取り込めなければ強くはなれない
荒ぶる森が大地を揺らす。木々がそれへ呼応するように、次から次へと大地から根を抜いて歩き出した。
「ラステンの奴め、森を燃やすだけではなく森の命さえおのれの野望に使うとは!」
木のゴーレムが襲ってくるから俺の攻撃はラステンへ届かなくなる。
単純に、数で押されているからだ。
「ゼロ、木は焼いちゃってもいいよね?」
「そうだな、できれば灰を造りたくないから、凍らせて破壊するか、切り刻んで細かくするか、だな」
「燃やしちゃうとラステンの身体に取り込まれちゃうって事ね。了解、Rランクスキル海神の奔流!」
ルシルは水を生成してゴーレムを吹き飛ばす。
「集中! 水の流れを極限まで細く!! 私なら……やれるっ!!」
ルシルは自分の吹き出す水を糸のように細くする。細くはするが、威力は弱めるどころか更に強く吹き出すようにした。
「ゴアァァァ!!」
ゴーレムたちは水の刃に切り刻まれ、水に押し出されて散らばる。
「燃えないから取り込むのもできないでしょ!?」
ルシルの言うように、木は細かくなっても木片のまま。ラステンは取り込むことができない。黒い雷で撃ち抜こうとしても水を吸った木々は電撃を流してしまって焦げることもなかった。
バラバラになったゴーレムは動きを止め、ただの木材へと変わっていく。
「おのれぇ!! ボクの兵隊たちをまたしてもお前らがっ!!」
「何度やっても同じだぞラステン! それに、お前が木々をゴーレムにしてしまったんだ。燃やすこともできなければお前の身体を再生する素材もなくなるぞ!」
「なにっ!?」
「受けてみれば判る」
俺はラステンへ向かって駆け出す。ルシルが作ってくれた、ゴーレムのいない道。襲ってくるゴーレムがいなくなれば俺を邪魔する奴はいない。
「くらってみな!」
俺は剣を振って衝撃波を発生させる。
「そんななまくらな剣撃、ボクなら避けられる!」
ラステンは右足を高く上げた。
俺の放った衝撃波がその隙間を通り抜けていく。
「だが、その片足でこらえきれるか? Sランクスキル発動、超加速走駆! 瞬間的に間合いを詰め……Sランクスキル発動、剣甲突! 奥深くまで突き抜けろっ!!」
俺はラステンの左足に近付き、至近距離で足首を突き崩す。
「な、速いっ……」
ラステンはその巨体を支えきれず、仰向けに倒れていく。
「たーおれーるぞー」
俺は倒れていくラステンの足によじ登り、そのままラステンの身体に斬り掛かる。
「SSランクスキル発動、旋回横連斬! 回転する刃がお前を切り刻むぞっ!」
「ギャァァァ!!」
人造人間で痛みを感じないラステンが悲鳴を上げるのは、俺の攻撃がラステンにとって悪い意味を持つからだ。
切られた傷は瞬時に埋まるが、そこで修復に使った灰は外から取り込めない。傷として消費した分だけ身体がどんどん削られていく。
「補充を……身体を造らなきゃ……」
ラステンは近くにある木のゴーレムをつかみ、自分の身体に押し付ける。
「どうして……取り込めないっ!」
慌てて身体に押し付けるが、それはラステンの思い通りにはなっていない。
ピカトリスのつぶやきが、なんとなくだが俺に聞こえた。
「灰になっていない状態では取り込めないのよ。それはね、ラステンの素材が灰をベースにした粘土だったからなのよ」
だからかもしれない。吸収もできなければ消費するだけだ。削りきってやれば、奴はどんどんと小さくなる。
「このまま、押し切るっ!!」
俺は倒れかけたラステンの上を走っていく。もう腰を過ぎて腹の辺りに到着しようという時、ラステンが轟音と地響きを作って倒れた。