アンジェリーナ語る
「私、婚約破棄されて国外追放になりましたわ」
「にゃんだってーー!!」
アンジェリーナの爆弾発言を受けて、レベッカの絶叫が森の中に響き渡る。え、婚約破棄?国外追放?まさかここって婚約破棄系ラノベの世界だったりするの?アンジェリーナが悪役令嬢でこれからレベッカの力を借りてザマァ展開とか?私は………あ、モブか。
頭の中でおかしな妄想をしている私の隣でレベッカが詳しい説明を要求している。
アンジェリーナの話はこうだった。
◇◇◇
side アンジェリーナ
私、アンジェリーナ・バッカスティルはバッカスティル侯爵の娘でしたわ。ええ、今は只のアンジェリーナですが。あぁ、これも後でお話しますわ…ふふふ…レベッカのいう通りハラディール国の王太子――グスタフ・ハラディール王太子殿下の婚約者をしておりました。
彼の婚約者になったのは12歳の時。魔力が強いという事と私の中に流れる王家の血を取り込むという理由からですわ。私の母方の曾祖母が先々代の王の妹でしたから血は薄いのですが。
政略ですので殿下への愛情は欠片もございませんでしたが、それなりの関係でしたのよ――聖女召喚が行われるまでは。
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「アンジェリーナ・バッカスティル!貴様との婚約は破棄する!聖女であるヒメカへの悪質な行動の数々許しがたい!よって国外追放とする!」
王家主催のパーティーでいきなりでしたわ。私、聖女様にお会いするのはこの時が初めてだったのですが。
「グスタフ様~姫華怖かった~」
「あぁヒメ、大丈夫だ。俺が守ってやるから心配ないぞ」
「グスタフ様~」
「こんな可憐なヒメに酷い仕打ちをするなんて呆れますね」
「ホント、可愛いヒメを見習って欲しいよね~」
「俺はヒメの専属騎士だからな!絶対守ってやる!」
「皆ありがとう~姫華嬉しい~」
………何なのでしょうか、この茶番は。
胸にしなだれかかる聖女様を抱きしめる殿下。鼻の下が伸びてましてよ。側近の皆様も完全に籠絡されてますのね。
――ですが、こちらとしても好都合ですわ!
「婚約破棄承りましたわ。では皆様ごきげんよう」
◇◇◇
「……で、そのまま飛び出して来ちゃったのにゃ~」
「その場で侯爵家からも勘当されましたし。ですが…レベッカから頂戴した転移石を使ってしまいましたわ。折角作って戴いたのに」
「また作ればいいからそこは気にしにゃくていいにゃ~」
「私としては清々しておりますのよ。あの王家もそうですが、貴族社会にもうんざりしてましたもの。それに娘を政略の駒としか見れない男など最初から親とも思っておりませんわ」
「確かに婚約が決まるまで放任だったにゃ」
そう、バッカスティル侯爵は魔力と王家の血欲しさに辺境伯令嬢であった私の母と政略結婚をしたくせに、事あるごとに田舎者と嘲笑って蔑ろにして、身体を壊した母をさっさと辺境伯領にある別邸に押し込めたような男ですのよ。どこに敬う要素がありますの。
「これからどうするのにゃ?」
「冒険者活動を再開しますわ。こう見えて私、Dクラスですのよ」
「にゃ?いつの間に登録したのにゃ!」
「10歳になって直ぐですわ。反対されると思って内緒にしてましたの。私、剣の腕前も中々ですのよ、お祖父様にみっちり仕込まれましたから」
侯爵家に居るのが嫌で、辺境伯領に行く母について行きましたから。実質お祖父様に育てられたようなものですわ。
「気付かにゃかったにゃ…」
「あの…お二人はいつからお知り合いに?」
「――8歳になる直前でしたかしら……森で怪我をしていたレベッカを介抱しましたの」
「あれは……不覚だったのにゃ」
「まぁ、私も迷子になりかけていましたからレベッカに出会えて助かりましたのよ」
「……ま、まぁにゃんだ、リナリナがバカ太子と結婚せずに済んで良かったにゃ!」
「私も冒険を再開出来るのが嬉しくて!この点に関してだけは王太子殿下に感謝しますわ。……1秒だけ」
「にゃはは~!1秒ももったいにゃいにゃ~」
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