仲間外れ2
なつ休みの思い出
すず木 はると
ぼくは、なつ休みにおなかがいたくなって、びょういんにいきました。
入いんになって、びょういんは、たいくつでした。
かんごしさんが、ここでなら あそんでいいよ て、おへやに つれて行ってくれました。
プレイルームっていう おへやでした。
おへやには、たくさんのオモチャがありました。
その日は、ひとりでビデオ(かぜの底のナウシカってやつです)を見ました。
***
つぎの日、ぼくがプレイルームに行くと、よにんいました。
足をほうたいでぐるぐるまきにしたおねーちゃんと、ぼくより小さい女の子と、もっと小さい男の子と、女の子でした。
よにんは、モノレールであそんでいました。
ぼくも いっしょにあそびたかったのに、おねーちゃんがだめって言って、いっしょにあそべませんでした。
そのとき、おねーちゃんいじわるだなって思いました。
へやにもどって、ひとりであそんでいたら、おねーちゃんがきて、いっしょにあそんでくれました。
だけど、プレイルームにきちゃだめだって言いました。そうしないと、ママに会えなくなるよって言いました。
***
ぼくは、やっぱりおねーちゃんはいじわるだなって思いました。
だって、プレイルームにはオモチャがたくさんあるのです。
だけど、おねーちゃんがこわいので、プレイルームには行けませんでした。
すぐにたいいんするから、いいやって思いました。
よるになったら、こんどはおねーちゃんとあそんでた こたちがあそびにきてくれました。
プレイルームに行こうってさそってくれました。
ぼくはうれしくなって、行こうとしましたが、ママに会えなくなるのはいやでした。
だから、ここであそぼって言いました。
すると、みんなおこって、ぼくをひきずりました。
ぼくのほうがおにいちゃんなのに、みんなすごい力だなって思いました。
***
みんなにひきずられていたら、おねーちゃんがきました。
すごいおこってました。
ぼくがびっくりしていると、おねーちゃんがこわくて、みんないなくなってました。
ぼくだけ、おねーちゃんにおこられました。
つぎの日、たいいんしました。
だから、ぼくのなつ休みの思い出は、おなかがいたくなったことと、おねーちゃんにおこられたことです。
つぎはプレイルームであそびたいです。
おわり
***
すずきはると君の作文を読んだ道隆と潤は、爆笑していた。
「…笑いすぎじゃないですか…?」
忍は、ブスッとして窓に顔を向けたまま、呟いた。
ここは病室。
彼女の足には頑丈なギブスの上に、包帯がまかれている。
階段から転げ落ちて、骨折したのである。
高校生の彼女は外科病棟に入院するはずだったが、満床であった為、小児病棟での入院となった。
「いやぁ…これ読む限り、忍様、完全に悪者ですね」
道隆は「はると君の命を救ったのに」と続けたが、その目には笑いすぎて涙がたまっている。
道隆と潤は、忍のお見舞いに来ていた。
すずきはると君の熱心な担任の先生は、夏休み明けの宿題である作文を読んで、わざわざ病棟まで足を運んできた。
看護師が、作文に記載されている「おねーちゃん」が忍であることを確認し、忍の許可を得て、担任の先生と忍は面会をした。
「飯坂と申しますが」とその女教師は丁寧に名刺を渡しつつ、作文の件で、どんな事情でプレイルームで遊ばせなかったのか説明を求めた。
仕方がないので、忍は正直に話した。
自分が除霊師である事、プレイルームに3人の子供の霊がいた事、その子供達を満足させるかたちで成仏させたかった為に、一緒に遊んでいた事。
ところが、3人の霊が見えるはると君が仲間に入りたがった為、3人の霊は喜んで、はると君もあの世に連れて行こうとした事。
「…結局、子供達をしかりつけて、強制成仏させる事になりましたが」
忍は淡々と事情を説明した。
けれども、わかる人が見ればその姿は寂しそうだった。
飯坂先生は、はると君の霊感に思い当たる節があったのか、「すみませんでした」と何度も謝罪した。
それで終わるのかと思えば、なんと逆にはると君絡みの除霊を引き受ける事となったのである。
「結局、忍ちゃんはボランティアだらけだね~(笑)」
除霊師としてお金にならなくても、気付いてしまったら、自ら関わり除霊してしまう。
そんな性格の忍を、極力抑えてお金に変えるのが、マネージャーである道隆の主な仕事になりつつあった。
「ごめんなさい」
今回も無償で引き受けてしまったので、忍は道隆に謝ったが、道隆はにこにことして忍に言った。
「忍様がそういう性格だから、私達は出会えたのですから、気にしないでいいんですよ」