ある日森の中
初小説、初投稿です。
拙い文章ですがお楽しみいただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
気がついたら深い深い森の中にいた。
両手一杯に和菓子を持って。
◇◇◇
鍋の中の小豆がグツグツ煮えている。中の小豆を時々押すように木べらを動かす。
「水気がなくなったら小豆を潰してっと」
「――まだかのぅ~まだかのぅ~」しったんしったん
先が淡い紫がかった長いしっぽを床に打ち付けながらソワソワと落ち着きのない白いモフモフが鍋を覗き込んでくる。
「もうすぐできるから――モフ神様よだれ入っちゃうよ!」
「おっと!よだれ入りはイヤじゃな」
「あら熱が取れるまで待ってて、猫舌なんだから」
「我は猫ではないぞ!」
「ハイハイ、モフ神様。あと少しのガマンね!」
「うぐぐ・・・」
渋々ダイニングテーブルに移動し、それでも気になるのかチラチラこちらを伺っている。私は笑いを堪えながら、手早く出来上がった小豆餡を小分けにして皿に盛っていく。
「はい、どーぞ」
「おおーー!!」
先に作っておいた白玉団子に小豆餡をたっぷり入れたお椀をテーブルに置くと、飛びつくように食べ始める。
ぱくり
「うむうむ、うまいのぉ~♪」
「―ホント、ハマっちゃったねぇ」
「この甘さが何ともいえんのじゃ。むぐむぐ――今までに無かった味じゃからのぉ」
アメジストの瞳をキラッキラさせながら、嬉しそうに口いっぱいに頬張っている――和む。
「もぐもぐ――この白いモチモチとの相性もバッチリじゃな」
「そうだねぇ――私としてはこれにホイップクリームがテッパンだけどねぇ」
「何じゃその″ほいっぷ″とやらは?それがあればさらに美味になるのか?すぐに出すのじゃ!」
おっと、余計な事を言ってしまった。
「今日の分はさっき出した″白玉粉″でなくなっちゃったからムーリー」
「何じゃとー!!・・・では明日には出せるのじゃな!」
「えぇ~、明日は他に出したい物があるから・・・ホントは″白玉粉″だって今すぐ必要だったかっていったら、そうじゃないのにモフ神様が出せ出せって・・・」
「旨そうじゃったから仕方がなかろう!食べてみたい物がまだまだあるというに・・・未だ1日2回とは情けない」
「2回に増えただけでもありがたいんですけどね私は」
最初は1日1回だったもんなぁ・・・
私は目の前のモフ神様との出会いを思い出していた。
◇◇◇
私、天野幸恵はしがないイラストレーターである。といっても小さなデザイン企画会社でタウン誌などのカット描きをしていたのだが。
月曜日何時ものように出社したら――会社が無くなっていた。
社長がまさかの夜逃げ。そんな素振り一切なかったのに!
あまりのショックで茫然としていたが、ふと気がつくと――
深い深い森の中にいた。
え、何コレ?どゆこと?近くにこんな森なんて無かったよね?まさか無意識に某自殺の名所に来ちゃったとか?イヤイヤないないそんな度胸も根性もないってば!!
思わず空を仰ぎ見て――固まった。
あれ?太陽が2つ?しかも見慣れない色してるんですけど?
――あ、なんだ私夢見てるんだ。そうだよね会社が無くなるなんてそんな願望が現実に起こるわけないもんね。起きたくないからってこんな夢見るなんて疲れてるのかな私。
ガサリ
直ぐ近くの草むらから音がしてビクリと肩が跳ねる。出てきたのは大きなウサギ。でも額に角がある。
流石は夢。ファンタジー世界のド定番。ゲームなんて最近してないのにやっぱり休みたいって気持ちの現れかな?
ぼ~っと見てたらギラリと光る赤い目とあった。瞬間総毛立って思わず後ずさったら木の根っこに足をぶつけた。
痛い。
――ウソだろマジか?夢じゃないの?
角のあるウサギがこちらを見ている。完全にロックオン状態。
ヤバイ!ヤバイ!!ヤバイ!!!
本能が警鐘を鳴らしている。恐怖で竦む身体を何とか動かし走り出す。相手は足の早いウサギ。逃げ切れないのはわかってても逃げるしかないでしょう?!
必死に足を動かす。後ろなんて見てる余裕などない。追い付かれる恐怖に頭がいっぱいになった時――
ぼすり
目の前が真っ白なフワフワに覆われた。
あ、死んだな、こりゃ。
「死んではおらんぞ――時空の歪みを感じて来てみれば――フム稀人とは珍しい」
目の前には見上げるほどの大きな白ト○ロがいた。




