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夢見る楽園

俺は、生前の彼女の言葉を思い出していた。



「私は死ぬのが楽しみよ♪だって、死んだ人は誰も戻って来ないじゃない?それって、死後の世界はこの世界より素晴らしくて、誰も戻って来たがらないのではないかしら?」



彼女はその頃、新興宗教にはまり込んでいた。



最初は冗談で済ませていたが、その頃からどうやら本格的にはまり込んでしまった様だ。



俺は、死に対して前向きに捉えるその考え方は良いと思ったが、それが怪しげな宗教の悟りだろうとわかりきっていたので、その時なんと答えていいのかわからなかった。



「ねぇ、貴方も今度一緒においでよ」



ほらきなすった。



と、当時の俺は思ったものだった。




‡‡‡‡‡‡




今、目の前にあるテレビでは、ある宗教団体の集団暴行による殺人が大々的に取り上げられていた。



被害者の顔の中に彼女を見つけて、今から2年程前の事を思い出したのだ。



彼女がその宗教の幹部になる、と言い張った時に、彼女とは別れていた。



どんな思いで死んだんだろう…と思うと、生前の彼女を知る者として胸が痛んだ。


けれども、少なくとも彼女は死ぬ事が楽しみだ、と言っていた時期もあるのだ。



殺される時は無念で恐ろしかっただろうが、今は理想の楽園でゆっくり休んで欲しい……心から、そう願った。









ああ……



あたしはなんて、浅はかだったんだろう……



死んだ者が戻って来ないのは、そこが理想の楽園で、戻って来たがらない、だなんて……




とんだお門違いだ……




死んだ者は、『戻って来ない』のではない……











この……理想的な監獄の中から……











……『戻って来れない』のだ……

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