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化かし合い

恋する女のパワーって凄いと思う!




好きな男のヒトに少しでも近づきたくて、全く興味のなかったゴルフを始めたり、バイク雑誌を読んでみたり、当然、お洒落にも敏感になったり。



まぁ、専業主婦だと限りがあるけどさ。



桜が満開の公園で寄り添う恋人達とか夫婦とかいいよね、そのロマンチックな姿に、自分を重ねてみたりしてさ。





そんなこんなでバッチリアイメイクをしている私の横で、旦那が嬉しそうに話しかけてきた。



「最近随分小綺麗にしてるな、まぁ今日は友人が来る日だし、綺麗にして貰っている分には問題ないが」



「…それにしても、まさかお前がゴルフを始めるとはな~……今度、一緒にコースをまわろう」



「ところで、この雑誌お前のか?バイクに興味あるなら、まず俺に聞けよ」



「お、チャイムだ。やっと到着、かな」



旦那は、いそいそと玄関に向かった。



「やあ、三ヶ月前に一度出先で紹介したんだが……二人とも覚えてるかな?長谷川、こちら俺の嫁さん。麻衣子、こちら俺の高校の時の同級生の長谷川」



私は、とっておきの笑顔を浮かべて挨拶をした。


「長谷川さん、お久しぶりです」


私は旦那に気付かれない様に長谷川さんに流し目を送った。



私が見た目に気を遣うのも。ゴルフを始めたのも。バイクの情報仕入れるのも。



全て、貴方に近づく為よ。




長谷川さん。




私は、長谷川さんと桜が満開に咲き誇る公園を、連れ立って歩くところを想像した……嬉しくて、顔がほてってくる。




実は、三ヶ月前に偶然長谷川さんと会った時、旦那がいない間にメアド交換はしておいたのだ。



今では、まるで恋人同士の様に、メール交換する仲……今日迄に3回デートもした。




正直言って、旦那、あんたはもういらない。




☆☆☆




俺は、長谷川と麻衣子の顔を交互に見ながらほくそ笑んだ。




よし、長谷川の出だしは好調だな。



麻衣子もすっかりその気らしい。



長谷川は、俺の知り合いの中で一番麻衣子の好みに近いと確信していた。




長谷川は昔馴染みであると同時に、なんでも探偵業の「別れさせ屋」の仕事もしていた為、まさにどんぴしゃの役割だった。



長谷川には、さっさと麻衣子を誘惑して貰い、三ヶ月後に浮気現場を押さえて、何の慰謝料も「払わずに」離婚する予定だ。




俺には、麻衣子の他に、もっと愛する人が出来たのだ。



その彼女の為にも、さっさと麻衣子とは別れたかったが、がめつく、且つ、プライドの高いこの女が何事もなく別れるとは思えなかった。



そこで、長谷川を投入したのだ。




俺は、専業主婦に甘んじて何の努力もしない、この女にもう興味はなかった。



その点彼女は、俺の悩みなら、仕事でも何でも理解しようとしてくれる、包容力のある女性だ。



実際、今、進めている仕事は、取れるか取れないかという精神的に非常に辛い状態であったが、人の話を聞かない麻衣子より、よっぽど彼女のお陰で元気になっていた。




麻衣子、お前はさっさと長谷川と遊んで……捨てられろ。




☆☆☆




俺は、目の前で媚びへつらう女と、獲物を狙う蛇の様な目をした男を見て、辟易した。



これはこれで夫婦なんだから、ある意味お似合いかもしれない。


まあ、俺の仕事はそれをぶち壊す事ではあるが。




俺は、目の前の旧友に少し同情していた。この旧友は、俺が奥さんである麻衣子と親交を深めるよう依頼してきたが、実は俺はもう一つの依頼を受けて来ているのだ。



旧友のライバル会社からの、依頼である。



今、旧友が取ろうとしている仕事の、取引先の社長と会長は、このご時世珍しく愛妻家であった。

家庭を守れぬ者が、会社を守れる訳がない……と、こういう訳だ。



今は五分五分の戦いも、旧友が、浮気が原因で離婚したとなれば、おそらく相手会社が仕事を取るだろう。






俺は


旧友が浮気をしている相手が


自分と同業者だということを


知っている……

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