仲間外れ
ある田舎の、だだっ広い公園。
その中心で、少年少女達が遊んでいた。
「か~ごめ~か~ごめ~」
真ん中にいるのは、勝ち気なポニーテールの少女、奈々(なな)
「か~ごのな~かのと~りぃ~は~」
周りで手を繋ぐのは、
野球帽を被った活発な強
長い三編みに眼鏡がトレードマークの香織
おとなしそうな小柄な秀彦
艶のある黒髪おかっぱ頭の忍
ちょっと…いや大分…ぽっちゃりとした耕太
「い~つ~い~つ~で~あ~う~」
そして、その傍で輪の中に入れず、オロオロと泣きそうな顔をしている、泣き虫の冬華
「よ~あ~け~の~ば~ん~に」
泣き虫少女が、勇気を出して声を掛けた
「ね、ねぇ…私も、仲間に入れて?」
しかし。
「つ~るとか~めがす~べったぁ」
誰も、そちらを見ない。
泣き虫少女は、涙をぐっと堪えた。
「後ろの正~面だぁ~れ」
ポニーテール少女は名前を外し、皆きゃあきゃあと逃げて散った。
「あ、あの…」
残された泣き虫少女は鬼となったポニーテール少女に声を掛けるが、
「待てぇ~~~~!!」
その声に応える事なく駆け出した。
鬼役は、そこから小柄な少年、太っちょ少年、おかっぱ少女、と移り変わったが、それでも泣き虫少女に構う事はなかった。
泣き虫少女は、とうとう泣き出した。
それを見たおかっぱ少女は、やっと重い口を開く。
「ゴメン…私、ちょっとふゆかちゃんと遊ぶわ…」
野球帽少年が、ニヤニヤしながらおかっぱ少女に絡む。
「はぁ~?ふゆか~?誰それ、知らね~な~!!」
泣き虫少女は、ますます激しく泣いた。
「ちょっと、止めなよ」
三編み少女が、野球帽少年を諭す。
「…わかった。けど、今度そういう事言うと、しのぶちゃん、仲間外れだからね」
ポニーテール少女が、きっぱりとおかっぱ少女に言い放った。
皆が、ぎょっとしてポニーテール少女を見た。
「誰かのうち行って、テレビゲームでもしようよ」
「お、それいいな!」
…その集団は、おかっぱ少女と泣き虫少女を残して去って行った。
おかっぱ少女は、はぁ、と溜息をつき。
泣き虫少女に声を掛けた。
「…私がいっしょに遊ぶから…泣かないで?」
泣き虫少女はやっと泣き止み、しゃくりあげながらおかっぱ少女の方を見た。
「…ほんとう?」
「うん。何して遊びたいの?」
それから少女達は、おままごとに影踏み、色鬼、砂遊び等で楽しんだ。
日も暮れた頃、公園を通りかかった住民が声を掛ける。
「そろそろ暗くなって来たよ、お家にお帰り」
「は~~~い!!」
泣き虫少女は元気に応える。そして、おかっぱ少女に聞いてみた。
「なんで、皆さいきん私をムシするのかな…何か悪い事したのかな…?」
おかっぱ少女は、泣き虫少女に真実を告げる。
「皆、無視している訳じゃないよ。あなたの姿が見えなくて、声も聞こえないだけ。」
「え…?」
「私は、たまたまあなたの様な霊を見る事が出来るの。
…皆、気持ち悪がるけどね…
ふゆかちゃんが満足するまで、明日もあさっても一緒に遊ぶから、早くじょうぶつしてね。」
泣き虫少女は、こくり、と頷き…
「なぁんだ…そうだったんだぁ…ムシされている意味がずーっと、気になっていたの…」
すーっと、おかっぱ少女━━忍の目の前で消えた。