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邪神さん 邪神ちゃんに 転生す  作者: 矢筈
邪神ちゃん 少女編
159/208

邪神ちゃん 疲れ果てる 6

「なーんてな」

 

 宙空をえも云えぬ不気味な光が覆い尽くす、ことはなく術式は霧散した。

 

「ほおっほおおおお」

 

 素っ頓狂な声を上げているのはステラだ。先ほどの術式を見て少々腰を抜かしてしまったようだ。

 如何に私と言えど、学友相手に窮極の光をぶちかますわけがなかろう。

 

「な、ななななんなのよ、いまの」

「くはははは、私を驚かせたのだから、驚かし返されるのは当然だろう」

「だーしーてーよー!」

 

 かたかた震えているステラを助け起こしていると、隣の地面から大声が響く。

 そういえばまだミクリアは閉じ込めたままであったな。

 

「ぷはぁ」

 

 そちらも地面に穴を開けて救出してやると、一息ついたように腰を下ろした。

 

「あれー? ステラちゃん顔色悪いよー?」

「ちょっと当てられたのよ……さっきの魔法、発動してたらどうなったの?」

 

 ふむ、つまらぬ事を聞く。あれだけの術式、展開が完了していればどうなるかなど分かりきっているだろう。

 

「死ぬぞ」

「そりゃそうでしょうね。ちなみにどうやって死ぬとか──」

「いや、ただ死ぬとしか。マトモに使ったこともないが、ありとあらゆる生き物に終焉を齎す魔法だからな」

 

 ステラは私の答えにかなり引いているようだ。顔が引き攣った笑いのまま固まってしまった。

 なにせこの術式は、星がその生命の終わりに紡ぎ出す光を作り出すもの。

 これを使えばどうなるかなどを知っているのは、魔法神と創造神ぐらいだろう。

 

「確か効果範囲も光が届く限りどこまでも続くと聞いたな。まぁ少しは肝が冷えただろう」

「少しどころじゃないわよ……」

「なんか私はほったらかしー?」

 

 先ほどの魔法を地中にいて目にすることがなかったミクリアは、平然としている。

 

「また不完全燃焼なんですけど! けど!」

「お主は懲りんというかなんというか。ううむ、ステラは多分もうダメだから仕方ないか」

「ちょっと私はまだ──」

 

 戦える。そう言いたかったのだろう。しかし私にはわかっている。わかっているぞ。

 

「ステラはこう、言いにくいのだが、着替えてきた方がよいだろうな」

「んなっ!」

 

 私の歯に衣を被せぬ言葉に、ステラの顔に朱がさした。

 うむ、まぁ人間たるもの極限の恐怖に晒されればそうなるのはわかる。

 何がどうとかまでは彼女の尊厳のために口にせぬがな。

 

「くっ……あんた、本気で覚えてなさいよ……」

「くはははははは。覚えていてよいのか? ん?」

 

 ステラの表情が本気の悔しさに染まった。

 やはりこやつはこうして弄るに限る。

 スカートを押さえながら、ステラの姿がこの場から消えていく。

 以前の特訓で彼女はこういった空間に干渉するコツをうまくつかんだようだ。善哉、善哉。

 

「ありゃ、それじゃもしかして一対一?」

「そうだな。よーし、お主にも少々反省という精神を叩き込んでやろう」

「うっわぁ、それ女の子がしていい笑顔じゃないよ」

 

 にやりと笑うとミクリアからは冷たい言葉が飛ぶ。

 全くどいつもこいつも揃って酷いことだ。

 再びミクリアに向けて構えを取ると、彼女もそれに合わせて身を構える。

 私が八相の構えに対して彼女は半身になって穂先を下にした構えだ。

 

「さて、お主のハルバードは魔法使いにとってはかなり面倒な能力のようだな」

「んふふふふふ、良いでしょー。家宝だよか・ほ・う」

 

 最低限、魔法に対して吸収と反発のような能力を持っているのは間違いない。

 家宝というだけのものはある。このレベルのものがそこらへんに転がっているわけはないからな。

 

「ではでは、戦える魔法使いの邪神ちゃんは、これをどうするかなー?」

「む?」

(crynu)(Nefoedd)──」

 

 有り得ない。私が一瞬の間に思ったのはそれだった。

 しかし、私の考えに反してミクリアの足元に魔法陣が展開される。

 

(Symud)(Daear)!」

 

 間違うはずがない。私が使った魔法、それがそのまま展開され、私へと襲いかかってきたのであった。

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