クリエイター2
いやね、私はもともと幽霊よりも、生きている人間の方がよっぽど怖いと思うんですよ。
だってそうでしょう?
生きている人間から被害を受けるのと、幽霊から被害を受けるの、どっちの方が確率高いと思います?
ええ、だから私のホラー小説は幽霊よりも生きている人間のネタが多いんです。
さあ、食事が冷めてしまいますから、ここからは食べながら話ましょう。
ええと……何の話でしたっけ?
そうそう、だから私は、いるかいないかわからない幽霊よりも、確実に起きそうな……けれども、社会のルールに縛られている限りは起きない事をホラーとして描いているのです。
誰だって、全くリアリティのない話よりも、すぐ傍で起きそうな事の方が嫌で怖いしょう?
社会のルールって、こんな小説書いている私からすると、物凄い重要なんだなって思いますよ。
例えば考えてみて下さい。
出来るか出来ないかという話ですよ?
酔っ払いが、駅のホームでフラフラしている。貴方は、突き落とす事が出来る。
あはは、やらないってそりゃそうでしょう。
貴方は今、やるかやらないかの話をした。私が言っているのは、やるかやらないかでなく、可能か不可能かという話なのです。
可能でしょう?
しかし、これを『やらない』という結論にするのが社会のルールってやつです。
もう一つ例え話しますとね。
通勤で満員の階段がありますよね。もしくは、エスカレーターでもいい。
貴方、一番上の段にいる人を突き落とす事が可能ですよね?
あはは、そんな苦虫を噛み潰した様な顔をしないで下さいよ。
貴方がそんな事をやらないのはわかっています、ただ、可能か不可能かという話。
可能か不可能かで話をすると、誰だって人を殺す事は可能なんです。
けれども、普通の人はやらない。
やらない様なルールを作っているのが、社会です。
それじゃあ、この社会が崩壊してきたらどうなりますかね?
ホラ、ちょっとしたホラー小説になりそうでしょう?
……おや、話す内容を間違えましたかね、全く箸が進まない様だ。
このお肉が美味しいんですよ、ささ、食べて食べて。
そういえば、ある有名な映画で、知性の高い殺人鬼が、人間の脳みそを食べるシーンがありますよね。
あれは一体、どんな味がするのか。
美食家達は、思ったかもしれません。
社会のルールがあるからやらないだけで、人間の脳みそを食べるという行為自体は可能な事だ。
この世界の誰かが、食べた事あるかもしれませんね。
おや、先程から貴方はそれを好んで食べてますね。なかなか、お目が高いお方だ。
その材料は、ごく少量しか取れないんですよ。
……ああ、それは聞かない方がいいですよ。
社会のルールが大事ならね。