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ルーム

ドン




ドン




ドンッ





誰か!!



誰か気付いて!!



ここから出して!!






ドンッ



ドンッ



ドンッッ






誰かあああぁぁぁっっっ!!!






私は、恐怖と戦いながら、自分の荒い呼気を整える事に集中した。



……何故、こんな事になってしまったのだろう?



間違いなく、この部屋に、閉じ込められたのだ。






ここは、私の家。

とは言え、引っ越してきたばかりだ。



不動産の人曰く、ちょっとした事故物件。



何でも、この家では人が何人か、行方不明になっているとか。


1人目は、この家に住んでいた娘の、友人。

2人目は、この家を建てて家族と住んでいた、娘の父親にあたる、男性。

3人目は、この家を買って移り住んできた家族の、幼い一人息子。

4人目は、この家を借りて住んでいた、オカルト好きの青年。



私は、5人目となるのだろうか?





あぁ、値段が安いからって、こんな家借りなければよかった!!



この広さに、部屋数の多さ。

付いてくる家具も、質の良い物ばかりで。



それに見合わない家賃の安さを確認した時、4人共、家とは関係ないだろうって、安易に考えた。

何か事件に巻き込まれたんだろうって。




だって実際、この家に住んでも、行方不明にならない家族もいた、と不動産の人が言っていたのだ。






私は友人が多くて、しょっちゅう彼らが遊びに来るから、この家を見学した時、もう心が決まっていた。





すー、はー、と深呼吸する。

部屋は真っ暗だ。



私はひとまず、壁を触って、電気のスイッチがないかどうかを確認した。



あるとすれば、入り口付近だ。






……あった。






***





ああ、何でこんな家に来ちまったんだろう?



俺は、両手に顔を埋めて座り込んでいた。



オカルト狂いだったから、心霊現象なら大歓迎だった。心霊現象なら。



……その背表紙を押したのは、偶然だったんだ。



この家を徹底的に調べようと、一部屋一部屋、念入りに調べていた。

埃にまみれた汚い本棚を動かしてみようと、何故思ってしまったのか。



その背表紙がカチリと音を立てた後、壁と思っていたものが動いた。



セーフルームか。そう思った。



これだけの家を建てた人は、さぞかし金持ちだっただろう。

強盗対策として用意していても、可笑しくない。



俺は何も考えず、中に入った。



入ったと同時に、壁が元に戻った。



が、セーフルームなら当たり前だ。

俺は落ち着いて、まず灯りを探した。



ここがセーフルームなら、スイッチを押せば、そう……非常食は勿論、外への連絡手段も用意されているだろうし、場合によると、トイレや寝床もあるかもしれない。



俺は、この部屋を友人達に自慢する場面を思いながらニヤニヤし、見つけたスイッチを押した。





ドン



ドン



ドン




誰か!!



誰か!!



気付いてくれえええ!!!




あらん限りの声で叫んだ。



灯りに照らされた室内を、俺は直視する事が出来ないでいた。



それでも、室内の異常な状態は目に焼き付いている。






3体の、白骨死体。





しかもそのうち一体の小さな頭蓋骨は、明らかに腕だか足だかの骨を咥えていた。





***





ドンッ


ドンッドンッ




ねぇ!!



パパ!!



ママ!!



気付いてよ!!



僕はここにいるよ!!





……誰も、何の返事もしてくれない。

僕がこの部屋に入って、もうどれ位たったのかな?


いつもは使ってない部屋だから、探しに来てくれないのかな?



秘密基地みたいでワクワクするけど、真っ暗だ。




……早く、見つけてくれないかな。



見つけてくれたら、もうイタズラしないって約束する。

宿題もするし、勉強もする。



だから、早く見つけて欲しいな。





……お腹空いたな。



この部屋、食べ物とかないのかな?



……あ、何かある。


棒?


しゃぶれば、少しは飢えがマシになるかな。









パパ……ママ……会いたい……



ここから出して……






***






ドンッ



ドンッ



「そんな事しても無駄だ」



私は途方に暮れた。



奇跡が起きない限り、間違いなく、私と目の前の娘は、死ぬ。



「お前……よくも私を引きずり込んだな……!!!」



死を前にした恐怖で、私は娘の首に手を掛けた。



顔を赤くして娘は何かを叫んだが、既に咽が枯れていたのだろう、それは話し声よりも小さなものだった。





油断していた。

1年掛けて、娘を飼いならす事に成功したと思った。



私の夢のシークレットルーム。

外からしか開けられず、完全防音の部屋。

家族はその存在すら知らない。




私は、社会的にそれなりの地位に就いており、世間からも、そして家族からも良い夫、良い父と思われている。



私のストレスはピークだった。


何かで、憂さ晴らしをしたかった。


けれども、憂さ晴らしをしている姿を誰かに見せる訳にはいかなかった。


だから、娘の友人をこの部屋に押し込み、飼ったのだ。


ただ、エサを与えて飼った。


この部屋は直ぐに自動で閉まる為、暴力は与えていない。








この娘によって、この部屋に引きずり込まれた今。


首を絞める、この行為が彼女の肉体に初めて行った暴力だ。





***





ドン



ドン



ドン




おじさん!!



ここから出して!!






……この部屋は、パニックルームではないの?



何で、トイレだけ部屋の片隅に置いてあるの?



何で?



何で?



私、何かおじさんの気に入らない態度をした?











ねぇ!!






ここから出して!!







※このお話の意味がイマイチわからなかった方は、スライドして下さい↓













下から順に、シークレットルーム(監禁部屋)へ入って亡くなった順となっています。

亡くなった方々の説明は、始めに(五番目に部屋へ入った女性が)しています。

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