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キャスト

『3』…使い古したジャンパーを着込んだ男性


『08』…精神状態の良くない婆さん


『008』…お節介そうな太った男性


『23』…俺


『038』…特に特徴のない中年女性


『808』…角刈りの男性


『893』…柄の悪そうなオールバックの男性


『5648』…目のぱっちりとした高校生位の女の子


『8148』…神経質そうな男性





☆☆☆





俺が目覚めた時、何人かの人がこちらを注目した。



……ここは、何処だ……?



眉間にシワが寄っていたのだろう、一人の男が俺に声をかけた。



「お、ニーサン起きたのかい?」



その男の方を見ると、胸に『3』の番号札をつけていた。

使い古したジャンパーを着込んでいる。


「ここが何処かなんて、皆に聞いちゃいけないよ。皆同じ事思ってんだ」



部屋は小学校の教室位の広さがあった。

天井も床も、壁も全てクリーム色だ。壁にはテレビだろうか?画面が備え付けられ、部屋の4隅に監視カメラ?があった。ドアは一カ所、やはりクリーム色だ。

ドアの横には、暗証番号を押すようなダイヤルがついている。



ぐるりと見渡すと、目のぱっちりとした、妹と同じ高校生位の、可愛い女の子と目があった。



その女の子は、『5648』の番号札を着けている。



もしかして……



自分の胸元を見下ろすと、そこには『23』の番号札がつけてあった。



その時、俺の横にいた婆さんが、ブツブツ何かを話しているのに気付いた。



『08』の番号を付けたその婆さんは、しきりに


「恐ろしい……あの悪魔め!!なぜこの世に生まれてきてしまったのか……」


といった様な事を繰り返し唱えている。


ここにいるからか、普段からかはわからないが、精神状態が普通とは言い難い。



「……何故こんなところに連れてこられたのかしら……」


『038』の番号札を付けた中年の女性が言った。



『8148』の番号札を付けた神経質そうな男性が、その女性の言葉に頷いた。



「ここから出せよオラァッッ」


『893』の番号札を付けた、髪型をオールバックにしっかり固めた男が、足でガンガンドアを蹴り飛ばしはじめた。



「開くものも開かなくなってしまいますよ」


『008』の番号札を付けた太った男性が、窘める様にオールバックの男に言う。



…まてよ?さっきのブツブツ言う婆さんは『08』だったよな…?



なんで『08』と『008』が存在するんだ?




