集客
ちゃん
ちゃん
ちゃん
ほうら、これから紙芝居をはじめるよう
今回の物語は、これからの季節にぴったりな、こわーいこわーい、お話だよ
勇気のある子だけ、見てっておくれ
ああ、おじちゃんは流しの紙芝居屋でね
普段はここにいないから、ここに来たのは5年ぶりさ
ほうら、物語を始めるとするかね
勇気のある子は、いち、にい、…ろくにんだね
うんうん、大体こんなもんだな
さあさ、はじめるとしようかい
ちゃん
ちゃん
ちゃん
平和で長閑かなある町の
はずれにぽつんと一軒屋
だぁれもそこには住んでない
なのに時たま人の声
すると噂になったとさ
不気味に思った大人たち
子供に言ったさ近付くな
したら逆に好奇心
湧くわなヤンチャな子供たち
ある日子供がご、ろくにん
その家探索しよと言い出した
家の前には古い門
押せばギギイとあいたのさ
さあさ、お入りとあいたのさ
ドアをあけると、あら不思議
中はお菓子で埋まってた
一口食べれば、夢の中…
皆夢中で食べたのさ
その中、ひとり、口にせず
病気の兄へとポケットへ
お菓子忍ばせ家を出た
ひとり帰った少年は
兄にお菓子を渡したさ
喜びお菓子を口にする
すると、そのまま眠りについた
帰らぬ子供、慌てる大人
少年事情を説明し
ここにいるはず連れてった
ところが中はもぬけの殻
お菓子どころかホコリまみれ
神隠しだと言われたまんま
結局帰らぬ子供たち
大人は知らないその家は
人食い家と言うことを
さあさ、見とくれ子供たち
こぉんな家を見たら絶対
入っちゃいかんよ家の中
食べられちゃうよ、その家に…
***
「あ!この家俺見た事あるぜーっ!」
活発そうな少年が一人、叫んだ。
「ホントかよ」
「すげーじゃん」
「嘘だね、そんなの」
他の少年達が口々に反応する。
「嘘じゃねーよ!じゃあ着いてこいよ!これから連れてってやるよ!」
すると、少年達は怯んだ。
「え?だって人食い家なんだろ…?」
「ばーか、作り話だよ」
「きっとその家がこのお話のモデルなんだよ」
「見てみてー」
「ホントなら、連れてけよ!」
結局、最初に怯んだ一人の少年を置いて、全員が去って行った。
「君は行かないでいいのかい?」
紙芝居を片付けながらおじちゃんが聞くと、少年はこくんと頷いた。
「ねぇおじちゃん、聞いていい?」
少年が尋ねた。
「なんさね?」
「病気のお兄ちゃんが寝たって、死んじゃったの?」
「いいや、本当に眠りについたんだよ…そうさな、眠り姫の物語を知っているかい?あんな感じでな」
「ふぅん…なんで眠りについたのかな?」
「人食い家はな、お菓子で子供を眠らせて、一年に一度、食事をするんだな。眠らせるのは、保存と逃亡の阻止を兼ねているんだよ」
「ふぅん…助かった少年は、それからどうしているのかな?」
「残念ながら、命は助かったが…人食い家の呪縛からは逃れられなかったんだな。今は、何年かに一度、家に子供を集める役目をさせられてるよ。
…次は、また五年後だな」