腰痛
アタシはこれでも、ちょっとした霊媒師の素質があるって言われた事があってさ、ちょっと人より色んなモノが見えちゃうんだよね、厄介な事に。
この前なんて、近所の仲間で井戸端会議してたんだけど、一人が肩凝りに悩んでるって話したらさ、もう一人は腰痛で悩んでるのよーって言い出したのね。
それでアタシ、やめときゃいいのに●●さんの腰痛はなかなか治りにくそうですね、なんて余計な事言っちゃってさ。
さらにやめときゃいいのに、ぽんぽんと腰痛の原因を少しだけ追い払ってあげちゃったのね。
●●さん、最初はキョトンとしてたんだけどさ、直ぐに腰が楽になった事に気付いたんだろーね、アタシが何をしたのかしつこく聞き出したのさ。
アタシどうしてその時正直に話しちゃったんだろうね、今でも後悔してるよ。
●●さんの腰に、小さな子供がぶら下がってるのさ。背中から覆いかぶさるようにして、ウエストに腕をぐるっとまわしてね。
その話をしたら、●●さん真っ青になって帰っちゃったのよ。当たり前よねぇ。
それからかしらね、●●さんがお会いする度に今はどう?今はどう?ってアタシに聞く様になってさ。
最初は適当にあしらってたんだけど、まだ腰痛は続いてるからそんな訳無いって言われちゃってさ。
ついつい根負けして、●●さんの場合は家が呼ぶみたいだから、払っても払っても直ぐに憑くって教えたのよねぇ……
ちょっとした、出来心だったんだよ。家が呼ぶなんてのは、口から出まかせだった。いつも綺麗にしている●●さんがちょっと羨ましくて、そんな事を言っちゃったんだ……
まさか●●さんが、子供を地下室に閉じ込めて死なせたなんて知らなくて。
そんな事を言ってしまったアタシの事を、要注意人物だと考えるなんて思わなくて。
私は、こんな地下室から逃げ出したくて、●●さんの腰にしがみついたさ。足枷がついていたから、置いていかれたけどね。
けど、今は自由に●●さんの腰にしがみついてる。魂が肉体から離れたからね。
●●さんはますます腰痛に悩まされているみたいだけど、アタシみたいな仲間が何人もしがみついているんだもの、当然さ。
今日、ちょっと霊感のある人が●●さんの腰痛の原因に気付いて眉を寄せた。
ああ、やめときゃいいのに……
……みんな、お仲間が増えるかもしれないよ……