ログイン三日目2
!グロ注意!
警告したよ!本当にグロ注意だからね!
読み飛ばしても大丈夫なよう要約
『主人公、無事【解体】習得』
以上!
あとは本当グロいから、苦手な人はブラウザバック!
読んでも自己責任だからな!
ネムノキとの約束だ!
『解体、ってのは、狩ってきた獣やモンスターを『生かす』作業だ』
先生は、作業台の上の肉塊になった鹿を手早くバラしながら語る。
『獣もモンスターも、解体しなきゃ使いものにならねえ。ただの糞袋だ』
音は生々しく、手際は素晴らしく、先生は肉塊を肉屋で売られているような肉に変えていく。
『それを解体することで、糞袋は肉とか皮とか、骨とか薬とかになる』
言ってみれば、糞袋に第二の生を与えるものだ。
先生は誇らしげに語る。
『ところで、お前の故郷で解体を教えた奴は、何て言った?』
『確か……、『狩った命を無駄にしない作業』と言っていました』
『無駄にしない。なるほど。一理ある説明だ』
ウンウンと先生は頷く。
『お前がどちらの信念で解体するかは、お前に任せる。だが、狩られた獲物への感謝だけは忘れるなよ?』
『はい!』
『いい返事だ』
先生はガハハと笑う。鹿は完全に解体されていた。
『で、解体だな。とりあえず基本として、こいつからだ』
そうドンと置かれたのは。
『……犬?』
『犬じゃねえ、ワイルドドッグ。どっちか、つうと狐に近い別モンだ。この街では、ラビットの次に解体依頼の多い獣だな。お前なら、どこを注意して解体する?』
私なら……。
とりあえず股間を見る。
『オス。なら、睾丸を傷付けないのが第一。次に膀胱と尿道。そして消化器系を傷付けないこと。そのためには腹膜を傷付けないこと』
『そこが分かってりゃあ、初心者脱出だ。だが、ワイルドドッグは、もっと気を付けてなけりゃいけないところがある。分かるか?』
私は唸って考えるも。
『分かりません』
『答えを出すのが早いが、まあいいだろう。答えは『寄生虫』だ』
『寄生虫』
『お前の故郷ではどうか知らんが、この世界の肉食や雑食の獣は、危険な寄生虫に感染していることが多い。モンスターなら寄生虫は知れているんだがな。まあ、この防護服は飾りじゃねえんだ』
例えば、と先生が解体ナイフをワイルドドッグの尻に刺し、抜くと。
『ヒッ』
そこから、ウネウネ、と黄色い糸のような何かが湧き出てきた。
『ほら、こいつが寄生虫だ。名前は知らねえが、こいつに寄生された人間は内臓を食い荒らされる。異邦人だと、死に戻りしても体内に残り続けるから、エグいことになるらしいな』
想像してしまうギリギリで踏みとどまる。
『ま、こういう訳だから、肉食や雑食の獣は、血抜きもするな。大人しく【収納】スキルか『収納バッグ』に入れとけ。ああ、異邦人なら『ストレージ』もあるな。そうして、近くの冒険者ギルドの買取所に持ってこい。俺ら専門家が安全に解体してやる』
『わ、分かりましたからそれ! それ!』
『? ああこいつな』
先生はウネウネ蠢いている黄色い糸を掴み、ゆっくりと引き抜いて作業台横のゴミ箱みたいなものにペイッ、と入れる。すると黄色い糸は青白く燃え、『キイィ!』と断末魔を上げた。
『え? 鳴き声? え?』
『寄生虫、って言ってるが、あのナリでモンスターの一種だ。気を抜くなよ?』
『はいっ!』
内臓を食い荒らされたくなんてないからね。気を付けよう。
そこからの解体風景は思い出したくない。ただ誓ったのは。
【解体】スキルを得てもゲーム内で解体はしない!
ということだ。
だが、現実は無情で。
『一通り見たな?』
『はい』
『ではやれ!』
『……はいっ!?』
誓いは一瞬で破られ、私はトラウマを増やした。うん、これは【解体】スキル保有の異邦人が増えない訳だよ。
『で、次はラビットだ。こいつの場合ダニにヤバイのがいてな……』
『ヒイィ!』
『次はカモか。鳥はあんまり寄生虫はいな……、あこいつやべえやつだ』
『イヤアアァ!』
『ディアは簡単だが、たまに凄いのが……、いたな』
『ギャアアァ!』
疲労困憊しつつも、なんとか私は【解体】スキルを入手した。
『解体は嫌だ解体は嫌だ解体は嫌だ……』
『そう言いつつ手は止まらん辺り才能あるぞ。ここで働くか?』
『働きません!』
勧誘の手を振り払いつつ、なんとか私はファスト教会に生還した。
「おかえりなさいシスター・レーリ。……凄く疲れているわね。大丈夫?」
「ただいまマザー・アンナ。獣の解体は二度としたくないです……」
「獣の解体は専門の施設が必要なので、その心配はありませんよ?」
「なら嬉しいのですが……」
フラフラと私は、講堂の椅子に座る。
「ところでシスター・レーリ。ブラザー・カントが夕食にオオナマズのスープを作るそうだから、今日の成果を見せてくれる?」
「もちろんです!」
そうして調理場に行き、ブラザー・カントと共にオオナマズとレタスのスープを作る。寄生虫? 何匹かのオオナマズにもいたけれど、あんなのいたうちに入らないよホントダヨ。
「美味しい!」
教会の皆には喜んで貰えた。ハーブの利いたオオナマズのスープは、臭みが気にならず、むしろ食欲をそそられる香りで。そこにオオナマズの脂が来るのだからもう堪らない。そこにレタスがいることで脂やハーブのくどさが緩和され、いくらでも食べられてしまいそうだ。
「明日はハーブ園に行くの楽しみだな」
シスター・アングリアとの約束を思い出しつつ、ログアウトした。
ジビエを語る上では避けて通れない寄生虫問題。
寄生虫問題、ってものすごいんだけど、日本は結構寄生虫少なくて「ジビエがー」なんて言えるんですよね。
アフリカ中央部とかだと、そもそもの飲み水に寄生虫がたんまりいるから気にしていないだけで、そこら辺で狩ってきた獣の肉は寄生虫まみれだったり。
中国の奥地で食されているジビエもとってもヤバい(語彙力)。ヤバ過ぎて中国政府が何度も禁止令出している程ヤバい。
なのに逮捕されようが処刑されようがジビエ食べ続ける現地民。
伝統って怖い。