合わせ鏡の向こう側
≪暗闇の中≫、二つの声が響く。
『なあなあ知ってるか?合わせ鏡の話』
『ああ、聞いた事あるぜ。悪魔の通り道って奴だろ?』
『そうそ、深夜12時から2時の間……鏡を合わせると、稀に悪魔が通るってな』
『で?ここに誂えたように鏡があるって事は……』
『そう!まさにこれから試そうって訳さ』
キラリと暗闇の中でその≪瞳が煌めく≫。
『……やめとこうぜ、遊びでやる事じゃねーよ』
『ハハッ!なんだよお前、ビビってんのか?』
相手の≪ツルっとした頭≫を叩き、≪長い舌≫を相手に突き出し、挑発した。
『んなわけじゃねーよ!!』
≪いつも通り、真っ赤な顔≫で怒りだす。
ちょっとからかえば、相手が話に乗ってくるとわかっていた。
『それじゃ早速、やってみよーぜ♪』
『あ!おい!!!』
大きさの同じ鏡を、付き合わせる。
違う大きさだと、悪魔が通過した際、小さな鏡から出てきた場合は大きな鏡に入れるが、もし大きな鏡から出てきた場合……小さな鏡に入れず、悪魔がこの世にとどまってしまう可能性があるからだ。
付き合わせてから、10分たち……
30分が経過した。
合わせ鏡を計画した方が、飽きて言い出した。
『……んだよ、嘘っぱちかよー』
『まあ、そんなもんだよな』
『……ちっつまんねーの』
鏡を片付けようと、鏡に触れたその時。
『あ……あ!!おい!!』
鏡の中に
ずる、と引きずり込まれた……
‡‡‡‡‡‡
鏡に引きずり込まれたヤツは、無事直ぐにもう一つの鏡から出てきたが……その日から、狂っていった。
『悪魔だ、悪魔の世界に行ってきた!!』
『悪魔の世界は存在したんだ!!』
体をガタガタと震わせたかと思えば、いきなり走り出す。
嬌声をあげたかと思えば、いきなり泣き出した。
『あんな恐ろしい姿をしたヤツがこの世にいるなんて……
見たことのない肌の色、闇の様な目の色……しかも二つもありやがった!!体は変なモノで覆われていて、悪魔は後ろ脚だけで体を支える。……頭からは糸屑がうねうねと出てたんだ……!!』
『そうか、それを目にしたら……怖いよな……』
‡‡‡‡‡‡
また、彼らのいう《悪魔の世界》…つまり人間の世界、では。
また一様に、同じ現象が起きていた。
深夜の学校で合わせ鏡をした高校生二人が、恐怖で狂ったのだ。
「俺達は本当に見たんだ……」
「あれは確かに悪魔だった!!」
「≪真っ赤な肌≫、≪長い舌≫≪ツルッとした頭≫……≪光る一つの目≫。悪魔は4つ足で、素早く鏡から鏡へと……」
「そうか……そんなものを見たら怖いよな……」