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邪神さん 邪神ちゃんに 転生す  作者: 矢筈
邪神ちゃん 少女編
130/208

邪神ちゃん 武器を新調す 1

「持ってきたぞ、セングリン」

「早いな! 俺の秘蔵の素材を一週間と経たずに揃えるとは……」

 

 次の休日、セングリンの元に素材を持っていくと大層驚かれた。机の上に全てを並べると、その驚きはさらに強まる。

 

「俺ぁ、全部破片レベルのつもりだったんだが」

「本人に交渉してきたからな。そこそこ骨は折れたぞ」

 

 セングリンが牙、角、鱗を手に取りしげしげと眺める。

 

「素材があるから信じちゃいたが、本当に龍ってのがいるなんて……」

「鮫に蜥蜴にダンゴムシ。錚々たる面子であったよ」

「そういわれると、夢が壊れるな。なにせ昔話じゃこう、もっとなぁ」

 

 龍の姿について私に文句を言われても困るのだ。龍とはそれぞれの領域に生まれた高濃度のマナを保有する生き物。

 別に姿がどうこうだから龍ではなく、龍の姿がああなのだ。

 

「しっかし贅沢な話になるぜ。素材分の金だけで金貨換算したら、山盛りになる」

「その分苦労はしたからな。海を泳ぎ、空を駆け、大地を潜ったのだ」

「そりゃ大層な冒険だ。きっと語ってやれば吟遊詩人のいいネタになるだろう」

「……そうできれば良いのだろうが、龍の沽券に関わりそうなのでな」

 

 私のセリフに不思議そうな顔で返してくるセングリンに、これまでのことを掻い摘んで話す。

 すると、彼の顔は次第に苦渋に満ちたものへと変わっていった。

 

「女言葉に年寄りに寝坊助だと……。おれぁ子供の頃に聞いた伝説を信じてたんだがなぁ」

 

 よっぽど私の語った龍の姿が想像とかけ離れていたらしい。

 確かに語られている伝承ではもっとマシな姿で描かれている。リナウナブは航海の守護者、グラゼフは暴龍、ヤンは架空の存在。

 私が授業で習った内容でも、出会った時の雰囲気とはまるで違った。

 

「まぁ私の事は信じずともよい。素材が目の前にある。それだけでよいではないか」

「信じるぜ。信じてるんだが、どうしてもこう、イメージと違ってな。だが、確かに素材に間違いはねぇ。俺が使ったものと同じ波長を感じる」

 

 セングリンの持っていたものも、間違いなく同一のものであったらしい。

 さて、ここまで苦労して揃えると、これらをどう加工するか気になるな。

 

「セングリンよ。それらをどう使うのだ? 物が物だけに、炉に放り込めばすべて焼けそうな気がするのだが」

「ああ? そりゃ一応秘伝なんだが……。粉末にして鍛造の時に練り込んだり、溶かしたり色々さ」

 

 それから彼は秘伝といいながらも、加工の内容を話してくれた。勿論肝心な技術面はぼかしてだ。

 

「魔剣ってなぁ、基本地脈石と鋼の混合物でできてる。だが、こいつが厄介でな。魔法の通しを良くすると、脆くなっちまう」

 

 セングリンが棚から様々な材料を出してきて並べる。私はそこまで詳しくないから見てわからぬが、鋼にも何種類かあるようだ。

 

「で、龍の素材ってのはそれぞれ頑丈にしたり、しなりを良くしたり、魔力の通りを良くしたりする」

「なるほど。弱点を削ったり、長所を伸ばしたりできるわけだな」

「おうよ。ただ、それは微小な量での話だ。今回は話が違う。これだけ丸々使えば、かつてない物ができるだろうよ」

 

 彼が自信ありげにふんぞりかえる。ドワーフの寸詰りな体型だと、どこか滑稽に見える。だが、その自信は確固たるものであろう。

 

「全て使ってしまわんでも良いのではないか? 作った後の残りをとっておいてもよかろう」

「いーや。これは俺にとっての挑戦だね。ドワーフ一族の過去を塗り替えてやる」

 

 少しでもとっておけば、今後の鍛冶にでも使えるし、金にもなったであろうに。彼にはそんな考えはすっぽ抜けているらしい。

 彼の目に映るのは、今まで誰もなし得ていないことへの挑戦のみだ。

 

「だが問題は、時間だな。確か次の試合は──」

「次の週末だな。間に合うのか?」

「間に合うか合わねぇかじゃねぇ。間に合わせる。あんたにゃ俺を、信じていてほしい」

 

 かつてない事への取り組みだ。それなりに時間は要するだろう。普通の鍛冶師であれば不可能な事かもしれん。

 だが彼は私も認める随一の鍛冶師。その彼が間に合わせると断言したのだ。

 ならば私ができることはただ一つ。大人しく待つのみだ。

 

「良い。全て任せる。結果を期待しているぞ」

「おうよ。あんたが目ん玉ひんむくの、楽しみにしてるぜ」

 

 それだけ言葉を交わすと、私は彼の店を後にした。

 さて、どのような結果がでるか。私も楽しみにさせてもらおうではないか。

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