「……とりあえず、よくわかんねぇが、自己紹介しとかないかぃ?」


角刈りの『808』の番号札を着けた男性が提案する。



「そうですね、とりあえずは……」


俺が発言した時だった。



部屋のテレビモニターがいきなり動きだした。



《やあ、皆さん。元気にお目覚めかね?》



スーツを着、顔が隠された、男とも女ともわからない人物が写さた。


老婆が、驚いたのか、ヒィィィッッと呻く。




《皆さんには、あるゲームに参加して頂きたくて今回お集まり頂きました。


ゲームの目的は、私の単なる遊びと…殺人鬼の育成を兼ねたものです。


皆さんの中に、殺人鬼候補生がいます。


皆さんには、夜寝る時にそれぞれ手錠をつけて頂きますが、毎夜一人だけ手錠を嵌めないで頂きます。


誰の手錠を嵌めないでおくかは、皆さんで仲良くお決め下さい。


もし、手錠を嵌めなかったのが殺人鬼だった場合…仲良く死んで貰います。


ただし、殺人鬼じゃなかった場合、その方はこの部屋から解放されます。



最後に殺人鬼と二人残ったとしても、残った方は解放されます。




では皆さん、ゆっくりとお考え下さいませ》



自分の告げたい事だけ伝え終える、そのテレビモニターはブツンと切れた。




☆☆☆




この後しばらく、部屋の騒動はすごかった。



しかし、しばらくすると皆が落ち着きを見せはじめ、最終的にはテレビで話した人間の言うことこそが馬鹿馬鹿しい、という結論になりそうだった。



「殺人鬼だと?んなもん返り討ちにしたるわ!!」

『893』番が言った。


「まあまあ、どうみても殺人鬼の様な目の血走った人はいませんよ」

『008』番が、(貴方以外はね)と心の中で付け足した事を、皆が理解していた。



「早く家に帰らないと……もうすぐ期末試験があるのに……」

『5648』番の話題が、日常生活に触れ、それぞれホッとしたらしい。口々に言う。



「私だって仕事が」

「私だってお店が」



そこに、水を差す様な事を言ったのが『08』番だった。

「あの悪魔が言った事は真実じゃ!!皆ここで殺されるのじゃ!!恐ろしい……ああ、恐ろしい!!!」



「このババアはほっといて、俺が一番にここを出るからな」

『893』番がそう言うと、『038』番が口を挟んだ。



「あら、レディーファーストでお願いしたいわ。私か、そこの女子高生がどう考えても一番でしょう?」



「ああん!?お前が殺人鬼かもしれねぇじゃんか!!」

『893』番がそう言うのに対して、今度は『3』番が口を挟んだ。



「いや、その女は凶器になりそうな物は何も持っていない……ようだ。わたしゃこういう事に目端が効くんでな」



『893』番は『3』番をギロリと睨みつけて言う。


「おめぇの目端なんて当てにならねぇ。つか、なんでそんな事わかるんだ?」


『3』番は何も言わずに肩を竦めた。



俺は勇気を出して言った。

「……あの、多数決にしませんか?自分には票を入れない、というルールで……」




結局、投票?の結果やはりと言うべきかなんと言うべきか、女子高生が一番に手枷を外される事に決まった。



女子高生はしきりに、他のメンバーに御礼を言い、恐縮していた。


ただ、浮かべる表情からは安堵が窺え、俺は妹を思い出して「よかったな」と心からの声を掛けた。




夜中の12時をまわると、テレビが写り、例の人物が現れ、短い言葉を述べた。



《では、今回自由の身にならなかった皆さんは、壁から出てくる手枷を順にしていって下さい。


決して、自分でした振りをしない様に、順にお願いします。


最後の方は、今夜手枷をしないで済む方に最終確認をして頂いて下さい。



では皆さん、よい夢を》




言われた通り、皆で順に手枷をはめていった。


女子高生は、最後にはめた俺を確認し、直ぐに『038』番の傍に行って、寝る態勢に入った。




しばらくすると、皆の寝息が聞こえてくる。



俺は、心地好い眠気に誘われながらも、テレビに写っていた人間の話を思い返していた。



まずは殺人鬼。


何故、こんな話をしたのか。


本当か嘘かはわからないが、《趣味も含めて》とは何の事か?




また、メンバーについても気になる行動がないとも限らない。



まず、精神的に参っている『08』。これは、最後まで手枷を解かれる事はないだろう。異常過ぎるからだ。



『893』も、極端に柄が悪すぎる。


また、『038』に対して、凶器になるような物を持っていなかった、と言い切った『3』。

グルなのか、本当に目端がきくなら何を根拠にそう言ったのか。





そろそろ、眠気が限界まできていた俺は、目をつむった。





……そう言えば……




一番始めに俺に話し掛けたのも『3』だったな……


あの時、何か俺は……『3』に対して驚いたんだった……



なんだっけ……




……『おい、ニーサン』……




そうだ、なんで俺に妹がいるのか知ってるんだって……勘違いしたんだ……



ニーサン、は単なる呼称だったのに……




……呼称?




……呼称がニーサン?




……『3』は、始めから俺を……『23』と呼んでたんだ!!!







俺は、飛び上がる様に起きた。





☆☆☆




『3:スリ』…使い古したジャンパーを着込んだ男性


『08:親』…精神状態の良くない婆さん


『008:大家』…お節介そうな太った男性


『23:兄さん』…俺


『038:お産婆』…特に特徴のない中年女性


『808:八百屋』…角刈りの男性


『893:ヤクザ』…柄の悪そうなオールバックの男性


『8148:歯医者』…神経質そうな男性













『5648:殺し屋』…目のぱっちりとした高校生位の女の子




婆さんが言っていた悪魔は、子供……テレビの中の人物だった。


悪魔は、単なる遊び=駄洒落と殺人鬼の育成を同時に楽しんでいた。



スリは恐らく、普段の仕事癖が出て、子供である高校生以外の全員の金目の物を見たかスッたかしたのだろう。だから、お産婆が何も隠し持っていない事を知っていた。けれども、自分がスリだから、という理由は言えなかった。







そして、全てわかった時には遅すぎて……目の前には、安堵の表情を浮かべたままの殺人鬼が、他のメンバーの返り血を浴びたまま、こちらを向いていた……

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