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第52話 不思議な繋がり/亮二

 【焼き鳥やまだにて】


「みんな、お疲れ様!! 乾杯!!」


「 「 「 「カンパーイ!!」 」 」 」


 七夕祭りでのボランティア活動も無事に終わり、俺達は『焼き鳥やまだ』で打ち上げを行っている。通常17時半から営業だが今日は俺達の為に16時から店を開けてもらい、そして19時までは俺達ボランティア部だけの貸し切りにしてくれている。


 半数近くの部員はバイトがあったり、特に一年生は順番に着ぐるみを着ていたので疲れきった部員が多く早く帰って休みたい、未成年でお酒も飲めないしという理由で帰ってしまったが、十数名の部員が打ち上げに参加してくれたのでそんなに広くはない店の中は人でいっぱいである。


 ちなみに1年生で参加しているのは橋本君だけで、大石さんは具合が悪いということで七夕祭りの途中で帰っている。


 おそらく具合を悪くさせたのは俺だろうけど……


 そんな少し気が重くなりかけそうな俺を元気にしてくれたのは打ち上げ参加メンバーの中にはカナちゃんがいることだ。


 当初は中学生の自分が飲み屋に行っていいのかと悩んでいたけど、お母さんに電話をして相談してみるとカナちゃんのお母さんは山田さんのお店だったら安心だし19時までに帰宅すれば構わないわよと言ってくれたそうだ。


 そしてカナちゃんは今、俺の横でカウンターの中にいる。


「加奈子ちゃん、中学生にそんなお店の手伝いをさせる訳にはいかないよ。後でご両親におじさん達が叱られてしまうよ」


「あなた、大袈裟ね? 叱られることは無いわよ。でも今日は暑い中、加奈子ちゃんもボランティアを頑張っていたんでしょ? 疲れているだろうし手伝いはいいから椅子に座って身体を休めた方がいいんじゃないの?」


「ありがとうございます。でも大丈夫です。それにりょう君も座らずにお店のお手伝いをしているのに私だけ座るのはちょっと……」


「カナちゃん、ゴメンよ」


 実はこの貸し切りの時間に来るはずだったバイトが風邪で休んでしまい……もう一人は19時に来る予定なので、それまでは俺が手伝うことになってしまったのだ。


「ううん、りょう君は気にしないで。私、前からカウンターの中に興味があったの。まさか今日、夢が叶うと思っていなかったから凄く興奮しているんだよ」


「そ、そうなのかい?」


「加奈子ちゃんは本当に良い子だねぇ……おじさん感動して涙が出そうだよ。何で翔太の奴は……イテッ!! な、何だよ、久子?」


「フフフ……加奈子ちゃん、ゴメンなさいねぇ。主人は空気を読めないところがあるから……亮二君も気にしないでね?」


「は、はぁ……」


 いや、奥さんの気遣いが余計に気になってしまうっていうか……カナちゃんも少し顔を赤くしているし……


「おーい、鎌田!? こっちの席に生中4つおかわりよろしく~!!」

「あっ、こっちは焼き鳥追加ね!! えっと、ネギまとつくねとせせりを5本ずつ追加頼むよ!!」


「はーい、かしこまりました!!」


「あ、ビールは私が持って行きます!!」


 カナちゃんはそう言うと小さな手にジョッキを二つずつ持ちながら席まで行く後ろ姿がとてもぎこちないけどとても可愛く思えた。


「加奈子ちゃんって、この仕事に向いているかもしれないぞ。これは高校生になった時には……」


「あなた気が早いわよ。でも、私もそんな日が来れば楽しみだけど……」


 ほんとマスター達はカナちゃんを気に入っているのがよく分かる。さっきマスターが言いかけていたけど、本当は翔太君の彼女はカナちゃんが良かったんだろうなぁ……


「鎌田君? ハイボールのおかわりいただけないかしら?」


「はい、かしこまり……えっ? 立花部長は向こうの席で飲んでいたんじゃ……」


「フフフ……カウンター席に座っていた子と変わってもらったのよ。それにしてもさすがここでアルバイトをしているだけあって鎌田君は良い動きをしているわね? さっきから見ていて惚れ惚れしていたのよ」


「ハハハ、恥ずかしいのでそんなに褒めないでくだいよ」


「別にいいじゃない? 本当のことなんだしぃ」


「ん? もしかして立花部長、かなり酔っているんじゃないですか? 大丈夫ですか?」


「何を言っているのよぉ? 私は全然、酔ってなんかないわよぉ。鎌田君は私がお酒強いのは知っているでしょう?」


「は、はぁ……」


 いや、絶対に酔っているぞ。喋り方がいつもと全然違うし……


「りょう君、どうしたの?」


 カナちゃんがビールを運び終えてカウンターに戻って来たが俺が立花先輩に何か言われて困っていると思ったみたいだ。


「あ、カナちゃん、大丈夫だよ。立花部長が酔っている感じだから少し心配しただけなんだ」


「だから、私は酔ってないってぇ……ヒック……」


 ヒックって……絶対に酔ってるぞ。帰り大丈夫かな?

