言われても正直私は目の怪我の事もあり、学園では遠巻きにされている。

 実質私が組めるのはサラしかいないのだ。

 

「すごいね、アルカちゃん!」

 

 戻ってきた私を笑顔のサラが受け止める。

 その顔は無邪気な喜色に染まっていた。

 

「魔法は比較的得意だからな。サラも確かそうだったろう?」

「それでもまだ第三階級は使えないよ。いいなー、どうやって覚えたの?」

「覚えるもなにも、邪神だったころの手なぐさみよ。サラなら直ぐにでも使えるようになる」

 

 手を取り合って空いている案山子へと向かう。

 さて、サラの魔法は何であろうか。

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