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働く車

私は40になるが、独り身だ。



子供は好きなので、お隣の若夫婦と結構懇意にしており、そこの4歳と2歳の子供を可愛がっている。



二人とも男の子で、腕白だ。



若夫婦は共働きで、ごくたまーに私が子供の世話を引き受ける事もあった。



上の子供はとあるゲームのキャラクターにハマり、下の子供はとあるアニメを早々に卒業し、今は働く車が大好きだ。



私は、百円ショップに繰り出した時、隣の子供達が好きそうなグッズを見つけるのが習慣になっていた。



若夫婦は、ブランドに拘らない人達で、百円ショップの物であっても、喜んで受け取ってくれた。



その点では若夫婦を好む事が出来たが、若夫婦の教育方針?には首を傾げる事もあった。




若夫婦は、それはそれは子供達に甘い。



叱っているところを、見たことがない。

子供達が行きたいと言えば行き、欲しいと言えば買う。食べたいと言えば与え、眠くないと言えば夜更かしを許す。

そんな夫婦だった。



まぁ、他人の教育方針にケチ付けても仕方ないので、その辺は放っておいた。

私は子供達が私と居るときだけ、私なりに駄目な事は駄目だ、危ない事は危ない、嫌な事は嫌だと教えていた。





そんなある日の事。



我が家の近くの通りを、救急車がサイレンを鳴らしながら通った。

弟君はきゅーきゅーしゃー!と興奮し、見に行く!!と言って聞かなかった。


救急車が通る、と言う事は、救急車の中若しくは向かう先で、重症患者さんが苦しんでいるということである。


私は、もうすぐ若夫婦も帰ってくる頃だった事もあり、子供達を救急車の見学の為に病院や消防署に連れて行く気になれなかった。



パパとママが帰ってきたら、消防署に連れて行ってもらいなね?と、私が言ったせいかもしれない。


若夫婦が帰って来た頃には、弟君の要求はグレードアップし、今度はパトカーが走ってる所と、救急車にヒトを乗せる所と、消防車が放水している所が見たい、と……そのまんまの意味で、働く車が働いている所を見たいと言っていた。





***





私は、向かいの一軒家の火事を見ながら、そんな1週間程前の事を思い出していた。



私の横には、若夫婦とその子供達が、張られたロープの手前で野次馬をしていた。



パトカーも救急車も消防車も、全てが出動し、それを見ている弟君の目はキラキラ輝いている。





……そう言えば、今回火事にあったのは私の家の真ん前だが、確か2年位前に、若夫婦の目の前の一軒家もやはり、火事を起こした。



原因は、放火だった。



そして2年前は、丁度上のお兄ちゃんが、やはり働く車にハマっており、1週間程前の弟君の様に、お強請りをしていた気がする。



若夫婦の満足げな顔を見て、目の前の熱気に当てられながら、私は寒けを覚えた。

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