 そんな心配をしているとカナちゃんが立花部長に近づき声をかける。


「立花部長、今日はありがとうございました。部長のお陰で良い経験ができました」


「へっ? いやぁ、私は何もしてないよぉ。私の方こそ加奈子ちゃんには感謝だよぉ。お年寄りから凄い人気があったし、とても助かったわぁ。加奈子ちゃん、本当にありがとねぇ……」


「いえ、私は……」


「ただね、私は演劇をしている加奈子ちゃんの姿も観てみたかったのよねぇ」


「そ、そうだったんですね。すみませんでした……」


「いえ、そこまで残念がっているわけではないんだけどねぇ……たださぁ今日の青葉六中の演劇を観て思ったのよねぇ……織姫役は加奈子ちゃんが一番似合っていただろうなぁってね。別に今日の子がダメとかじゃないんだけどさぁ……」


 そこは俺も立花部長の意見に賛成だけど、今更カナちゃんの織姫役が観たかったなんて言ってもカナちゃんが困るだけだもんなぁ……


「私なんかが織姫役だなんて、あり得ませんよ。それに大川さんはとても素晴らしい演技をされていましたし……」


「今日の子の演技は悪くは無かったわよぉ。ただねぇ、織姫役にしては輝きが足らないと言うか……なんか華が無いというか……逆に彦星の方が華やかな顔立ちだったから釣り合っていないというか……こう見えて実は私、演劇には少しうるさいのよぉ」


 え? そうなのか? 初めて聞いたけど……


「立花部長も昔、演劇をされていたんですか?」


「私はどちらかと言えば観るのが専門だけどねぇ……実は私の叔母さんが昔から演劇に携わっていてね、小さい頃から叔母さんの所属している劇団の公演によく通っていたのよ」


「そうだったんですね!?」


「それも私の叔母さんは何を隠そう、女優の岸本ひろみが青六小演劇部時代の時に部長を務めていたんだよぉ」


「 「 「えーっ!!??」 」 」


 えっ? カナちゃんはともかく何故か隣で聞き耳を立てていた山田さんの奥さんも驚いている。


「何故、久子おばさんまで驚いているのですか?」


 カナちゃんがすかさず奥さんに質問をした。

 すると奥さんはカナちゃんの質問に答えず逆に立花部長に質問をし始めた。


「あなたのお名前、立花さんだったわね? もしかして今、あなたが言っていた叔母さんって立花香織っていうお名前じゃないの?」


「えっ!? そ、そうです。叔母さんの名前は立花香織といいます。何故、叔母さんの名前をご存じなのですか?」


 奥さんが立花部長の叔母さんの名前を知っていたという事に目を丸くしながら驚いている部長を見るとどうやら一気に酔いが冷めたみたいだった。


 そして奥さんは笑顔で立花部長に話し出す。


「実は私も青六小の卒業生でね、当時、私は演劇部には入っていなかったけどあなたの叔母さんの立花香織さんは学校内で知らない人はいないくらいの美人で演技力も抜群に上手くて全児童の憧れの的だったのよぉ」


「そ、そうだったんですか!?」


「今も立花さんは演劇をされているのかしら?」


「いえ、今は脚本家として活躍しているみたいですね。前に叔母さんが言っていたんですが、その小学生の頃に同じ演劇部だった後輩がとても素晴らしい脚本を書いたのが忘れられなかったそうで演者をやりながら脚本も書く様になったそうなんです。それでいつの間にかそちらの方がメインの仕事になったらしいですよ」


「へぇ、そうなんだぁ……脚本家かぁ……フフフ、立花さんが影響を受けた後輩に心当たりがあるわ」


「えっ、そうなですか!? 是非、詳しく教えていただけませんか!?」


「フフフ……いいわよ。でも話せば長くなるかもしれないけどねぇ……」


 す、凄いよなぁ……まさか山田さんの奥さんと立花部長がこういった形で繋がるなんて……本当に不思議だ……俺の周りってこんな感じで不思議な繋がりが多い気がするんだよなぁ……


 あ、そっか……隆おじさんも立花部長の叔母さんを知っているってことだよな?

 よし、今度会ったら相談がてら今の話もしてみよう。

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