心霊スポット
『ここかぁ……確かになんかでそうだね?』
画像の中で、画面の方に向かって勝ち気そうな女の子が振り向いた。
『まさかうちらの高校の近くに、こんな有名な心霊スポットがあるなんて知らなかったよね』
画面が左へと動き、その発言をしたと思える女の子を捕らえた。
『そうそ、私なんか知らないでここ通った事あったよ』
笑いながら声だけが聞こえる。ハンディカメラを構えている女の子の声らしい。
『あれ、絵美、もう映し始めてる?』
画面がぐりん、とまわり、最後の一人の女の子を捕らえた。
『うん、録ってる♪私も写りたいから、順番に録ってね!』
『はいよ』
『うん』
『わかった』
女の子達は、思い思いに応えた。
『んじゃ、改めて皆並んで~~』
絵美の号令で、歩道用の非常に小さなトンネルの脇で、3人が並ぶ。
画面に向かって、手を振ったのが菜月。
ピースサインをしたのがありさ。
大人しく微笑んでいるのが繭だ。
『ここはインターネットで公開されていた、有名な心霊スポットで~す!これから実証見聞したいと思いま~す!』
絵美の声が説明をする。
繭が近づき、絵美と交替した。
ぐるり、と撮影者を軸にして一周し、トンネルとその周辺を映す。
『んじゃ早速行ってみましょ~!』
全員、寄り添う訳でもなく、バラバラに入っていく。
画像は途中、全員が交替で出口を映したり、振り向いて入口を映したり、それぞれの顔をズームで録ったり、全身を映したりしていた。
画面の中のトンネルは、画像を通してもじめじめと濡れている様に見える。
『うわ!さむ~~~……トンネルってやっぱり寒いねぇ』
『絵美、ここ通った事あるって?』
『うん。この前の文化祭でさ、布地仕入れるのに安い店教えて貰ったんだけど、このトンネル抜けていくと早いよって教わって』
『誰だよそれ教えたの~~ウケルんだけどっ』
『その時は昼間だったしさ~~秋子と一緒だったから、おしゃべりしながらでなーんも感じなかったけどね』
『んじゃ何もでなかったんだ?』
『うん。帰りもここ通ったけど、荷物が重くて文句言いながら通ったからね~』
『それにしても、結構長いよねこのトンネル』
『そうだね。……100メートルくらいあるかな?』
『え~、秋子と通った時はそんなに長く感じなかったけど……』
『ちょっとヤダー、絵美、変なこと言わないでよ。繭が怯えてんじゃん』
『そんな事言って、怖がっているのはありさでしょ~~!』
『そういう菜月だって……早足になってるし』
『……皆……変なこと言い出さないでよ……』
徐々に恐怖が4人に伝染し、誰からともなく走り出す。
揺れる画像。
最初に外に出たのは菜月、次にありさ、繭と絵美が最後に同時にトンネルを抜けた。
4人共、画像の中で息を整えている。
『……もうっ……菜月が走り出すから……何かあったのかと思ったじゃん……』
『だって……絵美が変なこと……言い出すからさ~』
『何も出なかったけど……ちょっと怖い思い出来たね』
『あはは、確かに。後は明日、皆でハンディカメラの映像見てみよ~~♪』
絵美はゆっくりと画面に近づき、しばらくして画像は足元を映し、そこで止まった。
ある教室の中。
4人は、頭を付き合わせる様にして、心霊スポットで録った昨日の映像を見ていた。
「やっぱり特に何も映ってないね~~」
菜月ががっかりしたように言う。
「所々、変な光みたいなのが写り込んでなかった?」
ありさが聞くと、
「いや、どう見てもこれ…トンネルの濡れた所が光って見えるだけでしょ」
絵美が答える。
繭だけ、無言だった。
3人が不審に思い、繭に声を掛ける。
「繭、どうかした?」
繭は真っ青な顔で答えた。
「ねぇ……最後に映像録ったの誰?
私達、4人で行って……
なんで、最後、トンネルから出るトコ……
4人共、映像に映ってるの……?」