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小国の戦い

その国は、偉大な女王が率いる小国だった。



一カ所に国土を定めず、食料を求めて大移動を繰り返し、一夜にして仮の住まいを建設しては、その周りに点在する天の恵みと実りを貪った。



そうした形態の国は、その小国だけではなく、広い大地とは言え、時には別の小国と激突する事もあった。



女王は見事な采配で時には激しく戦い、時には戦いを回避し、国を大きく育てながら、その大地を巡って行った。



しかし、女王がそれなりに歳老いた頃、その小国が十分に豊かになった頃、その事件は起きた。



「女王、ご決断を!」

側近の一人が、女王に詰め寄った。



他の側近も、皆怒りに顔を歪めて女王の次の言葉を待っていた。



「我等の仲間が、大勢あのモンスターにやられております…手足をもがれた者も、顎を砕かれた者も、そして…踏み潰されて、跡形もなくなった者も…」



小国は、広い大陸を渡りながら、初めて「モンスター」と呼んでいる物と遭遇した。



モンスターの噂は、今まで情報部隊から聞いたことはあったが、実際に遭遇したのは初めてだった。



モンスターからは、今まで食料にしていたどんな生き物よりも甘い芳香がしていた…が、その大きさと狂暴さと賢さは桁外れだった。



一時等、食料係が食べ物と思って持ち帰った物の中に、毒と思われる物が仕込まれていた。



モンスターは、我々を食べる事が目的ではなく、ただ殺す事が目的なのだ。




出来れば、戦いは避けたかった…が、女王は勿論、側近も、この豊かな小国の仲間達がモンスターに見つかり次第、かなりの数が惨殺されている事に憤っていた。




「…ちと調べたい事があるでの、時間をくれぬか?」



側近達に、厳しい表情を向けながら女王は言った。



「5…いや、3日でよい。その間に、情報部隊を総動員させよ。モンスターの情報をかき集めるのじゃ」



側近達は、女王が逃げ腰ではなく、むしろ戦闘体勢に入っている事を肌で感じ、誰もが満足そうに頷いた。



「それでこそ我が女王。直ぐに部隊を手配致します」



恭しく一礼をした後、側近達は女王の部屋を後にした。



そして三日後。



情報部隊の活躍により、その4分の3が犠牲になったとは言え、貴重なモンスターの情報を知る事が出来た。



モンスターにもいくつか種類があるが、昼型の生き物である事。


モンスターはいつも同じ場所を寝床にしており、夜になると所定の場所に潜み、恐らく寝ている事。


そしてなんと…どうもその近くに、下肢の不自由なより小さなモンスターもいるという事。



女王は、獰猛なモンスターではなく、この小さなモンスターに対して攻撃を仕掛け、十分な食料を得てから直ぐに今の小国の場を離れる事にした。




作戦決行の日。



女王は自ら戦闘部隊の前に立ち、その士気をあげた。



「よいか、仲間の讐を取るのだ。

モンスターは恐ろしいが、また重要な食料にもなる。

全員が素早く動き、更に大きなモンスターが現れる前に必ず仕留めるのだ。



戦闘部隊が行動を起こしたら、他の部隊は直ぐに移動を開始せよ。

全員が無事に戻ってこれる事…願っている」




こうして深夜、戦闘部隊が動きだした。



モンスターに気付かれぬよう、そっと近寄り、目標物をとり囲んだ。


小さなモンスターは、さほど大した敵ではなかった。これくらいの大きさであれば、彼等はいつもの猟で経験しているからだ。



問題なのは、仕留めるまでの時間だった。


奇襲だったらまだしも、完全に目覚めた大きなモンスターに見つかったら一たまりもないのは、よくわかっていた。



指揮官の合図をもとに、寝ているモンスターに一斉に襲い掛かる。


程なく小さなモンスターは異変に気付き、物凄い咆哮をあげだした。



早く、早く、仕留めなければ!!



その咆哮にたじろぎつつも、確実にモンスターの穴という穴から鋭い武器を突き刺し、更に奥へ奥へと進んで、ようやく到達した内臓を容赦なくえぐった。







『世界のニュースをお届けします。



アフリカにて、また食人蟻による被害が発生しました。




犠牲になったのは生後半年の小さな赤ちゃんで、夜のうちに襲われ、泣き声に気付いた母親が様子を見に行った時には、既に亡くなっていました。



この母親は、最近家畜を襲う蟻の被害が出た為、何度か退治に乗り出したそうですが、まさかこんな惨劇になるとは…想像もしていなかったとの事…



では次のニュースです。


ニュージーランドでは、今の時期…』

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