第一話
住み慣れた村を馬車が離れていく。
私は幼い弟や妹の為に両親に売られたのだ。
村は相次ぐ不作で貧困に喘いでいる。
仕方ないことだと頭の中ではわかっているが涙が溢れてきて止まらない。
周りには私のように売られた女性が所狭しと座り込んで同じように嗚咽を堪えているもの今後の境遇に不安を抱く者様々だ。
落ち着きを取り戻し周囲を窺っていると馬車を引いていた馬が嘶き停止した。
何事だろうと周囲の人達と話し合っていると鎧を着た男の人に一人ずつ外に出るように言われる。
指示に従い馬車の外に出ると周囲を鎧を着た人達に囲まれている。
私達を買った男と立派な鎧を着た男性が話をしている。
どうしたらいいかわからず他の女性達と佇んでいると綺麗な鎧を着た青年が近づいてくる。
整った顔立ちをしており村の男性とは全く違う。
じっと見つめられたと思ったら話しかけられる。
「お前、名前は」
「シャルラといいます」
少し考えこむ仕草をしたと思ったらこんなことを言ってくる。
「俺と一緒にくるか」
「無理です。私は売られた身の上なので」
「そんなことか少し待っていろ」
青年は立派な鎧をきた男性と私達を買った男に何事か話しかける。
しばらくして戻ってくると話かけてくる。
「話はついた。俺と一緒に来い」
それだけ言うと私の手を取ってくる。
どうしたらいいのか迷って買い取った男を見ると微笑んでいる。
青年に手を引かれるままついていくと近くの鎧をきた男性が一匹の立派な黒毛の馬を連れてくる。
青年は先に馬に乗ると引き上げてくれる。
「あの。私はこれからどうなるんでしょうか」
「俺と一緒に暮らしてもらう」
青年はそれだけ言うと馬を走らせる。
青年に従うように数騎が並走してくる。
慣れない乗馬に参っている私の為に頻繁に休憩を取ってくれる。
日が暮れる頃大きな街につき青年達はそのまま街の奥へと入っていく。
驚いたことに青年達は城に入っていく。
厩の人に馬を預けそのまま城の内部に連れていかれる。
城の中に入ると執事とメイドさんが控えていた。
「おかえりなさいませ。こちらの方は」
「俺の客人だ。世話を頼む」
「かしこまりました」
執事さんがメイドさんに指示を出すと囲まれてお風呂場まで連れていかれる。
あっという間に服を脱がされ体を洗われる。
言われるまま湯船にゆっくりと体をつける。
村には湯船なんか当然なくせいぜい井戸から水を汲んできて体を拭くくらいだった。
湯船から出ると体を拭かれ髪をくしで梳かれ綺麗な服を着せられる。
大きな部屋に通されメイドさんが食事を運んでくれる。
村では考えられない料理が並ぶ。
お腹が空いていたのと美味しさが相まって全てを平らげてしまった。
食器をさげた後何かあればお呼びくださいと挨拶をしてメイドさんは出て行った。
部屋をよく見れば壁には細かい模様が入り置いてある品も高そうだ。
天蓋付きの大きなベッドに恐る恐る近づき横になる。
これからどうなるんだろうと思いながらも思っていたより疲れていたようであっという間に眠りに落ちてしまった。