表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/139

実験結果

その心理学者は、はぁ、とため息をつき、招かれざる客の刑事を迎え入れた。



「では、何故こんな事になったのか教えて下さい」


刑事はニコリともせずに、単刀直入に切り出した。



その学者は、一枚のUSBを刑事に渡して言った。



「まず、これを見て下さい。これはある実験の光景なのですが……これが全てを物語っています。」




‡‡‡‡‡‡




「さて、俺らの愛を語らおうか」


「……改めて言われても、困るわね」


「それじゃあ、まずお互いの気に入っているところから」


「ジョンは……そうねぇ、素直で実直で真面目なとこかしら?余りにも人を疑わないから、ちょっと不安になるくらいだけど……」


「俺は、う~~ん、サバサバしてるけど、女らしいところかな。物怖じしたところなんて見たことないけど、ケーキ選ぶ時は散々悩むもんな」


「あはは、好きな物が二つ並んでいたら悩むでしょ~?」


「あ、今のところ気になるかな。好きな人が二人いたらどうするんだよ?」


「勿論、一人に尽くします」


「ほんとか~?浮気したら俺、何するかわからないからな!」


「ほんとよ。ジョンこそどうなの?」


「俺はマリー一筋さ!神にかけて誓うよ。マリーを裏切ったら、死ぬ」


「ちょっとジョン、これ映ってるのよ?恥ずかしい……」


「いいんだよ、って言うか、そうしろって指示だろ?代わりにマリーが浮気したら……殺すよ」


「やだ、怖~い!!私が愛しているのは、ジョンだけよ」


「俺もマリーしか見えないよ」




‡‡‡‡‡‡




ここで画像は終わっていた。


確かに、ジョンは「殺す」とは言っているが、マリーとは上手くいっている様にしか見えない。



「これは、人が嘘をつく時の仕種のテキストにする予定だったんです。……けれども、私はこれを使う事が出来なくなってしまった」


「……というと?」


「私は彼等に、条件として『必ず会話の中に嘘をひとつ以上織り交ぜる事』とお願いしました」


「成る程。……で?」


「ジョンは、ここで嘘をついています。『時間にルーズだ』と責めるところですね」


「マリーは?」


「マリーは……ここです。『貴方一筋』というところと……『愛してる』」



「……あちゃー……それは確かに、テキストとして学生には見せられませんね」


「私は、バイト代はきっちり払った上で、一応ジョンにマリーと別れる事をオススメしました」



「何故そんな事を言ったのですか?」


「そりゃあ、自分の甥が馬鹿にされていたら誰でもそう助言するでしょう?」


「……貴方は、嘘が見破れるのですよね?先程の映像でも、ジョンが言った嘘の部分は『時間にルーズのところだけ』とおっしゃった。……では、『裏切ったら殺す』の部分にも嘘はなかった、という事ではないですか?」




刑事にそう指摘されて初めて、心理学者は自分のとった行動の過ちに気付いた。



「……これが、貴方の今回の実験結果ですよ」




刑事はUSBを抜き取り、かわりに惨殺されたマリーの遺体と、遺体に寄り添う様に首を切って自殺したジョンの写真を、机に叩きつけて去って行った……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