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邪神さん 邪神ちゃんに 転生す  作者: 矢筈
邪神ちゃん 少女編
145/208

邪神ちゃん 酔いどれの相手をする 4

「うぇっ……ひっぐ……だからヤダって言ったのにぃ……」

 

 2回戦もミクリアの健闘虚しく、敗北となった。

 あれから彼女は全ての鎧を剥がれ、尻を揉まれ背筋を撫でられ……

 なんというか悲惨であった。今も私の胸元に抱きついて涙と鼻水を拭っているのも、非難できまい。

 

「私、急に先ゆき不安になってきたわ」

 

 そんな様を見て、ステラも厳しげな表情をする。確かにこのまま続ければ我々の不利は否めない。

 それに、トラムトロスが使う脱衣術式とやらは実のところ、そこそこ厄介だ。

 何せ対人の術式であるにも関わらず、術式対象が身につけている装備。

 これでは個人が保有する魔法耐性は全くもって意味を成さない。その上、物理現象として目に見えるものでもないから、回避もしにくい。

 先んじて防護術式を展開するにも、未知の魔法だ。どの程度で防御できるかも想像がつかない。

 高位の防御を常に展開できれば問題ないのかもしれぬが、そうなると燃費が悪くなる。

 効果はバカみたいに思えるが、その実かなり有効的な術式だと思う。

 仮にこれで戦場に於いて多数に使われれば、結構面倒なことになるだろう。

 

「しかし、これはいけませんね。いくら試合とはいえ、女性を衆目の晒し者にするのは関心しません」

「うう、殿下ぁ」

 

 次にトラムトロスと相対するリカルドは、彼の行為に少々怒りを覚えているようだ。

 ミクリアがその言葉に、感激の声をあげる。

 

「だが、お主も魔法ができるとはいえ、どちらかというと近接型だ。相性がな……」

「私には私なりの手があります。アルカさんには、安心して見ていただければと」

「また"さん"がついておるぞ」

「おっと、これは失礼」

 

 がしゃりと鎧を鳴らして試合場へと上がる彼の姿には、どこか頼もしさを感じる。

 果たして彼の言う手とやらは、一体どのような物か。楽しみにさせてもらおうではないか。

 

「さぁ、肝心の脱衣ショーは手前で止まってしまいましたが……次は王子が相手だ! どうする、トラムトロス選手〜!?」

「男かよ! 男! かよ! そっちの他のかわい子ちゃん出せよぉ!」 

 

 場に出たリカルドを見て、トラムトロステは地団駄を踏んで悔しがる。

 本来優秀な人材であろう人間がこのような様になるとは、げに恐ろしきは酒神の力といったところか。

 対してリカルドはというと、沈黙を保っている。

 

「私的には王子の脱衣、ありだと思います! それでは、女性諸君の期待を胸に、試合開始ぃ!」

「はっ、ここで頑張れば後で脱がし放題!?」

「それを、私が許すとお思いですか?」

 

 はっきりとした冷たい声、それと同時に地響きがその場を支配した。

 

「貴方の行為は、度が過ぎるというものです。臣民に恥をかかせた分、しっかり反省してもらいます」

「こ、これは何が起こったのか!? トラムトロス選手が既に地面に倒れています!」

 

 試合の時間は、数秒にも満たなかった。リカルドが講じた手がとても、とても単純なものだ。

 策とも呼べない圧倒的な行為。ただただ素早く、正確に相手をぶちのめす。ただそれだけだった。

 相手がこちらを弱体化させる術式を使うのならば、使われる前に倒せばいい。それを明確に示して見せた。

 常人の目には、リカルドはただ剣に手を添えただけに見えたかもしれぬ。

 だが、彼はその一瞬の内に抜刀、トラムトロスを柄でぶん殴って気絶させた上で元の場所に戻ってきたのだ。

 

「全くもって度し難い。これがはえある競技会の参加者とは思えませんね」

 

 試合場の上で地に剣を突き立てるリカルド。

 私からはその背中しか見えぬが、正に騎士たるものの姿といって間違いないだろう。

 

「ふーはははは! トラムトロスは我らが中で最弱!」

「その通り! 女体に真理を見出した軟弱者よ!」

 

 教令院側からはそんなリカルドの姿に反応して、叫びがあがる。

 

「がはははは、正面勝負ならばお前の出番だ! 行けい! シャムロック!」

「わぇれらが真理の為にぃ!」

 

 続け様に次の対戦相手が試合場へ登る。

 彼もまた、学術の園の人員らしく、細身でローブを纏っている。

 ただその腰には、皮袋がくくりつけられていた。

 

「リカルド選手、休憩もいれずに連戦の心構えだぁ! 酔っ払い相手に正義の騎士、第二戦試合開始ぃ!」

「おぉっと」

 

 リカルドはこの試合もすぐに終わらせるつもりだったようだ。

 先ほどと同じように、凄まじい速度で抜刀し飛びかかる。

 だが、運が悪かったのか、シャムロックがふらついたせいで綺麗に躱されてしまった。

 

「ああもう! 惜しいわね!」

「うむ……うむ?」

 

 しかしそこで私は違和感を覚えた。

 シャムロックはその次も、さらにその次の斬撃もふらふらとよたつきながらも避けていく。

 さらにその合間合間に皮袋を手に取っては、その中身を呷る余裕の見せ具合。

 

「あれ、見切られておるな」

「嘘……」

 

 次から次へと斬りかかるリカルドの剣を、ふらりと避け時には軽く拳で反らし、果てには突如地面に横になって回避する。

 

「避けるのがお上手ですね」

 

 攻めあぐねたのか、リカルドの手が止まった。

 そうすれば、シャムロックはまた皮袋の中身を喉を鳴らして飲む。

 そして──

 

「ちょあーっ!」

「くっ」

 

 奇妙なポーズ、恐らくは拳法なのだろう、を取ると猛然とリカルドに殴りかかっていった。

 恐るべきはその速度、下手をすれば先ほどまでのリカルドに匹敵するかもしれん。

 しばしの猛攻の後、お互い距離を取って止まる。

 

「こぉれぞ、我が真理! 酔拳! 飲めばぁ飲むほど、強くなぁる!」

 

 再びぐびりと皮袋を呷る。水に類する魔道具かと思っていたが、まさか中身が酒だとはさすがに想像がつかなんだ。

 しかも、彼の言葉は誇張ではないらしい。

 距離を取り、中身を飲む度にその速度と力が増してゆく。

 

「ああー! 困ります! ふっつぅに殴り合いになると盛り上がりに欠けちゃいます!」

 

 アナウンスの方はそんな事はお構いなしのようだ。

 確かに見た目的には、ぶつかり合っては酒を飲む。ただそれだけの光景だ。

 

「もうなんか私、魔法使いとして真理を追い求めるのが怖くなってきたわ」

 

 ぐらんぐらんと体を揺らしながらもリカルドを追い詰めるシャムロック。

 その様を見てステラは一人深いため息をつくのであった。

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